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128/442

128ーテスト当日

 テストまでの2日間、チラホラと領地から薬師希望の者達が集まり始めた。女性も何人かいる。

 

「殿下、どうされました?」


 俺は部屋の窓から外を見ていた。


「ニル。明日、薬師のテストでしょう。どんな人が来るのかと思って。」

「ああ、そうでしたね。」


 ――コンコン


「殿下、宜しいでしょうか?」


 レピオスがやって来た。


「うん。レピオスどうしたの?」

「テスト問題なのですが」

「う」

「2問だけ用意しました。見て頂けますか?」

「ボクが見ていいの?」

「もちろんです。殿下のご意見をお聞かせ頂きたいのです」

「分かった」


 レピオスが持ってきた、テスト問題。

 一つは……

 症状が、のどの痛みや鼻水や鼻づまり、くしゃみやせき。突然の発熱、頭痛、関節痛や筋肉痛、倦怠感。下痢や食欲不振。


 もう一つは……

 全身に剣等での切創。打撲。出血有り。意識消失状態。

 

 それぞれの治療方法、診断理由を答える。


 うん、良いんじゃないか? 内科的治療と外科的治療。

 レピオスが以前に教えてくれた、治癒魔法やポーションに頼り過ぎない、患者の治療後の生活も考える。そこを見たいんだろう。


「うん。レピオス、良いと思う。あと、ポーションも作ってもらうんだよね?」

「ええ。自分が作れる中で1番上位のポーションを、作ってもらいます」

「うん。ボクはいいと思う。アラ殿にも確認してもらってね」

「はい、殿下」

「いい人材が集まると良いけど」

「はい、本当に。今の薬師達では、いざと言う時に対応しきれるかどうか、不安ですから」

「え? レピオス。そんなに?」

「はい。ハイポーションをなんとか作れるかどうかと言う状態です」

「今まで何もなくて良かったよ」

「はい、本当に」


 結局、応募してきたのは23名。領地の彼方此方から集まってきた。

 女性が3名か……少ないなぁ。



 さあ、テスト当日だ。まずは、レピオスが作成したテストを受けてもらった。

 まとめ役を決める件も兼ねているので、今いる薬師達も同じテストを受けている。

 まずは、治療方法を記入する、筆記テストだ。


 そして、俺とレピオスはその解答用紙を見ている。その間にポーションを作ってもらうというわけだ。


「うん、なかなか良いよね?」

「はい、殿下。想像以上ですね」


 今、薬師として従事している者達の解答も、なかなか良い感じだ。

 皆、ちゃんと完治した後の事も、視野に入れている。

 良いんじゃないか?うん。テストを受けに来た者の中には、まあ、駄目なやつもいるが。そんなやつは撥ねていく。



「殿下、レピオス殿。名前を見ると、以前辞めた者が受けてますね」


 そう言っているのは、一緒に解答用紙を見ているアスラールだ。


「アスラ殿、それはケイアが辞めさせた者ですか?」

「殿下、おそらくそうだと思います」

「アスラ殿、誰ですか?」

「女性が3名おりますが、その内の1名です。アイシャ・ピオネールですね」


 俺とレピオスは解答用紙を見た。


「え、完璧じゃん」

「ええ、殿下。完璧ですね」


 投薬方法も、薬湯の内容も、回復魔法を使用する場合も、万が一悪化した場合まで想定して解答している。

 ハナマルをあげたくなる様な解答だ。


「なんで辞めたんだろう?」

「殿下、薬師達が言っていたアレではないですか?」

「レピオス、自分より出来る者を辞めさせる、てやつ?」

「はい。イジメたり、嫌味を言ったりでしたか?」

「そうなの?」

「はい」

「ボク、具体的に何をしたかは知らなかった」

「殿下、このアイシャはまだ30歳位だったかと」

「アスラ殿、知ってるの?」

「はい。薬師として邸におりましたから」

「あぁ、そうだった」

「確か……アスラール様に、色目を使っているでしたか?」

「レピオス殿、そんな事を言っていたのですか!?」

「はい。薬師達が話していた者なら、そうだと思います」

「信じられない!」

「アスラ殿?」

「いえ、殿下。実はこのアイシャは3姉妹なのです。1番下の妹が、私と同い年です。子供の頃に、よく一緒に遊びました。

 ケイアもそれを知らない訳ありません。」

「あー、アスラ殿。だから、余計に気に食わなかったのかも知れないね」

「私達家族は、いったいどれだけの領民に、迷惑をかけていたのでしょう。今更ですが、情けなくなってきました」


 アスラールが肩を落とす。


「アスラール様、だからこそ今回はしっかり改善しませんと」

「レピオス殿、そうですね。そうだ。これから改善するんだ」

 


 さて、ポーションが出来てきたらしい。

 俺たちのいる部屋に運び込まれてきた。


「殿下、お願いできますか?」

「うん。レピオス、分かった」


 俺は目の前に、並べられた、ポーション系回復薬を見つめて鑑定する。


「ハイポーションが1/3だね」


 ハイポーションを選んで、横に寄せて並べる。先ずはポーションから見てみよう。


「ポーションの中で1番効果が高いのは……これだ」


 俺は一つの、ポーションの入った容器を手に取る。容器に番号札がぶら下げてある。


「ああ、これは今いる薬師の物ですね」


 レピオスが、ポーションの容器の番号と、名前を照らし合わせる。


「あとは悪くもないし、普通だ」


 レピオスが番号を確認している。

 俺は、ハイポーションを見る。


「ハイポーションは、これだ。ハイポーション以上はいないのかな?」


 俺はもう一度、並べられた容器を見る。


「あ、これ」


 俺は、一つの容器を手に取った。


「殿下?」

「これ、おしいな。もう少し魔力をしっかり通したら万能薬だ」

「殿下、そうですか」

「うん、魔力量をアドバイスしてあげたら、もう作れるんじゃないかな?」

「なるほど。この番号は……殿下、アイシャです」

「レピオス、そうなの?」

「優秀な人材を……なんと言う事だ……」

 

 アスラールが、またガックリ肩を落とした。


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