126ー食べ損ねた。
俺はまた同じ事をして、転移門を修復した。前にルーと相談していた様に、今度は兵を送っても大丈夫なようにした。
だから、帰りはサクッと帰れるぞ。
「リリ、素晴らしい」
「ええ、本当に。母様、ずっと忘れないわ」
母に抱き締められた。
「リリ、大丈夫なの? なんともない?」
「はい、母さま。大丈夫です」
「リリ、有難う。改めて礼を言うよ」
「父さま、これでいつでも行けますね」
「ああ。そうだな。じゃあ、早速行こう」
「え? 陛下?」
「さあ、エイルも行こう。セティ!」
「はい、陛下」
控えていたセティが入ってきた。
「ちょっと行ってくるよ」
「陛下、必ず今日中にお戻り下さい」
「ああ、セティ。分かっている。頼んだよ」
「はい、陛下」
「やった! 父さま、母さま! 行きましょう! ルー、ユキ早く!」
「もう、仕方ないなぁ」
「ルー様、行きますよ。リリ、いいかな?」
「はい! 父さま!」
父が魔力を流したんだろう。柱に嵌め込まれているすべての魔石から白い光が放たれ、丸い土台に描かれた十一芒星が光った。
「陛下!? リリアス殿下!」
光が消えたら、もうそこは辺境伯邸の転移門だった。オクソールとリュカがいた。
「オク、リュカ! 待っててくれたの!?」
「はい! 気になって、離れられませんでした! 殿下、ご無事で良かったです」
「陛下、エイル様、殿下」
「オクソール、辺境伯はいるかな?」
「はい、部屋で殿下をお待ちです。リュカ、知らせてきてくれ。ああ、クーファル殿下とフィオン様とニル殿にも」
「はい、分かりました!」
リュカが走って行った。
父に抱っこされて、地下から1階に上がり応接室に入ると、アラウィンとアスラールが走ってやってきた。
「陛下!」
「ああ、アラ。また突然来てしまったよ」
「リリアス殿下、ご無事で!」
「アラ殿、ありがとう」
「辺境伯、リリアスがお世話になります」
「エイル様、とんでもございません! 申し訳ございません! まだお小さい殿下にお辛い思いを!」
アラウィンとアスラールが頭を下げた。
「辺境伯、仕方のない事です。それより、夫人は大丈夫ですか?」
「はい、有難うございます。もう、落ち着いております」
「そう。お会いしたいわ。宜しいかしら?」
「勿論でございます! ご案内致します」
「陛下、宜しいですか?」
「ああ、エイル。行っておいで」
「父上、私がご案内致します。エイル様、長男のアスラールと申します」
「まあ、お話するのは初めてね」
「はい。お見知り置き下さい。どうぞ、ご案内致します」
「リリ、お母様は少し夫人をお見舞いしてくるわね」
「はい、母さま」
あ、クーファルとニルがやってきた。ソールとリュカもいる。
「リリ!」
「兄さま、ただいま!」
クーファルに抱き上げられた。
「殿下、ご無事で良かったです!」
「ニル、ありがとう! あのね、母さまも一緒に来たの!」
「まあ、そうなのですか!? じゃあ、もう転移門は直ったのですね?」
「うん! 帰りはあっと言う間に帰れるよ!」
「まあ! それは助かりますね!」
「クーファル、変わりないね」
「父上、早速来られたのですか」
クーファルの父を見る目が冷たいぞ。
「クーファル、お前はいつも冷たいね。おや、フィオンはどうした?」
「リリ! 父上!」
パタパタと慌ててフィオンがやって来た。
「フィオン、元気そうだね」
「父上! リリに危ない事をさせないで下さい! 父上はいつもリリに無理を言って!」
「あー、フィオン。大丈夫だ。ルー様もついていて下さる」
「だからと……」
「あー、姉さま、ありがとうございます。ボクは大丈夫です! それより、これでいつでもこちらに来れますよ!」
「リリ、心配したわ」
あ、アルコースがやってきた。
「姉さま、アルコース殿が来ましたよ」
「え? えっと……」
「ん? 次男かな?」
「はい、父さま。次男のアルコース殿です。姉さまがお世話になりました」
ヘッヘッヘッ。言ってやった。
「おや、フィオンがかい?」
「はい! 父さま!」
「リリ、やめて!」
「フィオン様、リリアス殿下?」
「アルコース殿、紹介します。父さまです!」
「フィオンが世話になったそうだね。有難う。」
「陛下! お初にお目に掛かります。次男のアルコースと申します」
「確か、フィオンの一つ上だったか?」
「はい! 同じ学園でした。」
「そうかい。ああ、思い出した。卒業式でフィオンが泣いた……」
「父上! 止めて下さい!」
俺はニルが出してくれた、りんごジュースを飲んでいる。
「リリ、またりんごジュースか?」
「うん、飲む?」
「いや、いいよ……て、ユキもか!?」
「ん? 美味いぞ?」
「失礼致します。殿下! お昼は食べられましたか!?」
あ、シェフが来た。そうだ、俺寝てて食べてないぞ。
「へ、陛下! 失礼致しました!」
シェフが父を見てびっくりしてらー。
「シェフ、いつも美味しい食事を有難う。」
「とんでもございません!」
「シェフ、ボクお昼食べてないや」
「なんと!? それはいけません! 殿下、食べられますか?」
「うん。軽めでお願い」
「畏まりました。少々お待ち下さい。では、陛下。失礼致します!」
ピュ〜とシェフが戻って行った。ブレないねー。
「…………」
「リリ……」
「ん? ゴクン……ルー何?」
「美味いか?」
「うん……」
俺はシェフが作ってくれたパスタを食べている。
アサリやムール貝がたっぷり入った、魚介のクリームパスタだ。
「無心だな」
「…………」
「ユキ……お前もか」
「美味いぞ」
「良かったな。似た物同士か」
何故かルーが呆れて見ている。なんでだよ? 美味いぞ?
「ルー、食べる?」
「いや、僕はいいよ」
「リリ、お腹空いてたのかな?」
「父さま、ボクお昼食べそこねたのです」
「ああ、泣きつかれて寝ていたからね」
「……」
「リリ、無心だね」
「シェフ、おかわりが欲しい」
ユキ、もう食べたのか!?
「ユキ……城でも肉を食べただろう?」
えッ!? ユキいつの間に食べたんだ?
「父君よ、シェフの料理は美味いんだ」
「そう、良かったね」
父まで呆れている。なんでだ?