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121ーガチ鬼ごっこ

「テティ! 来てたんだね! 干物ありがとう! 美味しかった!」

「リリアス殿下、それは良かったです」

 

 あれ? ユキめちゃ食べてる。


「ユキ、まだ食べてんの?」

「ああ、リリか。美味いぞ」

「ユキ、太らないでね」

「リリ、何を言うか」

「だって食べてばっかじゃん」

「そ、そんな事は……」

 

 あるじゃんか! 本当、今までどうしてたんだ?


「殿下、教えて頂きたい事があるのです。シェフもご存知なくて」

「え? シェフも? 何だろ?」

「これなんです。食べ方が分からなくて。と、言うか、食べられるのでしょうか?」

 

 テティが持ってきたのは、立派なアサリだった。


「おー! 立派だねー! 美味しいよ、これ!」

「そうなのですか? でも、以前試した時は、砂でジャリジャリして食べられた物じゃありませんでした」

「ああ、砂抜きしないからだよ」

「殿下、砂抜きですか?」

「うん、そう。シェフ」

「はい、殿下」

「これをね……」

 

 説明したよ、砂抜きの方法。


「こうして最低2〜3時間は、涼しい暗めの所に置いておくの。一晩置いても大丈夫だよ」

「まあ、これだけの事で食べれるのですか?」

「うん。これで砂を吐き出してくれるよ」

「殿下、それで調理法は?」

「ああ、あのね……」

 

 はいはい、また説明しました。

 今日の夕食で出てくるかな? 明日かな? アサリのお味噌汁もいいよな。


「殿下、このグラタンと言うのは、とても美味しいですね!」

 

 テティがグラタンを食べていた。


「そう? 城では普通に食べてたんだよ」

 

 シェフまた作ったのか。

 

「まあ! きっと皆知らないと思いますよ」

「そうみたいだね」

「先日殿下が、料理長に教えて下さった魚のフライですが、ポテトフライと一緒に試しに街の広場の屋台で、出してみたんですよ」

「そうなの? どうだった?」

「それはもう、大好評で! あっと言う間に売り切れました!」

「そう! 良かった!」

「ありがとうございます。本格的に広めようと、準備しているんですよ」

「領地の名物になりそうだね。新鮮なお魚なんて、他の領地じゃあ手に入らないもんね」

「そうでしょう? 良い名物になりますよ。ああ、それと昆布も今干していますよ。出来上がったらお持ちしますね」

「本当!? テティ、ありがとう!」



「あれ? 殿下もいらしたんですか?」


 ヒョコっと領主隊隊長のウルが顔を出した。


「ウル、どうしたの?」

「これから対戦を始めるので、ユキを呼びに来たんです」

「あ、忘れてた!」

「何? リュカも出るの?」

「当然ですよ。全員参加です!」

「あー、私も参加しますよ!」

「またシェフも!?」

「もちろんです!」


 また何の対戦をするのか知らないが。面白そうだ。


「ユキ、食べてないで行くよ」

「リリ、分かった。シェフ、また昼に頼む」

「はいはい。了解です」

「テティ、またね!」

「はい、殿下。ありがとうございました」


 俺はユキに乗って、リュカとシェフとウルと一緒に邸の裏に向かう。


「リュカ、何するの?」

「はい。誰が最後までユキから逃げられるかです!」

「何それ!? ユキは、めっちゃ食べてたのに動けるの?」


 俺はユキの首筋をフニフニ掴む。太ってきてないか? 肉付きがよくなったよな。


「我にとっては、腹ごなしだな」

 

 本当かよ!? しかし、色々考えるもんだなぁ。


「全員一斉にするの?」

「はい。ユキに倒されたら負けの、ガチの鬼ごっこですね」

「アハハハ! 面白そう!!」


 スゲーな! 領主隊と騎士団vsユキの鬼ごっこだ! 

 邸の裏につくと、もう皆集まっていた。シェフはエプロンしたままやるのか? やるんだろうな。


「殿下、来られたのですね」

「オク! ボクも参加したい!」

 

 両手を握りしめて、キラキラお目々で言ってやった!


「「「「ええー!!!!」」」」


 なんだよ。みんなしてブーイングかよ。


「いいよ。ボクは見てるよ」

 

 ブーブー! 俺もブーイングだよ!


「殿下、それが宜しいかと。危ないですしね」

「オクも参加するの?」

「はい。もちろんです。2冠を目指しますよ」

「頑張って! シェフもね! リュカもね! 皆んながんばれー!!」

「「「「おぉーー!!!!」」」」


 スゲーな、めちゃヤル気じゃんか! お遊びなのに、ガチだね。

 オクソールはこっちに来る道中の腕相撲大会で優勝してるからな。今回優勝したらマジで2冠だ。


「リリ、我も負けんぞ」

「うん! ユキも頑張って!」

 

 みんな暇なのか!? 気持ちはいつまでも子供ってヤツか!?


「ボクが合図しまーす!」

「殿下、出来ますか?」

「オク、どうすんの?」

「この旗を振り下ろして下さい。で、同時にReady go!です」

「分かった! ユキも同時にスタートなの?」

「いえ、ユキは10秒カウントダウン後です」

「ボク、数えるね!」

「じゃあ、お願いします」

 

 さてさて、いいかな? スタートラインまで引いてるよ。大の大人が、超マジで鬼ごっこだぜ。プププ、面白すぎるぜ!


「殿下、殿下! この台に乗って下さい。殿下、ちっちゃいから!」

「リュカ! ちっちゃいは余計!!」


 まあ、ちびっ子だけども。俺は旗を持って、リュカが持ってきた台にピョンと乗る。


「みんなー! いいかなー!?」


 台の上でパタパタ旗を振りながら聞く。


「「「おおッ!!」」」


 いくぞ! いくぞ!!


「レディー……ゴーッ!!」


 俺はバサッと旗を振り下ろした!

 

 ――おおぉぉぉーーー!!!!


 皆、一斉にスタートした! さすがいつも鍛えているだけあって、皆早い!


「いくよー!

 じゅーう!

 きゅーう!

 はーち!

 なーな! 

 ろーく!

 ごー!

 よーん!

 さーん!

 にーぃ!

 いーち!

 ユキ! ゴー!!」


 ユキが弾かれた様に駆け出した! はえーな! シュンッて音がしそうだ。


 邸の裏庭いっぱいに使って、領主隊も騎士団もバラバラに逃げる!

 ユキがあっと言う間に、距離を詰める! 一瞬じゃねーか。さすが神獣!

 


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