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118/442

118ー600年

「まあ! なんて美味しいのでしょう! 今迄食べていた海老と、全然違うわ!」

 

 伊勢海老のグラタンを食べた、フィオンの台詞だ。

 そーだろ、そーだろ! 美味いだろう!

 そりゃそうだよ、伊勢海老だもんな! 高級食材だからな!


「姉さま、気に入ってもらえましたか?」

「ええ、リリ! 本当にとても美味しいわ!」


 良かった良かった。シェフと相談した甲斐があるよ。


「これも、食べられていなかったのだな?」

「ええ、クーファル殿下。本当に勿体ない事です」

「父上、本当にそうですね」

「アスラールが仕留めたクラーケンもだな」

「父上、あれは私ではなくリリアス殿下ですよ」

「まあ、リリが!?」


 アスラール、フィオンの前でそれを言ったら駄目だよー! フィオンは俺に超過保護だからな。


「姉さま、違いますよ。アスラ殿が仕留めたも同然なんです。ボクは、とどめを指しただけです」

「リリ、あまり危ない事はしないでちょうだい。姉様、心配だわ」

「姉さま、大丈夫です。オクもリュカもユキもいますから!」

「フィオン様、こちらもリリアス殿下が教えて下さった、カルパッチョです」

「シェフ、これは生なのね?」

「はい、オリーブオイルと酢のソースをかけてあります。とても、爽やかで美味しいですよ」

「そうなのね。いただいてみましょう」


 タコと言っても、クラーケンなので大きいんだよ。その分、歯ごたえもスゲーんだよ。

 だから、シェフが薄~く透ける程に切ってカルパッチョにしてくれた。


「弾力と甘みが! とても美味しいわ」

「シェフ、やったね!」

「はい! 殿下!」


「殿下方、この後少し宜しいでしょうか?」

「リリ、平気かい?」

「はい、兄さま。まだ大丈夫です」

「何かございましたら、無理には…… 」

「ああ、辺境伯。違うんだ。リリはまた寝てしまうからね」

「そうでした。そうお時間は取らせませんので」

「アラ殿、大丈夫です」

「では、リリアス殿下。少しお時間を下さい」



 そして俺は、オクソールに抱っこされて、邸の地下に降りる階段をおりている。

 アラウィン、アスラール、クーファル、フィオンに、ハイクとリュカが一緒だ。


「殿下、こちらです」

 

 アラウィンが、白っぽい石でできた地下の扉を開けた。

 長く使われていなかったのだろう。石の扉が、ゴゴゴ……と音をたてた。俺達は中に入る。


 そこには一段上がった丸い土台に11芒星が、描かれている。

 11芒星って、たしかウンデカグラムだっけか?

 前世のアメリカの自由の女神の土台、あれが11芒星だったよな?

 まあ、俺の知識なんて中途半端だ。うろ覚えって、やつだ。

 11芒星の11個の頂点には白い石でできた柱が立っている。

 そして11本の柱の中央には、幾何学模様のアラベスク柄が彫り込まれている。

 その柄の中心に、11芒星の中央に向かって、透明な丸い魔石が嵌め込まれている。

 向き合っている柱の上にも、同じ様な柱が渡してあって、中央に同じ柄と魔石がある。

 柱は11本だ。正面右側の1本だけ、上に柱を渡してない。てか、奇数だから対にしていったら1本余るよな。

 その柱にある魔石だけ大きさが違う。

 他の柱の魔石より一回り? いや、二回り位大きい。この魔石が起動装置か?

 これが転移門。中世ヨーロッパか、それとも古代ローマ遺跡か、て趣きだ。

 邸の地下にこんな大きな設備があるなんてな。


「辺境伯、これは?」

「クーファル殿下、これがルー様が仰っておられた転移門です」

「これが…… 」

「大きいのですね」

「オク、下ろして」


 俺は、オクソールの腕からおりて、転移門の方へ歩いた。


「リリ、ストップだ」

 

 ポンッとルーが現れた。


「ルー、なんで?」

「リリ、気をつけて。て、言ったろ?」


 パタパタと俺の肩に止まった。


「え? ルーこれも?」

「ああ。むしろこれは特にだろ?」

「そうなの?」

「ああ、そうだ」

「ルー様、リリがどうしたのですか?」

「ああ、フィオン。リリは光属性が強いんだ。初代も強くてな。初代の魔力の残滓があると、引っ張られるんだよ」

「引っ張られる……ですか?」

「ああ。意識が過去に引っ張られてしまう。見なくて良いものを、見てしまうかも知れない」

「ルー様、それは初代が見たものと言う事ですか?」

「クーファル、そうだ。言っただろう? 初代の頃は、今みたいに平和じゃなかったんだよ」

「そうでした。リリはまだ見ない方がいい」

「兄さま、ルー。そんなになの?」

「ああ、この部屋の扉がなんで石造りなのか分かるか?」

「もしかして……魔物?」

「そうだ。万が一の時に、魔物が入ってこれない様にだ」

「そうなんだ……」

 

 扉や柱が白っぽいのも、魔物避けが使われているんだろう。


「これが、最後に使われたのが30年前だ。転移門が作られたのが、630年前だ。

 600年間、魔力を補充しながら使われていたんだ。初代は凄いだろ?」

「うん、想像できないや」

 

 マジ、残っているだけでも凄い事なのに、使われていたんだもんな。


「リリ、君が引き継ぐんだ。修復できるのは、リリしかいない。リリは以前花を咲かせた光の大樹と、この転移門を守り引き継ぐ事。それが役目になる。悪いな、プレッシャーかけてしまって」

 

 いや、プレッシャーもあるが……


「ルー、ボクは修復できる事を誇りに思うよ。守り引き継いでいくよ」


 アラウィンが感慨深げに話し出した。


「私はまだ子供でしたが、使われていたのを覚えています。実際に父と一緒に、転移した事もあります。先代の皇帝陛下が、光属性の魔力を補充する為に、定期的に来られていたのも覚えております。600年間、続けて来られたのです。

 次代のフレイ殿下に、壊れたままお渡しするのは心残りでありました。リリアス殿下。殿下には心から感謝を。領地の事でも、大変ご迷惑をお掛けしましたのに」

 

 違うんだ。辺境伯領だけの為ではない。迷惑なんかでもない。


「アラウィン辺境伯、迷惑などではありません。辺境伯領の為だけではなく、帝国の為です。ボクは、帝国第5皇子としてできる事をしただけだ」

 

 俺は敢えて口調を変えて、アラウィンに言った。

 そして、クーファルを見た。


「ああ。リリアス。そうだよ。辺境伯領が盤石でないと、帝国の平和にも関わってくる。リリアスだけでなく、フィオンも私も。帝国の皇家としての役目だ。辺境伯、この地を頼んだよ」

 

 アラウィンとアスラール、ハイクは跪いた。


「必ず……必ず守り続けて参ります。陛下や殿下方から受けた恩義に報いる為にも。お任せ下さい。」


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