表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

114/442

114ーテティ

「おっちゃーーん!!」


 俺はクーファルと、ソール、アラウィン、アスラールと一緒に港まで来ている。

 そこで、ニルズを見つけて、手を振りながら駆け出した。

 後ろからオクソールとリュカとシェフがついてくる。

 ニルとユキはお留守番だ。


「おー! リリ殿下! 来たか!」

「おっちゃん! 来たよ!」

「おう! 元気だな!」

「うん!」

「シェフも来てくれたのか!?」

「はい! またお世話になります!」

「こっちこそだ! 女房達が世話になったな!」

「いいえ、お綺麗な奥様で、羨ましいです」

「えっ!? そうなの!?」

「ガハハ! そうなんだよ! ガハハハ!!」


 バシバシ、シェフの背中を叩いている。

 ニルズはやっぱ無敵だ。


「おっちゃん今日は何すんの?」

「今日か? 今日はな、また食べ方を教えて欲しいんだ」

「ボクが?」

「ああ。リリ殿下、いいか?」

「ボク、何も知らないよ?」

「ガハハ! 何言ってんだ! リリ殿下ほど、物知りなのはいねーよ!」

「えー、違うと思うよ?」

「まあ、いいからいいから。取り敢えず、見てくれや」

「うん」

 

 ニルズに連れられて歩き出す。


「リリ? この者がおっちゃんなのかい?」

 

 クーファルがいつの間にか俺の横にいた。


「うん、兄さま。紹介します。おっちゃんです!」


 ジャーン!! と、俺はニルズを紹介した。両手のヒラヒラ付きだ。


「おいおい、リリ殿下。おっちゃんはねーだろ」

「えー、だっておっちゃんじゃん」

「ガハハハ! ちげーねー!」

「リリがお世話になったそうだね? 私は兄のクーファルだ。今日はよろしく頼むよ」

「えっ! えっ!? ク、クーファル殿下!! ニルズと申します! こちらこそ、宜しくお願いします!!」


 ニルズがガバッとお辞儀した。おいおい、俺とえらく態度が違うじゃねーか。


「おっちゃん、兄さま知ってんの?」

「何言ってんだ! 当たり前じゃねーか! フレイ殿下にクーファル殿下と言えば、カッコいい! つって、帝国中の女が騒いでるぜ!」

「そっか。兄さまカッコいいもんな」

「ん? どおした? リリ殿下だって、とんでもなく可愛いて有名だぜ?」

「おっちゃん、可愛いは駄目。ボクは男の子!」

「ガハハ! そーかそーか! 男の子か! まだ殿下は、ちっさいから仕方ねえわ。大きくなったら、リリ殿下かっこいいー! て、ブイブイ言わしてやんな!」

「ブイブイ!!」

「おお! ブイブイだ!」

「うん! おっちゃん!!」 

「こらこら、ニルズ。殿下に変な事を教えるんじゃない」

「領主様、今日はすまねーな! 宜しく頼んます!」

「いや、こっちこそ。宜しく頼むよ。で、どこだ?」

「ああ、こっちだ」



 ニルズに連れて行かれた所には、沢山の海の幸が並んでいた!


「おっちゃん! 凄い! 何これ! どうしたの!?」

「ああ、海に沢山いるんだよ。でも、食べ方が分かんなくってな。今迄食べてなかったんだ。リリ殿下なら分かるかと思って、今朝早くにとってきたんだ」

 

 マジか!? こんなにあるのに、食べてなかったのか!?


「こら、あんた! 言葉使いを直しな、て言ってるだろ!? リリアス殿下、すみません。うちのが失礼ばかり言って」

 

 えっ!? うちのが……!? 何!? この美人!


「あー、殿下。うちの女房だ」

「リリアス殿下、初めまして。テティと申します。おばちゃんでいいですよ」

「えー! おっちゃん! めっちゃ美人の奥さんじゃん!!」


 フィオンや母も美人だが、また違う。

 健康的な美人だ!

 赤茶の緩いウェーブの髪に、淡い茶色の瞳。

 無造作に結んだ髪の後れ毛が、大人の色気を感じさせるね!


「ガハハハ! そーだろそーだろ!」

「殿下、奥様を助けて頂いて、有難うございました」

 

 テティが俺に、声を抑えて言った。


「え? なぁに?」

「ケイアの事です」

「あれはボクじゃない。クーファル兄さまと、フィオン姉さまだ」

「いいえ、殿下もですよ。私は子供の頃から奥様と一緒に育ったんですよ。奥様の侍女だったんです。

 この人と婚姻して、今は漁師の女房ですけどね。ずっと心配していたんです。殿下方のお陰で、やっと風が通った気がします」

 

 いや、俺はなんもしてねーよ。


「兄さま、助けてください」

「リリ、どうした? 珍しいな」

「まあ! クーファル殿下! よくいらして下さいました!」


 おいおい、声が1トーン上がってるじゃねーか。


「兄さま、おっちゃんの奥さんです」

「ああ、そうなのか。リリが世話になった」

「いえ、こちらこそ! 奥様を助けて頂いて、感謝しております。本当に有難うございました!」

「あー、いや。遅くなってしまって、夫人に怪我をさせてしまった。力足らずで、すまない」

「殿下! 何を仰いますか! 誰もどうにも出来なかったのです! もう、殿下方には感謝しかありません!」

「ああ、その通りだ! クーファル殿下、リリ殿下。有難うございます!」

「もう、おっちゃんまで! やめて!」

「ふふふ、本当に可愛らしい殿下ですね。おばちゃんとも仲良くして下さいね」

「そんな! こんな綺麗な人に、おばちゃんなんて呼べません! テティて呼んでもいいですか!? ボクはリリです!」

「プフ……」

 

 うん、ここでリュカが吹き出すのは、もう定番だな。この吹き出しがないとちょっと寂しいからな。


 


「殿下、分かるかい?」


 俺は、ズラリと並べられた魚介類の前に、ニルズと一緒にしゃがみ込んでいた。


「んーとね、おっちゃん氷水ある? それと、大きな鍋で茹でられる様に用意してほしいな。あ、あと焼く用意もお願い!」

「よしきた!」

「それから、シェフ!」

「はい、殿下。どうしますか?」

「あのね、氷水で洗ってから、ここに小さなナイフで……」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ