表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

113/442

113ー寝ちゃったよ

「アラ、卒業パーティーの時の事を覚えているかい?」

「はい、忘れられません」

「そうだね。私もだ。あのドレスの切り裂き方は、尋常じゃなかった。

 遠く離れてしまって、何も出来ずにいたが、これでも心配はしていたんだよ。まさか、こんな事になっているとは。私の自慢の子供達はどうだい?良く出来た子達だろう?

 だが、アラ。水臭いじゃないか。もっと早くに頼って欲しかったよ。無理矢理にでも、あの時に引き離しておけば良かったと思ったよ」

「勿体ないお言葉です」

「本当に……アスラール、アルコース。長い間、我慢させてしまったね。もう、君たち家族の邪魔をする者はいない。よく、頑張った」

「陛下!」

「陛下、有難うございます」

「アラ、今回君は確かに罪を犯した訳ではない。しかし、もっと早くに対処していれば、ケイアも此処まで歪む事がなかったかも知れない。何より、君の家族が苦しまなくて良かっただろう。その事を忘れてはいけない。二度と同じ過ちを犯してはいけない。約束してくれないか?」

「陛下、お約束致します。もう二度とこの様な事は!」

「アラ、もう、暫く子供達を頼むよ。観光にでも連れ出してやっておくれ。

 さて、リリは……ああ、寝てしまったか。小さいのに、よくやってくれた。クーファル、案内してくれないか? 神獣を見ておきたい」

「はい、父上」




「……ふぁ〜……あれ?」

「殿下、おはよう御座います」

「ニル! 父さまは!?」 

「昨夜、直ぐにお戻りになられました」

「そう……」


 俺は、モタモタとベッドをおりる。

 顔を洗って、着替える。


「昨夜は、陛下が抱いて来られましたよ。突然、陛下がいらしたので驚きました」

「うん」

「ユキを見に来られました」

「そう……」

「さ、殿下。食堂に参りましょう」

「うん」



 部屋を出たらクーファルがいた。


「兄さま! おはようございます」

「リリ、おはよう。さあ、食堂に行こう」


 俺はクーファルに抱き上げられた。


「リリ、元気がないじゃないか」

「兄さま、せっかく父さまがいらしていたのに、寝てしまいました」

「そうだね。リリはまだ小さいから仕方ないよ」

「でも、兄さま。もっと父さまと、一緒にいたかったです」

「リリ、兄さまじゃあ駄目かな?」

「いえ、そんな事はないです。兄さまも好きです」

「そうか。じゃあいつもの様に元気になってくれないか? 今日は朝食が終わったら、一緒にニルズに会いに行こう」

「兄さま、おっちゃんにですか!?」

「ああ。兄さまにも紹介してくれるかな?」

「はい、兄さま!」

「よし、じゃあ元気出して、しっかり朝食を食べよう」

「はい!」



「殿下! おはようございます!」

「シェフおはよう」


 いつでも平常運転のシェフには救われるよ。


「殿下、今朝はエッグベネディクトに、さつま芋のガレットです。沢山食べて下さい!」

「シェフ、ありがとう」

「殿下、おはようございます」

「アラ殿、おはようございます。昨夜は途中で寝ちゃってごめんなさい」

「いえ、とんでもございません。殿下、食事が終わったらニルズに会いに行きましょう」

「はい! 楽しみです」


 さあ、シェフの朝食を食べよう。

 そして、おっちゃんに会いに行こう。

 俺が元気がないと、心配かけてしまうだろう。

 しっかり、食べよう!


「シェフ、これも初めて見る料理です」

「アスラール様、エッグベネディクトと言います。いつものパンよりも水分の多い丸いパンに、トロトロのポーチドエッグとベーコン等をのせて、オランデーズソースをかけたものです。美味しいですよ」

「はむ……」

「アスラール殿、これも城では定番だ」

「お兄様、定番ですわね」

「クーファル殿下、フィオン様、私は初めてです。シェフ、これもやはり殿下が?」

「アスラール様、勿論そうです」

「……?」 


 シェフ、勿論て何だよ。


「シェフ、さつまいものガレットも、とても美味しいわ」

「フィオン様、有難うございます」

「本当、シェフ美味しい!」

「殿下、有難うございます!」

「ガレットと言うのですか?」

「はい、アラウィン様。バターで炒めたさつまいもに、チーズを加えて焼いてあります」

「さつまいもの甘みと、溶けたチーズがいいですね」

「アルコース様、有難うございます」

「いつもはじゃがいもだけど、さつまいももいいな」

「クーファル殿下、そうでしょう?」

「ええ、私はさつまいもの甘みが好きだわ」

「フィオン様、有難うございます」


 うんうん、美味いな。

 とろーりチーズがいい感じだ。


「シェフ、これも?」

「はい、アスラール様。殿下です」

「フハハ、本当にリリアス殿下は素晴らしい!」

「……?」

「リリ、褒められてるよ?」

「兄さま、ボク何もしてないです」

「リリったら。でも、城では当たり前に食べていたのに、違うのね。珍しい物だったのね」

「フィオン、そうだね。定番すぎて、分からなかったね」

「兄さま、何ですか?」

「いや、リリはいいよ。沢山食べなさい」

「はい、兄さま」


「殿下とシェフのお陰で、食卓がとても豊かになりました」

「父上、本当に。以前とは全然違います」

「それに兄上。こうして、平和な朝食は良いですね」

「アスラール、アルコース。これからだ。今迄以上に、領地を守り、住み良くしないと。陛下への恩返しだ」

「はい、父上」

「夫人のお加減はどうですか?」

「フィオン様、有難うございます。大分顔色も良くなってまいりました。レピオス殿が、血を作るためにもゆっくり養生する様にと言ってくれてます」

「そうですか、無理なさらない様に」

「はい、有難うございます」

「……ゴクン。ごちそうさま! シェフおいしかった!」 

「はい、殿下。今日は私もご一緒しますよ」

「シェフ、そうなの?」

「はい! また新しい食材に出会えるかも知れませんので!」


 シェフ、張り切ってるなぁ。

 いつものワゴンを押して戻っていった。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ