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11ー理由

 そんな話をされているとは露知らず……俺は泣き疲れて爆睡していた。

 寝ている俺の側でルーとニルが見守っている。


「参ったな…… 」

「ルー様?」

「リリだよ。まさかあんなに泣いて訴えるなんて……」

「はい。泣き疲れてよく寝ていらっしゃいます」

「こうして寝顔を見てると、可愛い3歳児なんだけどな」

「フフフ……そうですね」

「普通は人間て、自分を殺そうとした者の事は憎いんじゃないのか?」

「そうですね…… 」

「なのにリリは何だ?」

「ルー様、リリアス殿下は悲しかったのではないでしょうか? それにリリアス殿下が仰っていた、周りの大人に恵まれなかった。と、言う事はお可哀想だと思います。実際にそうだったのでしょう。自分より小さい弟殿下を、湖に突き落とすのは相当な勇気がいる筈です」

「なるほどな……」

「そこまで追い詰めた大人も悪いです」

「まあな…… 」

「私はリリアス殿下がお生まれになられた時から、殿下のお世話をさせて頂く事が夢でした」

「そうなのか? じゃあ夢が叶ったんだな」 

「はい。そうなんですよ。誰もそんな未来を奪ったらダメなんですね。子供には未来があるんですね。そんな当たり前の事なのに、忘れていました」

「そう言ったリリも子供だって分かってんのかな?」

「フフフ……本当ですね。子供どころか、まだ幼児ですよ」

「そうか、幼児だな…… 」




 パチッと目が覚めた。もう陽が高いな……?


「ニリュ…… 」

「リリアス殿下、お目覚めですか?」


 俺、なき疲れて寝てたんだ。マジか、さすが3歳児だな。


「ニリュ、とーさまは?」

「陛下と皆様ご一緒に、今朝早くにお発ちになられました」

「そう……」

「殿下、お身体は如何ですか?」

「オク、だいじょぶ。元気」

「では、殿下。お食事をお取り下さい。レピオス殿が、今日はまだ安静にされる様申しておりました」

「うん……」

「体力が戻っておられないのに、昨日沢山泣かれましたから。昨夜はまた少しお熱が出たんですよ」

「そう…… 」

「リリアス殿下、とにかく食べましょう」

「ニリュ……あんまり食べたくない」

「殿下、いけません。昨夜も食べずに寝てしまわれました。少しでもお食べになりませんと」

「オク……わかった」


 もそもそとベッドから起き出し、顔を洗い、ニルに着替えを手伝ってもらって、ソファーに座った。


「リリアス殿下、少し冷ましますね」

「ニリュ、自分で食べりぇりゅ」

「ダメです。これはニルの仕事です。さ、殿下お口を開けて下さい」

「あーー……」


 仕方なく口を開けると、口の中に優しい味が広がった。


「……ニリュ、こりぇみりゅく粥?」

「そうですよ。リリアス殿下ミルク粥お好きでしょう?」

「……うん。好き……あー」


 結局食べさせてもらって完食だぜ。

 3歳児のメンタルは想像以上に脆い。


「……ニリュ、りんごジュースがいい」

「はい、殿下」


 ニルにりんごジュースを貰い、両手でコップを持って飲む。コクリコクリとゆっくり飲む。


「…… ニリュ、ごちそうさま」


 食べ終わるとそのままソファにポテッと上半身を横に倒した。

 涙がツーと目から流れた。いかん、想像以上に気持ちが落ちてるな。

 しっかりしろよ、男が泣くなよ。俺の涙腺はどーなってんだ?涙を隠したくて顔をソファに擦りつけた。身体を起こし座り直す。


「ニリュ、オク。教えてほしい事がありゅ」

「何でしょう?」

「昨日、フォリャンねーさまが言ってた爵位や髪の色てなに?」 

「リリアス殿下」

「ニリュ、教えて」


 ニルは、ゆっくりと話し出した。


「皇后陛下、第2側妃のナンナ様、殿下のお母上のエイル様はご実家が侯爵家です。イズーナ皇女殿下とフォラン皇女殿下のお母上のご実家は伯爵家でした。その事を言っておられたのです」

「……そんなに気にすりゅ事なの?」

「元々、皇后陛下には伯爵家の者は候補にはなれません。侯爵家以上の御令嬢から、選ばれる事になっております。側妃様は、伯爵家以上の御令嬢から選ばれます」


 身分制度か…… 昔の日本みたいだな。大奥みたいな?


「じゃあ、なんで?」

「フォラン皇女殿下のお母上様のご実家であるフレイスター伯爵家の伯爵夫人と夫人付きの侍女が、伯爵家だから皇后になれなかったと逆恨みされていたそうです」

「よく分かりゃない。皇后になりたかった、て事?」

「そうらしいです。しかし、帝国では、皇后陛下は侯爵家以上の御令嬢と決まっておりますので」

「そりぇを知りゃなかったの?」

「貴族でしたら、皆様ご存知の筈です。学園でも教わります」


 変だな…… 知らない筈はないんだろ? 


「……? じゃあ、髪の色は?」

「リリアス殿下もそうですが、他のご兄弟も皆様金か淡いブロンドの髪に他の色が混じった髪色をなさってます。イズーナ皇女殿下とフォラン皇女殿下、お二人だけ金やブロンドではなかった事を仰っておられたのではないかと思います」

「……そんな事…… 」

「はい」

「そんな事で人を、弟を殺そうと?」

「殿下」

「オク?」

「爵位の事も、髪色の事もその事を必要以上に卑屈に思われ、周りから馬鹿にされていると思い込まれていらしたのでしょう」

「そっか…… 」

「殿下が、お気になさる事ではありません」

「…… 」

「元々、第1側妃のレイヤ様のご実家は伯爵家ですが歴史ある家系でいらっしゃいました。ですから、第1側妃に選ばれたのです。しかしプライドの高いお方でしたので、側妃では我慢ならなかったのでしょう。光属性を持っておられない事もあると思いますが」

「オク、そんな事、人を殺めりゅ理由にはなりゃないよ」

「殿下、仰る通りです」


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