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106ーグラタン

「殿下……!」


 俺は元のサイズのユキを連れて食堂に入った。初めて見るフィオンや夫人が驚いている。


「リリ、それは?」

「姉さま、ユキです。神獣です。ユキ、ボクの姉さまだよ」

「神獣……初めて見たわ」

「姉さま……超スベモフです」

「え……? スベ? スベモフ?」


 そう言ってから、フィオンは早かった!

 あっと言う間に移動して、ユキに抱き着いた。


「まあ! まあ! なんてスベスベモフモフなんでしょう!」

「リリ、こんなのばかりか?」

「アハハハ、ユキいいじゃん!」

「しかしだな」

「ユキ、怖がられるよりずっといいよ?」

「いや、それとこれとは話が違う」

「ユキ、私はリリの姉でフィオンよ。宜しくね」

「ああ。離れてくれるか?」

「まあ! なんかユキってカッコいいわね!」

「アハハハ!」

「フィオン、それ位にしておきなさい」

「お兄様……はい、すみません」

「クーファル、かたじけない」

「まあ、気持ちは分かるけどね。ユキは食べる時は、小さい方が良くないかい?」

「兄さま、どうして?」

「大きいと、食べ方もワイルドだったろう?」

「あれ? ダメですか?」

「いや、私は構わないが」


 ああ、女性達か。ちょっと引いちゃうかな? 超ワイルドだから。だってユキヒョウだからな。立派な犬歯がある。


「ユキ、食べる時は小さくなってもらってもいい?」

「リリ、そうか? 我はどっちでもいいぞ」


 そう言ってユキはまた光って小さくなった。


「やだ! 可愛らしい!」


 ダメだ、またフィオンが反応している!


「フィオン、食事だ」

「お兄様、すみません」


 クーファル、いいぞ。よく止めた。


「殿下! お待たせ致しました! お食事ですよ! あれ? ユキ。小さいまま食べるのですか?」

「ああ。クーファルが食事は小さいサイズでと」

「そうですか。ユキ用に肉の塊を焼いたのですが」

「何ッ!? 肉の塊だと!?」


 ユキ、肉に食いついたぜ! 目がキランて光ったぜ! やっぱ肉食か。


「兄さま、いいですか?」

「んー、そうだね。じゃあ、ユキは調理場で食べてくるかい? 持ってくるのも大変だろう?」

「我はどこでも良いぞ」

「じゃあ、ユキ。私と調理場に行きましょう」

「わかった」

「先に、殿下のお食事をご用意しますから、待って下さいね」

「ああ」


 ユキがお座りして長い尻尾をブルンブルン振っている。嬉しいのか? 豹てたしかネコ科だよな。


「ユキ、今まで食事はどうしてたの?」

「まあ、そこら辺の獣や魔物を倒してたな」

「ふ〜ん。生で食べるの?」

「リリ、我は調理などできん」

「そうだよね」

「さあ、殿下。今日はグラタンですよ!」


 そう言ってシェフが、熱々に焼けたグラタンを置いてくれる。


「シェフ、牡蠣の!?」

「はい、そうです。美味しいですよ!」

「やった!」

「殿下、シェフ。そのグラタンとは?」

「あれ? アラ殿、知らないですか?」

「はい。リリアス殿下、初めて聞きます」

「まあ皆様、食べてみて下さい。熱々ですから気をつけて下さい」

「シェフの料理は、何でも美味しいから楽しみだ」

「辺境伯様、有難うございます!」


 メイドがアラウィン達に、グラタン等夕食を並べる。


「さ、殿下もどうぞ」

「シェフ、ありがとう! いただきまーす! フーフーフー……ん〜美味しい〜!」

「リリ、我もそのグラタンとやらを食べてみたい」

「え? ユキにはお肉がある、て言ってたよ?」

「ああ、肉も食べたいのだが、それも食べてみたい」

「シェフ、いい?」

「はい。お持ちしましょう。肉はどうしますか?」

「それも食うぞ。」

「はい、分かりました」


 アラウィン達も冷ましながらグラタンを食べている。グラタンは初めてらしいぞ。


「これは殿下。クリーミーで美味いものですな」

「あなた、本当に。とっても美味しいわ」

「それは、よかったです」

「辺境伯、グラタンは本当に知らなかったのか?」

「はい、クーファル殿下。初めてです。殿下はご存知で?」

「ああ、定番だ」

「そうですね、お兄様。城では定番ですね」


 ユキがシェフにもらって、グラタンにがっつく。


「リリ! 熱いぞ!」

「ユキ、フーフーしなきゃ」

「フーフー?」

「うん、フーフーして冷ますんだよ」


 近くにいたメイドさんが、冷ましてくれている。手間かけて申し訳ないね。てか、可愛いと得だね。


「シェフ、このグラタンはシェフが考えたのか?」

「辺境伯様、リリアス殿下の考案です」

「ハフッ……」

「リリ? そうなのかい?」 

「兄さま、ボクは知りません……ハフッ」

「リリアス殿下は、まだ3歳になられてませんでしたから。覚えておられないのでしょう。ホワイトソースとチーズをかけて焼いて、と言われました」


 そうなのか? 全然しらんよ? 知らないと首を横に振る。ながら食べる。モグモグ。


「まあ、よくある事だね、リリ」

「兄さま、本当に覚えてないです」

「リリ、美味いな!」

「ユキ、そう? 良かった」


 結局、ユキはグラタンを平らげた後、肉も食べるとシェフについて調理場に行った。

 俺たちは隣の応接室に移動してきた。アラウィン、アスラール、アルコース、クーファルとソールが一緒だ。

 俺はユキが戻ってくるのを、一緒に待つ事にした。

 メイドが皆に紅茶を出している。俺はニルがりんごジュースをくれた。


「あんなに食べるのに、今迄どうしてたんだろう?」

「リリ、神獣は確か、そんなに食べなくても大丈夫だったと思うよ。ユキは人間の食べ物に興味があるんだろう」

「兄さま、そうなんですか?」

「ああ、確かそうだったと思うよ。後でユキに聞いてごらん?」

「はい、兄さま。そうします」


 コクコクコクとりんごジュースを飲む。食後のりんごジュースも美味い。


「クーファル殿下、リリアス殿下。今回の調査では本当に有難うございました」

「辺境伯、私は何もしていない。リリのお手柄だ」

「兄さま、ボクも別に何もしてません。領主隊の皆さんは素晴らしかったです。すっごい強いんですね!」

「リリアス殿下、有難うございます。しかし、殿下が気付かれなかったら、そのまま見過ごしておりました。気付いていたとしても、殿下の様に浄化や解呪など出来ません」


 いやぁ、そんなに言われると照れるなぁ。エヘヘ。


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