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102/442

102ーユキ

「リリ、やってしまったね」

「え? 兄さま?」


 やっぱりかぁ。いつの間にか、クーファルがすぐ側に来ていた。

 

「私はリリの兄でクーファルだ。ユキ、リリを本当に守ってくれるのかな?」

「ああ。あのままだと、我は近いうちに死んでいた。恩ができたからな」

「ユキ、君はユキヒョウかな?」

「ああ、見かけはな。我は神獣だ」

「へっ!? 兄さま?」

「あー、これは私の手に負えないね。

 ルー様!」


「はいな! 呼んだ?」


 ポンッと光と共にルーが現れた。

 最近、思うんだ。ルーの喋り方が最初の頃と違ってきてない? だんだん、オッサン臭くなってきてないか? 『はいな!』とか言ってるじゃん?


「リリ、そんな事はないと思いたい…… 」

「なんと!? 光の精霊か!?」

「おや? 珍しい。神獣がどうしてこんな所にいるんだ?」


 ルーがユキを見て言った。


「ルー、河の向こう側のお隣の国で狙われたんだって」

「そうなのか? 馬鹿な人間はどこにでもいるんだね」

「ルー様、本当に神獣ですか?」

「ああ、間違いないよ。神使とも言うな。この豹は光の神の使いだ」

「ええー! ルーとどっちが偉いの!?」

「比べ様がないさ。カテゴリーが違う。まあ、でも僕かな」


 あ、ルーがドヤってる。なんかムカつく。白い鳥さんなのに。


「精霊は超自然なものだ。神獣はあくまでも元は獣だ」

「へえ〜」

「リリ、へえ〜じゃないからね。クーファル、どうした?」

「ルー様、リリが名付けをしてしまいました。ユキと」

「……は!? 神獣にか!? て言うか、まんまだけど良いのか?」

「はい。気にしていない様です」

「リリ、お前は本当に…… 」

「エヘヘ〜」

「エヘヘじゃねーよ! 僕は褒めてないからね!」

「ええー!」

「まあ、良いんじゃないか? リリを守ってくれるだろうさ。もしかして、引き寄せたのか? えっと、ユキか。リリの立場と状況を知っておく事だ」

「何? 加護を受けている以外にも、まだあるのか?」

「ああ」


 ルーが俺の状況を説明し出した。

 長くなりそうなので、俺はオクソールに抱っこしてもらって、りんごジュースを飲む事にした。コクンと……


「人間と言うものは、馬鹿としか言いようがないな」

「その馬鹿な奴等からリリを守れるか?」

「ああ。当然だ。

 我が敵を切り裂く光の剣となろう。

 凶刃から守る盾となろう。

 支えとなる杖となろう。

 助けられた命だ。リリとやらに片時も離れず寄り添い守ろうぞ」

「そうか。それは心強い。まるで、騎士の誓いだな。頼んだ」


 俺は無言でりんごジュースを飲んでいた。コクコクと……


「…… 」

「……リリ、りんごジュース美味いか?」

「うん、ルーも飲む?」

「いや、いらねーよ。緊張感ねーな! ユキのカッコいいとこだぞ? 真剣に聞いてやれよ。リリ、空気読もうな」 

「……!!」


 俺ほど空気の読める5歳児はいないだろうよ!? ちょっとショック……


「なら、その体は駄目だ。なんとかしなよ」

「精霊よ、どうしろと?」

「ユキ、人間の世界では目立ち過ぎるんだ。何より大き過ぎる」


 うん、クーファル。その通りだな。なんせ2mはあるよな。オマケにユキヒョウだからな。普通に怖がられるだろう。

 まぁ、俺はりんごジュースをまだ飲むぜ。コクコクコクと……


「…………」

「殿下、りんごジュースはもうその辺で」

「えー、オク。だめ?」

「はい。先程から飲み過ぎです」

「はーい」


 俺は仕方なく、りんごジュースをマジックバッグに仕舞った。



「どんだけりんごジュース持って来たんですか!?」

「え? リュカ。そんなの沢山持って来たに決まってるじゃん」

「アハハ!」

「ねえ、リュカ。尻尾触らせて?」


 俺はリュカに手を伸ばす。


「いや、駄目ですよ。何言ってんスか」

「じゃあ、耳でもいいよ」

「いや、意味分かんないッスよ」

「ええー! モフりたい!」

「殿下、俺より全身モフモフが、目の前にいるじゃないですか」

「ん?」


 そうだった。


「オク、おろして」

「はい、殿下」


 俺はトコトコと、ユキの側に行った。そしてボフッと抱きついた。


「リリ、何してんだよ!?」

「んー! だってルー、すっごいモフモフ! でもちょっとばっちいね」

『クリーン』


 ユキの体がシュルンと綺麗になった。


「クハハハ!」


 またリュカが笑ってる。ま、いいけどさ。またオクソールに叱られない様にしろよ?


「ねえ、ユキ。乗せて!」

「ああ、いいぞ」


 ユキは、俺が乗りやすい様に伏せてくれた。ヨイショと背中に乗る。


「いいよー! じゃあ、戻ろう!」

「リリ、待ちなさい。そのまま戻るのかい?」

「えッ? 兄さま駄目ですか?」

「いや、駄目と言うか。アハハハ! 本当にリリは規格外だ!」


 いや、俺もうこのまま戻る気満々なんだけど? 超お気に入りなんだけど。


 

 肩にルーをとまらせて、俺がユキに乗ったまま戻ると大騒ぎになってしまった。


「殿下! そのユキヒョウは!?」

「エヘヘ。アルコース殿、カッコいいでしょ〜」

「いや、その。カッコいいですが。どうしてこの様な事に!?」


 また長々とクーファルが説明してくれた。


 俺は、シェフがいたので、お腹が空いたと訴える。


「殿下、ここで食事は無理です。もう少し我慢して下さい」

「えー。そうなの?」

「はい。魔物が寄ってきますから」

「分かった。我慢するよ」


「では父上。その神獣がいた為に、トードがこちらに移動してきていたと?」

「ああ、アルコース。おそらくそうだろう」


 そうそう。ユキヒョウがいた事が原因だね。


「ユキがいたところだよね。河の水が溢れて小さな池になってた。あそこが、トードのお家だったんだよ。

 でも、魔物とは別格で、モヤモヤまであったユキがいたから、こっちに移動してきたんだね。そして、グリーンマンティスがご飯になっちゃった。だから、トゲドクゲの卵が食べられなくて、沢山孵化したんだね」

「では、殿下。トードをもっと討伐しておきますか?」

「アルコース殿、駄目」

「駄目ですか?」

「うん。駄目。レピオス説明おねがい」

「はい、殿下。森には森の生態系があるのです。今回、トゲドクゲが増えたのも、その生態系のバランスが崩れたからです。

 トードを討伐しすぎると、今度はトードを食料にしていた魔物が飢えて餌を求めて出てきます。それは、人間にも影響が出るかも知れません。ですので、狩り過ぎてはいけません。ほどほどが大事です。

 先程、既にかなりの数を狩ってますので、後は神獣がいなくなれば自然に戻るでしょう。もちろん、ウルフ系やボア系等の、直接人間を襲ってくる魔物は別です」


 うん、その通りだ。さすが、レピオス。俺の師匠だ。


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