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101/442

101ーユキヒョウ?

 池の脇に横たわっていたものが、こちらに向かって威嚇の声をあげている。

 しかし、何だ? 弱っているのか? 動けないのかな? 攻撃してくる様子はないな。


「魔物だろうけど、浄化してみないと」


 俺はオクに下ろしてもらい、一歩前に出て両手をかざす。大丈夫、ちゃんと両脇にオクとリュカがいてくれる。


『ピュリフィケーション』


 俺が心の中で詠唱した瞬間、黒いモヤモヤに包まれた魔物らしきものが、白くキラキラとした光に包まれた。

 そして、光が消えるとそこには……


「え、ユキヒョウ? 超大っきい!」

 

 尻尾が長くて、体の模様が普通の豹とは少し違う白い豹が現れた。


「殿下、ヒョウでしょうが、白いですね」

「うん、オク。それに普通のヒョウとは体の模様が少し違う」

「リリ、ユキヒョウだね」


 気がつくと、直ぐ後ろにクーファルがいた。


「兄さま、やっぱりユキヒョウですか。綺麗ですね」

「ああ、兄さまも見たのは初めてだ。しかし、大きいな」

「はい、あの大きさはやはり魔物ですか?」


『我は魔物などではない』

「え? え? 何?」

「リリ? どうした?」

「え?兄さま、聞こえませんか? 魔物ではないそうです」

「リリ、何が聞こえるんだ?」

「あのユキヒョウの声だと思います」


 ズザッと、オクソールとリュカが俺の前に出て剣を抜く。

 二人共、剣を構えて、耳と尻尾を出している。半獣化してるんだ。

 凄い、オクの半獣化は初めて見た。

 オクソールは獅子だ。百獣の王だ。超かっこいい。

 ま、耳と尻尾だけだと、どっちかと言うと可愛いだな。獅子の尻尾が超可愛い。触りたい……


『獅子と狼か。獣人を従えるか』

「あれ? 君はだあれ? ボクはリリ。皆に分かる様に話してほしいな」

「プフッ」


 また、リュカが笑ってる。よくこんな状況で笑えるもんだ。ある意味大物だね。

 あ、オクソールに叩かれてる。ほらみろ。あーあ、怒られた。


「我は魔物ではない。其方達は何だ⁉︎  人間であろう!? どうして穢れを消せたのだ?」


 今度は普通に話してきた。


「ボクはリリだよ。ボクが穢れを浄化したの。苦しそうだったけど、大丈夫? まだお腹の当たりにモヤモヤが残っているね」


 浄化したが、ユキヒョウはまだ動けないでいる。

 黒いモヤモヤも残っている。あれは体の中から出ているのか?


「人間の子供が!? あの穢れを消したのか?」

「うん! 大分綺麗になったね! 良かった!」

「其方は加護を持つか」

「うん。光の精霊のね。ルーて言うんだ」

「光の精霊に名をつけたのか?」

「うん。良い名前でしょ?」

「ハッハッハ! なんと! 精霊に名を付けた人間など、聞いた事がない!」

「ねえ、側にいっても怖い事しない?」

「何?」

「だって、怪我してるでしょう? 浄化で怪我は治らないよ。それにまだモヤモヤ残ってる。ガブッて食べたりしない?」

「ああ。我は魔物ではないと言うておろう。何もせんわ」

「そう?」


 俺は、近くに行こうと歩き出した。


「リリ! やめなさい!」

「兄さま、大丈夫です」

「殿下! ゆっくりと。私達の後ろに!」

「オク、分かったよ」


 オクソールとリュカと一緒にゆっくりと前に進む。


「ねえ、どうしてこんなに酷い穢れを?」


 進みながら聞いてみる。


「河向こうの国で、追われたのだ。我を捕まえようとする人間がいて、銃弾を撃ち込まれた。普通の銃弾ではこうはならん。呪詛が込められていたのだろう。なんとか此方に渡ってきたが、穢れが酷くて動けなくなってしまった」


 呪詛を銃弾に込める、て何だ?


「そうなんだ。酷い事するよね」

「お前も同じ人間であろう」

「ボクはそんな事しないよ。じゃあ怪我は銃弾に当たった時のだね? もしかして、まだ弾が入ったままなの?」

「ああ、そうだ」

「ねえ、治したいんだ。触るけど、噛んだりしないでね」

「治せるのか?」

「うん。大丈夫だと思うよ。でも、治った途端にガブッて食べたりしない?」

「ハッハッハ、するものか。我はそんな恩知らずではない。それに人間は食べぬ」

「じゃあ、触るね」


 近づこうとすると……


「殿下、危険です」

「オク、話聞いてたでしょう? 大丈夫だよ」

「殿下!」


 俺は近付きしゃがんで、腹の怪我に手をあてる。

 まず、弾を取り出して……ん〜、出てこいよ。どこだ? まるでエコー検査みたいだな。魔力を流してみる……あ、あった! これだな。

 後ろ足の付け根辺りに、銃弾が入っている。だから歩けない? 歩きにくいのかな?

 弾を引き出す感じで魔力を絡める……よし!


「取るからね。痛いよ。我慢できる?」

「ああ、やってくれ」


 よし、いくぞ……ん〜、そうっと……

 出来るだけ、痛くない様に……ゆっくり……そうっと……もう少し……ヨシ、取れた。

 俺の手の中に、真っ黒のモヤモヤがまとわりついた弾丸が、出てきた。


「取った! うわっ! 真っ黒! 凄い呪詛だ!」

「殿下、早く離して下さい! 呪詛が!」

「オク、大丈夫。」 


 えっと……呪詛……解呪か? たしか2年前にやったな。

 なんだっけ? あ、そうだ!


『ディスエンチャント』


 手に持っていた真っ黒にモヤっていた弾が光った。

 そして、透明の弾丸にかわった。


「うん、大丈夫だ。次は怪我と残ったモヤモヤだね」


 まず、モヤモヤか。弾が入っていたところに手を当てて心の中で詠唱する。


『ピュリフィケーション』


 瞬く間に、腹のモヤモヤが光に包まれて消えた。

 いいぞ! あとは怪我だ。俺は手をかざす。


『ハイヒール』


 白いヒョウの体をブワンと、光が包み込み消えていった。


「治った?」

「ああ! なんと! 人間にこの様な事をできる者がいるのか!? 信じられん! どうなっているのだ!?」

「エヘヘ。良かった。もう見つからない様にね」


 俺はオクソールとリュカに守られながら、その場を離れようとした。


「待て! リリと言ったか」

「うん、ボクはリリ」

「命を助けられた! 感謝するぞ!! リリとやら、我に名を付けよ」

「えー!? 名前!?」

「なんだ、嫌か?」

「そうじゃなくて。ボク、センスないんだ」

「ハッハッハ! 構わん」


 ん〜、真っ白なユキヒョウだから……


「ユキだ!」

「クハハハッ!」


 リュカ、やっぱ笑うよね。笑っちゃうよね〜。


「殿下、まんまですよ?」


 うん、オクソール。俺もそう思うよ。でもさぁ、思いつかないんだ。

 

「ユキか。よい名だ! 我が名はユキ! 主を其奴らと共に守ろうぞ!」

「え……?」


 あらら? もしかして……やっちまったか?


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