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100/442

100ー穢れ

 森を奥に進みながら、何度か卵を駆除し焼いていく。かなりの数の卵があった。

 そして奥に行く程、魔物が増えて強くなっていく。


『ウインドカッター』

「殿下、有難うございます」


 俺も魔法で魔物を倒す。


「アスラ殿、やっぱり魔物が増えてきたね」

「はい、でもまだそう強い物はいませんね。もう暫く行くと河に出ます。その直前は魔物も強くなります」

「そうなんだ」

「殿下、離れない様にして下さい」

「うん、オク。分かってる」


 もうそろそろ河が直ぐそこに見えてくるだろうって時だ。


「うわっ! トードがいっぱい! キモッ! キモッ!」


 河の手前、薄い茶色にイボイボのある大きなトードがうじゃうじゃと犇めいていた。


「これ、どーすんの?」

「討伐するしかないですね」

「オク、凄い数だよ?」

「まあ、でもトードですから。あ、ほら。シェフが行きましたよ」

「えっ!?」


 前を見ると、領主隊に混じってシェフが、バッサバッサとトードを切り捨てていた。


「ひょ〜! シェフ強い! 超強い!!」

「ハハハ、気持ち良さそうに切り倒していますね」

「ひぇ〜! 意味分かんないよ!」


 あっと言う間に、トードの死体の山が出来た。


「ねえ、オク。あれどうするの?」

「全部持ち帰りますよ」

「うげっ! そうなの!? キモイ!」

「ハハハ。見た目はあれですが、皮が耐水性のある素材として防具の素材になります。カエル油や、魔石が取れることもありますしね。身も鶏肉のような味がして、美味しいそうですよ」

「うわ〜、ボクは無理だ」


 トード、巨大なヒキガエルだ。キモイ! 俺は無理だ!


「殿下、トードだと分かりましたが。では何故、トードが増えたのかですね」

「レピオス、トードは沼地や水辺に住んでいるんでしょう? だから河の近くにいるんだよね?」

「はい。しかし河は流れがありますから。流れの緩やかな所の方が、生息しやすいと思いますが」

「そっか。とにかく、河まで行ってみようか?」

「そうですね」


 隊員達がマジックバッグに、ヒュンヒュンとトードを収納している。

 ちなみに、シェフもだ。本当、なんでシェフをしてんだろう?


「殿下、どうしますか?」

「アラ殿。今レピオスとも相談していたのですが、とにかく河まで出てみませんか?」

「分かりました。もうすぐそこですよ。では、進みます」

「はい」


 本当に直ぐそこだった。暫く歩くと河に出た。

 俺は初めて見るノール河だ。

 深さも水量も幅もある。本当に大河だ。対岸が全く見えない。


「これでも、水深が浅い方なのです。流れも上流に比べると、緩やかです。ですから、魔物が渡ってきてしまいます」

「アラ殿、対岸は湿地帯なんですよね? どんな魔物がいるんですか?」

「まず、リザードマンですね。あと、ワニ系です。しかし、渡ってくる魔物はそれだけでなく、ウルフ系もボアもいます。河には魚の魔物がいるので、それを狙って来る様です」

「はぁ〜、凄いですね。でも、まだ流れが弱い訳ではないですね」

「ええ。トードが住み着くには少し無理があるかと」

「と、言う事は……レピオス」

「はい、やはり近辺に沼地なり、流れが淀んでいる場所があるのでしょう」

「だよね……」

「分かりました。隊員達に捜索させましょう」


 そう言ってアラウィンは前に走って行く。


 領主隊は付近の捜索。

 騎士団は周りに魔除けを設置し、馬を保護する。

 俺たちも、その魔除けの内側にいる。


 俺はしゃがみ込んで、マジックバッグからりんごジュースを出して飲む。一気だぜ。


「リリ、大丈夫かい?」

「はい、兄さま。大丈夫です」

「殿下、此処でもりんごジュースですか?」

「リュカ、ニルがお水も入れてくれたよ」

「でも、りんごジュース」

「リュカ、本当うるさい」

「アハハハ」


 まあ、それはいいとしてだな。


 ん〜、捜索するのもキリがないよなぁ。

 魔法で何か出来ないかなぁ。

 そう思いながら、魔力を少しだけ薄〜く周辺に広げてみる。

 おっ、探査レーダーみたいだ。

 ん〜、よく分からないな。

 もう少し魔力を加えてみる……

 あ、何かあるな。うん。何かいる。


「オク、少しだけ上流に行った所に何かある」

「殿下、行きますか?」

「うん。いいかな?」

「はい、少しお待ち下さい」


 また、オクが笛を吹いた。

 暫くしてアラウィンが駆けてきた。アルコースも一緒だ。


「どうされました!?」

「少し上流に行った河辺に何かあるんだ。そこに何かいる」

「分かりました。参りましょう」


 アスラールと騎士団と馬を残して、アラウィンとアルコースと領主隊と一緒に反応のあった方へ移動する。

 クーファルとソールの後を、俺はオクソールに抱っこされて移動する。

 歩くのはまだ遅い。足手まといになるからね。

 オクソール、いつも悪いね。

 俺の横にはリュカがいる。後ろにレピオスとシェフだ。

 最後尾にも領主隊がいてくれる。


「あ、オク。あそこ」


 俺は先を指さした。

 河から水が溢れて小さな池の様になっている。そこに何かがいた。


「オク、あれは何? 黒いモヤモヤが沢山まとわりついてる」

「リリ、あれは穢れだ」

「兄さま、穢れですか?」

「ああ。初代が澱みを消してから、穢れに侵された魔物は発見されていない。何が起こっているんだろう?」


 池の脇に横たわっていたのは、2メートルはあるだろう大きな獣の様な何かだ。魔物か? 魔物なのか?

 黒いモヤモヤが体にまとわりついていて、何なのかがハッキリ分からない。


「殿下、あまり近くには行かない方が良いかと。私共もあの様な状態を見るのは初めてです」

「うん。でも、穢れなら消してみないと」

「リリ、浄化するのか?」

「兄さま、浄化ですか?」

「ああ、穢れを消すのは浄化するしかない」

「ん〜、使った事ないです」


 浄化かぁ……浄化……浄化……


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