1ープロローグ
素人です!
2作目挑戦です!
今回も細かい事は気にしないで、サラッと読んで頂けたら嬉しいです。
クスッと笑って頂けたら、もっと嬉しいです!
日本のとある地方都市。
高層ビルの代わりに、植樹された樹々が沿道に立ち並ぶ広い幹線道路を渋滞もなくゆったりと車が流れて行く。
1日中降り続く梅雨時の雨の中、流れに沿って走る車が1台。ごく一般的な普通自動車。実用性を重視しているのか、決して大きくはないハイブリッド車だ。
段々と雨足が強くなり、バケツをひっくり返した様に降る雨で、ワイパーがあまり役に立っていない。
「雨スッゴイ降ってきたなぁ……早く帰ろ」
俺は、地方の比較的のんびりした中規模都市に住んでいる、ごく普通の小児科医。55歳だ。何処にでもある中規模病院の、何処にでも居る勤務医だ。
外科医の妻に、現役医大生の息子が二人いる。ちなみに恋愛結婚だ。『いい加減にハッキリしないと見限るぞ!』と交際5年目に爆弾を落とされて28歳の時に結婚した。うん、いい奥さんだ。
今日は学会へ出席する為に、この地域の県庁所在地まで車で出掛けていたその帰りだ。
少し近道をしようと、湖を横断する橋に車を向けて自宅に急いでいた。勿論、安全運転でだ。
明日は俺や妻も休みを取っていて、俺の母親と姉と息子達と一緒に父親の墓参りの予定だ。
父親は丁度10年前に78歳で亡くなった。
親父は生涯町医者だった。
俺の実家は、郊外の昔からある住宅地で医院を開業していて、3歳上の姉が後を継いでいる。
あの元気で煩かった親父が、末期になるまで癌に気付かず呆気なく逝くなんて、正に医者の不養生だ。
豪快で医者らしくない先生、と近所では言われていた。が、頼りにされ、慕われていた。
親父は絶対に命を諦めない医師だった。最後まで病に向き合い患者に寄り添った。
そんな親父を見て育った姉貴や俺も、医師以外の選択肢は考えていなかった。
ま、俺は1度獣医になると言って親父に活を入れられたけどな。
「お前は馬鹿か? アマアマかよ、アマちゃんか? 獣医と言うのは、動物が好きだから可愛いからって気持ちだけでやっていける様な甘い職業じゃないんだぞ。人間が元気じゃないと、ペットどころじゃないぞ。動物達も不幸になるんだぞ。どっちも守れる医者になってやろう位の気概はないのか?」
と、言われた。無茶振りだ。どっちも、てどうすんだよ。
人其々考え方はあるだろうが、俺はその言葉で妙に納得してしまった。要するに、その程度だったと言う事だな。
俺の、優柔不断な軽い気持ちを親父は見抜いていたと言う事だろう。
父だけでなく姉や妻も医者と聞くと、さぞかし立派な奴だと思うかも知れないがそんな事はない。
スーパードクターでもない。イケオジでもない。
ごく普通のどこにでもいる55歳のオッサンだ。妻に言わせれば、少々面倒臭い奴らしい。単純で子供が小児科医をやっているとも言われたか。こんな純な男を捕まえて酷い言い草だ。
「そう言えば、最近親父に似てきたとお袋が言ってたなぁ。気をつけろとも言っていたか。何に気をつけるんだよ。でもあの親父の息子だからなぁ」
俺の車が、湖を横断する橋に差し掛かった時だ。
前方からまるで悲鳴の様なクラクションの音がしたと思ったら、正面からセンターラインを越えて大型トラックが突っ込んで来た。大雨でタイヤがスリップでもしているのか!?
湖に掛かった橋の上、しかも片側1車線。逃げ場がない。
おいおい冗談じゃないぜ! どうにか回避しようと、必死でハンドルを切る!
「何だあのトラック! どうなってんだ!」
――ブブブー!! キキー! ドカーン!!
「クソ、ふざけんなッ!」
そのまま俺の車は、大型トラックと接触し弾き飛ばされ、橋の欄干を壊しながら湖面目掛けて真っ逆さまに落ちて行った。
――ザバーーン!!
車体がどんどん湖に飲み込まれていく。車の中にも水が入り込み、車体は湖に沈んで行った。
真っ逆さまになった事で頭を強打し、衝撃でエアバッグが出た。身体はシートベルトで固定され、思う様に身動きが取れない。その上、湖の水が車内に入ってきた事で息が続かない。
クソッ! あちこち痛い! ゲホッ、肺をやったか!?
意識が朦朧としてきた。
俺、死ぬのか? 落ち着け。
妻は大丈夫だ。あいつはいいやつだからきっと周りも助けてくれる。
息子は……二人共しっかりしているから、ちゃんと卒業してくれるだろう……
悪いな、お前らの母さんを頼むよ。大事にしてやってくれ。
そう言えば昔お袋が、湖には近寄るな、て言ってたなぁ。なんだっけなぁ?
妻、息子達、お袋、それと姉貴、すまん。俺、死ぬみたいだわ……
――ザバーーン!!!!
此処はアーサヘイム帝国北東部にある、ミーミユ湖。
高い樹々に囲まれた聖なる湖と言われている。
その湖に、小さな小さな男の子が突然湖面に投げ出された。
「ゴフッ……!」
――ブクブクブク……
小さな男の子は湖の底へとどんどん沈んで行く。
「キレイだなぁー、水の中から見る太陽はとってもキレイだ……えっ? 俺、車に乗ってたよな……?」
『君はとっても変わった魂だね。珍しい。沢山、人を助けたんだね。』
突然、男の子の頭の中に声が聞こえた。
「え……? だりぇ? ありぇ……?」
「殿下!! 」
――ザバン!
男の子の護衛らしき男性が、直ぐ様助けに飛び込んだ。
「だりぇかがボクを呼んでりゅ……苦しいよ……ボク……? え、ボク……?」
飛び込んだ男性が、水の中で男の子の身体を掴み、湖面目掛けて一気に上がって行く。
小さな男の子を抱えて湖から上がってきた。
侍女らしき女性が大慌てでブランケットに小さな男の子を包み込む。護衛らしき男性と侍女らしき女性が二人で呼びかけながら、男の子を寝かせて水を吐かせようとしている。
「殿下!」
「殿下! 殿下!! 」
――ゴボッ!ゴホッ、ケホッ!
「よし、大丈夫だ! 水を吐いた! 部屋へ運びます!」
護衛らしき人物がブランケットに男の子を包み抱えて走って行く。
その後ろを侍女らしき女性も追いかけて走って行く。
ご指摘頂きまして、獣医師のくだりを変更致しました。
ご指摘有難うございます。
獣医師と言う職業を、ディスるつもりなど全くなく、まして医師>獣医師と言うつもりも全くありません。
主人公が、若い頃に優柔不断な甘いところもあり、今は亡き父親に喝を入れられた事を思い出している場面です。
他意はございません。
ご不快に思われましたら、お詫び致します。
申し訳ありません。
何度も読み返して気を付けておりますが、どうか細かい事には拘らず読んで頂けると幸いです。
また、今回ご指摘を頂いた事で気付く事ができました。
感謝致します。有難う御座いました。
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