糖度の高い暮らし
なんだか、どっと疲れるわね、こんなにも寒いと心まで凍ってしまいそう。
道端のコンクリートの間から顔を出している植物たちの顔を見ると、まるで冬の赤ちゃんの頬っぺたみたいに赤くなっていて、今にも凍ってしまいそうな繊細さを感じるわ。
そして、視線をそっと上げてみて、空に浮かんでいる雲は、夏よりも私を遠ざけて、風は午前7時の通勤途中のサラリーマンのような覇気の無さを醸し出しながら、私のすぐ横を通り過ぎるのよ。冷たくなってしまった視線が真横に存在する感覚、冬はこれだからどこか寂しい気がするの。「人肌恋しい」なんて言葉、あんなの絶対冬の風のせいよ。他人が私を囲む中で、寂しさをおぼえるなんて当然のことだもの。人間はそんなにも強くないわよ。
あら、そこの頑張ってるあなた、いつもお疲れ様。ここでは少し深呼吸して、あったかい緑茶でも一口飲んでいってね。
そう、緑茶に合うお菓子も今日は、特別に。頑張ってるあなたのために、差し上げるわね。
甘い甘い感覚、人生の中でたくさん味わってほしいと私は考えているの。
それは、自分に対して甘くすることもいいわ、そして恋焦がれることだって素晴らしいじゃない。
でもね、私はその甘い感覚の欲求の根本にあなたの存在をどっしりと置いておいてほしいの。
ほら、風で飛ばされないように、水に流されないように、石は時に岩と呼ばれるくらいに重く力強い存在として見積もられることだってあるじゃない。それと一緒の感覚を、自分に置き変えてほしいの。
守るべきことは自分の場所、自分の内側にある自分の大切にしたいことなの。
だからね、こんなたくさんの情報が蔓延るこんな世界だけれど、あなたの大切なことだけを、
大切にする時間を作ってちょうだいね。そうして、それがあなたがあなたを大切にして生活するための基盤なんだから。この基盤が無ければ、空洞な自分ができてしまって、時に涙してしまうことだってあると思うわ。だからこそ、あなたはあなたのために、時間を使って、自分の大切の根本を確認してちょうだい。
みんな自分の欲望の根本を見ると、いつだって自分に対して素直になれるの。
だから、少し間違っていると思ったらすぐに立ち止まって確認してみてちょうだい。
あなたが甘い感覚を存分に楽しんで、糖度の高い暮らしをするためには、あなたがあなたを見ることが一番の大切な時間なのよ。
だからね、頑張ったらたくさん甘やかすのはあなたがあなたに素直になっているからよ。でもね、たとえ頑張っていないって思っている人がいるなら、あなたは少し頑張りすぎなのかもしれないわね。
私はあなたのそばで、寄り添って頑張りすぎなくていいなんて言ってあげられないのだけれども、
あなたはあなたのそばで、少し自分をしっかり見る時間を設けてあげてほしいの。
そうしたら、太陽の光によって雪が解けていくようにあなたが素直になった分だけ、
あなたの肩の凝りがほぐれていくと思うわ。
そんなあなたで甘い感覚を味わってみてちょうだい。そして緑茶を一口飲んでみてほしいの。
どうかしら、あなたの身体の中にじんわりと甘い感覚と温かさが染み渡ると思うわ。
そのあと、甘い感覚が染み渡って気持ちよくなって眠ったっていいのよ。あなたはそのままでいいの。
そして、それが染み渡って自分の内側から鳥肌が立てば立つほどに、あなたは本当に頑張っていた証なのよ。そのことを理解して、今、少しでもあなたがあなたに素直になってくれていたらそれで私はとても嬉しいわ。
ここで一つ約束ね。
これからは、そうやって糖度の高い生活を歩んでいってちょうだいね。
それじゃないと私がまたこの縁側にあなたを招き入れるわよ。でも、三度も来ないでちょうだいね。
それも約束。