告白
初めて、話せた嬉しさと「ヒミツ」と恥ずかしそうに言った声と少し赤くなった顔が、
僕の恋心に拍車をかけた。
あれから、あの子と話せないまま。
……とうとう、クラス替えの日がきてしまった。
僕は同じクラスになる事を心の底から願った。
しかし、同じクラスにはなれなかった。
クラス替えから2ヶ月が経った頃、
屋上に、あの子がいた。
イヤホンをして座ってスマホを見ている。
『願ってダメなら、自分で動くしかない』
あの子の前に立つと、僕の気配に気付いて顔を上げた。
僕は勇気を出して話しかけた。
「高2の時、同じクラスで……」
「ごめん、ちょっと待って」
あの子がイヤホンを外す。
僕は慌てて言った。
「ごめん、急に話しかけて」
「ううん、大丈夫。何て言ったの?」
表情を見ると嫌な顔はしていなかった。
「高2の時、同じクラスで隣の席にもなった事あるんだけど、僕のこと覚えてる?」
「……覚えてる、よ。」
返答に間があった。
もしかしたら、僕の事なんて覚えていないかもしれない。気を遣ってくれているのか?
「本、拾ってくれたよね?」
「うん。話した事ほとんどなかったら、話しかけようか迷ったんだけど……」
覚えてくれてた事が嬉しくて、
舞い上がり声が少しうわずった。
「覚えてるよ。1年間、同じクラスで隣の席だったし。それに……」
あの子の言葉が止まった。
「それに?」
「たまに、あなたが友達と話してるのが聞こえてきて面白い人だな。って思ってたの」
「ごめんね、勝手に話聞いちゃって」
「ううん、全然! 全っ然いいよ!」
本を拾った以外でも僕の事を知ってくれていたのか。やばい、嬉しくて口元が緩む。
「あのさ、実は入学式で君を見かけた時から、ずっと気になってて」
言いながら息が苦しくなる。
胸がキュウっと締め付けられる。
僕は大きく息を吸った。
「君の事が……その、」
苦しくてたまらない。顔が熱い。
もう一度、僕は息を吸おうとするが、うまく吸い込めない。空気が喉で止まって肺に入っていかない。
それでも僕は言葉を続けた。
「君の事が好きです! 良かったら僕と付き合って下さい!!」
言えた! なんとか声を絞り出せた。
あの子の表情は、明らかに戸惑っている。
どのくらい間があっただろう?
背中流れる汗を冷たく感じ始めた時、
あの子が口を開いた。
「あの、『好き』って言ってくれた事は、嬉しいんだけど……」
断られる! 僕はそう悟った。
そりゃそうだ。
同じクラスだったけど、会話は本を拾った時以外は、ほぼゼロ。
面白いと思ってくれてたみたいだけど、いきなり付き合ってほしいなんて。
ドン引きされた? 『友達から』と付け加えれば良かったか?
僕は彼女の返事を聞くのが怖くて思わず目を瞑った。