僕の中のあの子
あの子の席は窓際の1番後ろ。
いつも本を読んでいる。
僕は、その姿を見て想像する。
「どんな小説を読んでいるんだろう?」
「恋愛物? ミステリー? それとも純文学?」
ある日の昼休み。
僕は屋上で、あの子を見かけた。
イヤホンをつけて、スマホを見ている。
僕はまた想像する。
「YouTubeを観ているのかな?」
「勉強? 動物の動画? それとも音楽のPV?」
「どんな音楽を聴くのかな?」
授業が終わると真っ先に教室を出て帰る。
あの子は部活に入っていない。
1人で居る事が多いけど、クラスメイトに話しかけられると普通に話しているし、友達がいない訳では無さそうだ。
それに、1人で居ても寂しそうでもなく、凛として涼しげで、秘密めいた空気感を纏っている。
高校の入学式で見た時から僕は、あの子の事が気になった。
高2のクラス替えで同じクラスになった時は、本当に嬉しかった!
でも、まだ話した事はない。
本を読んでいる邪魔をしたくなかったし、
放課後はすぐに教室を出てしまう。
わざわざ引き止めてまで話す勇気もなかった。
……もう少しで、クラス替え。
次も同じクラスになれるとは限らない。
それまでには、話しかけたい。
そんな事を思いながら、まだ話しかけられずにいた。
が、ある時チャンスがきた。
休み時間、クラスの男子がふざけていて、
本を読んでいたあの子にぶつかり、本が隣の席の僕の机の方に飛んできた。
僕は急いでそれを拾い、あの子に渡しながら、
ありったけの勇気を振り絞って聞いた。
「いつも本読んでるよね? 本、好きなの?」
「うん」
初めて彼女と話した!
「何の本読んでるの?」
あの子は少し俯きながら
「ヒミツ」
「(本)拾ってくれて、ありがとう」
と言った。
僕の背中に電気が走った。