3R8
「どうやらこの洞窟は一方通行じゃなくて戻る事も出来るみたいだね」
12本ある内の1番左の道に進んだ頼人は、2歩だけ道を進むと俺に聞こえるか聞こえないか位の声で言葉を発しながら戻ってきた。
そのまま1つ隣の道にも同じように少しだけ進み帰ってくる。
それを繰り返すこと7回、猫を乗せた男が振り返って手招きをした。
「まおさん、この道が正解だと思う」
断定はしないが、自信満々な声に従わない理由は無い。
俺は迷わずにその道に入り2m先を歩く為に彼を追い越していく。
その時、ついでにどうしてこの道を選んだのかの理由も聞いてみた。
「どうしてこの道が正解だと思うんだ?」
さっきと同じ様な明るさの天井から漏れる光が洞窟内の砂埃等に反射して幾つもの線を作り出す中、猫を乗せた頭で上を見ながら答えてくれる。
「確証はないけど、光の強さが理由かな」
黒い杖の先端を天井に向けて男が話す。
その視線は俺、というよりも他の場所を見ている気がした。
「サンプルは少ないけど、最初の分岐点で当たりの道が明るかったこと、外れの道が暗かったこと」
そしてこの分かれ道について、他の6本が同じ暗さだった事、今居るこの道が明るい事。
そう話を続けた頼人は道を戻っていく。
「まおさん、一応他の道も確認してくるね」
言葉が俺に届く時には既に入り口を通り過ぎた青髪の男はこっちに向けて手を振りながら1つ隣の道へ入っていく。
「行ってしまいましたね」
「そうだな……」
1人取り残された俺は肩から聞こえる妖精の声に反応しながら帰りを待つしかない。
しかし、なるほど、確かに眩しい。
道の明るさの違いには違和感があったが、それが当たり外れに絡んでいるとは思わなかった。
もう少し分かれ道を経験していれば気付いたかもしれないが……
「あっ、帰ってきましたよ」
肩から聞こえる遠藤さんの声で反省会から抜け出し、入り口の方に視線を向けると手を振りながら近づいてくる頼人を発見した。
「予想通りだったよ、先に進もう」
予想通り、満足気な笑みを浮かべる男の言葉が洞窟内に響いて聞こえた。
そこから先に分かれ道は無かった。
奥に進むこと数分、辿り着いた先には巨大な扉が設置されている。
扉の中央には11個の窪みが円を作るように並んでいて、その中心には赤く光る宝石が嵌め込まれていた。
「これは開けるのに条件があるやつかな?」
頼人がそう言いながらルビーのような宝石に触れた瞬間、赤い輝きが強くなり俺達の体を包み込んでいく。
これは第二層に行く時に起きた現象に似ている……
やはりと言うべきか、赤く染まった視界が落ち着きを取り戻した時に見えた景色はさっき迄とは全く違う物になっていた。
何が起きても良いように素早く辺りを見回す。
1番最初に目に入るのは部屋の中心で座っている水色に透き通ったゴーレムみたいな者。
今の所動く気配は無い。
後ろにはさっきの扉の裏側、こっちからは窪みも赤い宝石も確認出来ないみたいだ。
綺麗な円形の部屋、足元には俺と頼人を囲むように白いチョークのような物で円が描かれている。
「さて、どうしようか」
「踏み出すしかないな」
適当な会話だ、どうせやる事は変わらないし選択肢も一つしか無い。
足が円の外に出ると同時に天井にある岩が急激に輝きを増して、ゴーレムの上に収束していく光はとうとう溢れ出し真下に落ちていく。
『資格無き者達よ、去れ』
透き通った体に光を受けそれを吸収しているゴーレムはゆっくりと立ち上がる。
身長は3mくらいだろう、淡く輝く体は氷で出来ているみたいだ。
輝石のゴーレム レベル33
HP1221/1221
表示されているHPのゲージは11本。
これがボスモンスターの強さ……
「最初はまおさんが前衛、僕が後衛のパターンで行こう」
「了解」
頼人の声に即答した俺は少しは使い慣れた丸太トンファーを手に持ってボスに攻撃を当てに行く。




