3R3
「なんでライトさんの所に?」
当然の疑問、俺も聞こうとした質問を妖精がしてくれる。
「仕事半分 興味半分」
そう答える猫の声に感情は無いが、黒い尻尾はいつもよりも大きく、ゆらゆらと動いていた。
珍しい、というよりも初めてシャルの人間らしい一面を見た気がする。
「裕二 ライトも 門番行く パーティ」
パーティ?
返事を待たずに歩き始める猫は本物のように自由気ままだ。
「シャルが珍しいですね……」
肩に乗る妖精が小さく呟く。
独り言になってしまうので答えは返せないが、こうなってしまっては仕方ない、小さく頷いてから後を付いていく。
それから1分位だろうか? 迷いなく歩く黒猫の案内の先には見た事のある青い髪の男が居た。
「やぁ、さっきぶりだね、丁度探していたんだよ」
こっちに気付くとすぐに笑みを浮かべる頼人に小さな違和感を感じた。
よく見れば持っている武器がオンボロソードから黒い杖に変わっている。
「凄いね、この短期間でそんなにレベル上がったんだ」
青髪の上にある数字は11。
俺の頭上を見ながら感心するイケメンは、少し俯いた後に急に頭を下げてきた。
「僕とパーティを組んでくれないか?」
「はい?」
突然の申し出に思わず聞き返してしまった。
いきなりでごめんね、そう加えて頭を上げた頼人は理由を話し出す。
話を聞くと中々複雑な事情があるらしく、どうやら今日中に第三層まで行かなくてはいけないらしい。
それも配信用の動画を撮りながらの為、知り合いの高レベルプレイヤーに手伝って貰うことは好ましく無く、同レベルで同じ位ゲームに打ち込める人を探していたらしい。
そこで目をつけられたのが俺みたいだ。
戦闘の動画でお互い始めたタイミングが一緒だと証明出来つつ、本戦を目指す位には本気でゲームをプレイする人間。
「好都合」
小さいがハッキリと聞こえる猫の声、俺にとっては何が好都合なのだろう?
ただ1人で先に進むよりは楽になるのは間違いない。
レベルは俺より低いが、戦闘技術は充分過ぎる程の高さだ。
申し出を受ける理由は少ない、しかし断る理由は無いか……
「宜しく」
数秒迷った後に差し出した手はすぐに握り返された。
「とりあえず門番を倒しに行こうか」
俺がすでに情報を持っている前提の言葉。
こうゆう所が本当に似ている。
「武器変えたのか?」
元相棒の姿が見えない所か、剣から杖に変わってる事は流石に見過ごせない。
今後の連携にも影響する事だ。
「僕は元々魔法使いだからね」
そう言いつつステータスを表示する頼人の名前の下には確かに魔法使いと記されていた。
黒い杖は交流版'売りたいんです'で5500wで買った物らしく、効果は魔力+30だ。
「良くこんな速度であんな動きが出来るな」
「銃弾を避けるゲームをやってたからね、ただ魔法のスピードも出ないなら上げるべきだよねぇ」
杖を持つ男の速度は予想していた最低の5。
それなのに俺が全力で放った攻撃を全て避けられた事に軽くショックを受ける。
「そんなことより連携はどうする?」
話しながらも足は動かす、既に拠点は出て今は始まりの草原に戻ってきた所だ。
さっき調べた情報通りなら後2分もしない内に門番と戦う事が出来るだろう。
「俺が前衛が普通だけど」
単純に考えれば近接武器の俺が前衛、魔法職のライトが後衛で落ち着く場面。
「基本はそれで、お互い遊撃にしてくれない?」
少し申し訳なさそうに提案された言葉に俺は頷く。
満面の笑みを浮かべた青髪はお礼と共に理由を話してくれた。
オンボロソードを使ってたのは対人戦を想定して手札を増やす為、またランクアップで魔法剣士を狙っているらしい。
そこに関しては俺も同じだ。
体術にプラスして魔法も使えるようになりたい。
上手くいけばランクアップで魔法系の職が付くかもしれない。
それから雑談したり、襲ってきた魔物を倒したりしながら数分。
目の前には門があった。




