進路
「なんで僕が後ろに避けるって読めたんだい?」
落ちたナックルを拾いながら無表情の頼人が聞いてくる。
いつの間にか右手に装備していた物も無くなっていた。
「ただの勘だよ」
本当は違う、いらない見栄を張ってしまった。
攻撃は当たったが、内容的に勝った気はしないな……
そもそもあれでダメージが入るのかどうかすら分からない。
「そっか」
そう呟いた青髪は下を向いたまま動かない。
沈黙のまま数秒が経った、そろそろ武器を返して貰いたいので話しかけようとした瞬間、頼人はゆっくりと空を見上げた。
「クッソォォォォォォォ」
気持ちの全てを吐き出すような叫び声。
こっちをチラチラ見ていたプレイヤーは勿論、遠くで狩りをしていた人も音源に視線を向ける。
注目されてる事なんか気にせず、大きく息を吸った頼人がこっちを向く。
潤いを増した瞳はさっきよりも深い青になっていた。
「はぁ、スッキリした」
絶対嘘だ。
今までの爽やかな笑顔じゃなく、作ったような不器用な笑み。
「今度は本戦でやろう」
そう言いながらナックルを投げてきた頼人。
本戦……スタートしたばかりの人間が行ける可能性なんて恐ろしく0に近いはず。
でも彼は、多分本気で言っているのだろう。
次は負けない、視線だけでそう伝わってくる。
ナックルを付けた左拳を前に突き出す。
こいつはビックリする位俺の親友に似ている、だから余計な言葉はきっと要らない。
拍手をしてくれているプレイヤーにお辞儀をしてから俺達は反対方向に進む事にした。
「お見事でした」
「裕二 凄い」
周りにプレイヤーが居なくなった辺りで猫と妖精が褒めてくれる。
「もう一戦やったら勝てないけどな」
これが事実。
今の状態でやったら100戦100敗になるだろう。
あぁ、どうしよう、楽しかった
必要以上にやる気が溢れてくる。
俺も本戦に行きたくなってしまったよ……
目の前で青いゼリーが光に変わっていく。
無意識の内にスライムを殴っていたらしい。
+2w +2exp
視界の隅に出てくる情報は他のゲームと変わらない。
しかしスライム1匹で0.2円か……
現金と交換出来る以上、少ないのは仕方ないのかもしれない。
もう暫くは興奮が冷めそうにない、近くにいる奴から貪るように倒していく。
3匹目を倒した所でレベルが上がった。
10匹目を倒した所でまたレベルが上がる。
22匹目を倒した所で妖精が出て来たので殴るが、透き通って当たらない。
これはレアモンスターか?
魔法でしか倒せない可能性もある。
「ちょっ! 裕二さん? 私ですっ! 真由ですっ!」
金髪のフェアリーが腕と羽をバタバタさせながら何か言っている。
「あっ、ごめん」
全然気がつかなかった……
「真由 悲しい子 居ない子」
「シャル?」
黒猫のいつもより楽しそうな声に妖精が大きく振り向く。
やばい、笑いそうだ
スライムをひたすら殴りながら笑うプレイヤーとか晒されそうで怖い……
「って、違います
もう体液10個集まってますよ?」
2人のコントを観ながら笑わないように頑張っていると、シャルとギャーギャー言っていた妖精が首を傾げながら聞いてくる。
持ち物を確認してみると確かにスライムの体液が12個入っていた。
「あー、忘れてた」
そういえばアイテム集めてたんだっけ。
後はリトルウルフの牙と薬草を10個ずつ、名前的に小さな狼を探せば良いのだろう。
折角ステータスを開いたので自由ポイントも振り分けておく。
さっきの戦闘で手札が少な過ぎる事を痛感した俺は、全てのポイントを魔力に入れる。
えんの まお レベル3
体術使い
初心者ナックル 攻撃10 速度5
HP52/52
攻撃25+10
防御5
速度20+5+10
技術0
魔力4
スキル
体術(1)
体術(1) 肉弾戦で与えるダメージ1割アップ、速度+10
ここまで読んで頂きありがとうございます。
32pの魔王のシフトに被りがあったので少し調整しました。
話の内容には影響は無いのでこのまま進んで頂いて大丈夫です。
更新頻度はまだまだ戻せそうに無いですが、これからもよろしくお願いします。
ゆー




