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「初めまして」


 外の世界に踏み出した瞬間にマップが変化した。

 どうやらここは北の大陸'始まりの草原'と呼ばれる場所らしい。


「初めまして」


 流石は大人気ゲーム。

 どこまでも平坦な大地の上はモンスターとプレイヤーで溢れている。


「あれ? ラグかな? 今時のVRゲームで聞いたことないけど……」


 3メートル先ではボロボロの剣を持った少女がスライムと戦っていた。

 さて、とりあえず俺も10体倒しに行きますか。


「聞こえてますかー?」


「裕二さん、無視は可哀想ですよ」


 我慢の限界がきたのか、悲しそうな、仲間を哀れむような表情の妖精が青い髪の男を指でさす。


「真由 変人 無視 正解」


 二色の瞳を半分閉じた黒猫が眠そうに呟く。

 全くもって同感だ。


 ツンツンに跳ねた髪の爽やかイケメン、そして未だに聞こえてますかー? と手を振り続けるあざとさ。


 正直に言って、1番関わりたく無いタイプ。


「初めまして」


 最低限の挨拶は返すが、低く、なるべく感情を込めないように声を出す。


「あっ、やっと気付いてくれた」


 すぐに帰ってきた返事とパッと花が咲いたような笑顔。

 どうやら俺の作戦は失敗したらしい。


「僕はライト、(ひかり) 頼人(らいと) っていうんだ

大きなPvPのイベントが有るから、って今日からゲームをやり始めたんだけど、よく分からなくて まおさんに話しかけたんだ」


 やばい、とりあえず名前にツッコミたい……

 しかしそれは話を広げてしまう可能性が高い……


「俺も始めたばかりで全然わからないですよ」


 衝動を抑えて感情を殺す。

 

「大丈夫だよ、じゃあ一緒にモンスターを倒しに行こう」


 助けを求めようと横を見るが、黒猫は眉間にシワを寄せて瞳を閉じていた。

 空中にいる妖精は口を開けて固まっている。

 なるほど、魔物を見つける前に、魔物に捕まったみたいだ。


「俺は男ですよ」


「うん、見ればわかるよ」


 呆れたように笑われた事に腹が立つ。


 どうやら出会い厨ではないらしい。

 いや、可能性が0になるわけでは無いが……


「なんで俺なんですか?」


 時間はあるが、早く狩りに行きたい。

 どうな返答でも適当に断ってゲームを楽しむとしよう。

 

「1人だけ雰囲気が違ったから」


 口調も声色も特に変化はない。

 髪と同じ青い瞳が俺を観る。

 

「ごめんなさい、よく分からないです」


 なぜだろう、視線を逸らしたらダメな気がした。

 全てを見透かされるような、どことなく自称親友を相手にしている感覚。


「僕と勝負しようよ」


 下から覗き込んでくる挑発的な瞳が心を揺らす。

 不思議なやつだ

 

「面白そうですけど、対戦できないですよ」


 本当に始めたばかりなのだろう。

 このゲームではまだ対人戦は出来ない。


「体力が減らないだけだよね? 一撃当てた方が勝ちにしよう」


 なるほど、それなら可能だが速度重視のプレイヤーが有利すぎるな。


「あ、もし良かったらその動画を配信したいんだけど」


 良いかな? そう聞いてきたライトは軽い自己紹介をしてくる。


 元々、魔法のない、銃火器で戦うゲーム専門の配信者だったらしい。

 でも現金と交換可能、配信は契約制、プレイしてる人数、そして新イベント、PvPの実装に惹かれてThe 2nd worldにやってきたらしい。


 まぁどちらにしても答えはNoだ。

 あまり目立つわけにもいかない。


「逃げるの?」


 断る前に追撃された。

 ずるい言葉だ……


 逃げるも何も、受ける必要がないし、そんな事を言われる筋合いもない。

 だけど、どう言い返してもモヤモヤするムカつくセリフ。


「裕二 受けて」


 思いもしない所から声が聞こえた。


 正気か?

 そんな意味を込めて猫を見る。


「頼人 有名 動画収入 期待」


 尻尾を揺らしながら答えるシャル。

 どこかスッキリした表情、黒猫の両眼は彼を映している。


「やりましょう、私も擬似対人戦見てみたいです」


 動けるようになった妖精も賛成みたいだ。

 はぁ、これで断ったら本当に逃げたみたいじゃないか……


「わかった、やろう」


 当て付けに出来るだけ不機嫌な声を出した。

 嫌々、だけど少しだけワクワクする。


 挑戦的な笑みを浮かべた男がプレイヤーの少ない場所に向かって歩いていく。

 

「ルールは簡単、相手の攻撃を喰らったら負け、その他はなんでも有りで」


 後ろをついて行く俺に届けるには大きすぎる音。

 おそらく配信する動画をもう撮っているのだろう。


「準備はいい?」


 広い草原、半径5メートルには魔物も人間もいない。

 闘技場と呼ぶには狭すぎるが、大規模な魔法も強い衝撃も出せないレベル1の俺達には丁度いいくらいだ。


「あぁ」


 俺は初心者ナックルのおかげで攻撃が10 速度が5上がっている。

 対する相手はボロボロの剣を背負っている。

 記憶力に自信は無いが、あれは元相棒オンボロソードで間違いない。


 確か剣使いの初期ステータスは攻撃20、防御10、速度5だったはず。


 攻撃はボロ負けだが、自由ポイントの15を全て速度に振っても俺の方が速い。


 一撃与えれば勝ちのルールならこっちに分があるだろう。


「この石が地面に落ちたらスタートだ」


 そう言った男は地面に転がっている石を拾って上に投げる。


 天に向かう石は1度空中で止まり下に向かって落ちはじめた。


 後1秒くらいか


 狙うは接近戦、スタートダッシュを決められるように腰を落とし走り出す準備をする。


 石が地面に触れる。


「行くぞ」


 口に出す必要のない言葉と同時に俺は走り出した。

 

 

 

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