準備期間
The 2nd worldへようこそ、そんな感じのアナウンスが脳内に流れた気がする。
閉じていた目をゆっくりと開くと、そこは小さな部屋の中だった。
丸太を組み立てて作られた小屋に、家具は一切見当たらない。
ピコンッ
所持品を確認してみましょう
懐かしい音と共に目の前に文字が表示される。
両肩に、透けている猫と妖精が居ることを目視してから、魔王として働いていた時の様に持ち物を確認していく。
遠藤さんの話だと、他のプレイヤーと条件は一緒らしいが……
目についた所から把握していこう、とりあえず最初に10000w持っている状態でスタートするみたいだ。
防具は何も無く、武器は初心者ナックルが入っていたので一応装備しておく。
他に持っていた物は、自分専用現金交換券が1枚、回復薬、魔力剤、なんでもなおし、がそれぞれ3個ずつ。
効果はそれぞれ知っているし、実際に使った経験も有るので問題ないだろう。
まぁ、こんなもんか
猫も妖精もキョロキョロとしているだけで、アイテムに興味は無いらしい。
アイコンを閉じると同時に部屋の隅にドアが現れたので、俺は迷わず外に出ることにした。
街、とでも表現すれば良いのだろうか?
ゴミひとつ落ちていない白い道路の上を、溢れるほどのプレイヤーが歩いたり、話したりしているのが見えた。
チュートリアルで学んだ通り、視界の左下にはマップが表示されていて、自分の位置を示す緑の点と、目的地を示す赤の点が存在している。
とりあえず赤い点に向かう。
よくあるMMOゲームらしく、武器屋、道具屋、鍛冶屋、交流掲示板、等々、順番に施設を紹介してくれるみたいだ。
中でも驚いたのが道具屋さん。
回復薬や魔力材には上、中、下、の3種類が有り、下の回復薬でも1000wと結構な値段がしていた。
回復系アイテムをまとめ買いしてから冒険に出るタイプの俺にとって、これは中々キツい。
どれくらい稼げるかわからない以上、所持金は慎重に使っていこう……
また、交流掲示板には'売りたいんです!'という項目が有り、自分のアイテムを任意の値段で販売出来る機能があった。
直接のトレードとは違い、誰かが買った時には、販売金額から1割の手数料が引かれてwが入ってくる仕組みだ。
それでも、詐欺などの心配が無く、多くの人に見て貰える利点が有るおかげか、手作りの武器や防具、モンスターのドロップアイテムらしき物が沢山売られている。
ちなみに最初の相棒、オンボロソードは3500wで売られていた。
俺は迷わず買おうとしたが、妖精が全力で邪魔してきたので手に入れることは出来なかった。
さて、どうするか……
立ち止まって頭を働かせる、これからのプランを考えよう。
シャル達は話しかけて来ないが、相変わらず肩に乗っている。
喋ると独り言になってしまうので遠慮してるのか、それともどう動くのか任せてくれているのか……
とりあえず予選が始まるまでにある程度レベルは上げておきたい。
装備も最低でも中級レベルの物が欲しい。
後はスキルの取得と強化も必須だ。
これはゲームが終わったらネットで調べるのが1番効率が良いだろう。
よし、レベ上げに行こう。
勿論ただモンスターを倒しに行くのは勿体ない。
赤い点を追っていた時に見つけたクエストを出してくれる町娘の所にいく。
最大で受ける事の出来るクエストは3つだったので、今回はスライムの体液10個、リトルウルフの牙10個、薬草10個の収集クエストを受けることにした。
マップに表示されている最後の赤い点、魔王の時に攻略出来なかった拠点の門へ向かう最中、不意に鼓膜が揺れる。
「なんだがワクワクしますね」
「楽しみ」
視線だけを動かすと、瞳をキラキラさせた妖精が羽をバタバタと動かしていた。
無表情な黒猫の尻尾も左右に大きく揺れている。
俺も楽しみだ
独り言にならないように、小さく頷いて応えた俺は、門を潜り抜けて魔物のいるフィールドに足を踏み出した。




