第2回イベント5
運営会議が終わり、リーダー、シャル、新、静さん、とメンバーは次々に消えていく。
部屋には俺と緑の妖精だけが残った。
「なんか久しぶりだねー」
そう言いながら妖精は近くに飛んでくると、机の上であぐらをかく。
「久しぶりだな」
反射的に返事をした後に考える。
最後に一緒にいたのはいつだったか……
「裕くんが負けて落ち込んでる時が最後だよ!」
一緒に冒険したのは第1回イベントの前だから結構時間経ってるけどねー
そう加えて大袈裟に笑う妖精の姿に少しだけムカっとする。
確かに前回のイベントは防衛に成功されたが、俺は1度も負けてない。
それに相手プレイヤーもかなり倒したし……
「うるせ」
他にも言い訳は思い付いたが、返す言葉は3文字だけにした。
細められた緑の瞳は、どうせ俺の心を読んでいるのだろう。
「だからー、そんな力は無いよー」
変わらない。
手を後ろについて、目を閉じながら喋る妖精は初めて会った時と同じだ。
約7年も会っていなかったのに、ずっと一緒に居たような、そんな不思議な感覚が体を支配していく。
「生配信、お疲れ様」
思い浮かぶのはさっきの堂々とした姿。
いつも適当で、何考えてるか分からなくて、そのくせ変なところは真面目で、でも昔よりも強く、大人になっていて。
こんな奴でも緊張とかしたのだろうか?
こんな奴でも怖いとか思うのだろうか?
「ありがとー」
そう答える親友の心を俺は読むことが出来ない。
昔は、手伝っていたのも、先に進んで待っていたのも俺だったのに。
今は、どんどん前に歩く妖精の羽すら見えない。
「お前は……凄いな」
言葉が口から勝手に漏れた。
込められた感情はきっと筒抜けなのだろう。
それを聞いた妖精はビックリしたように目を開くと、何かを思い出すように、ゆっくりと瞳を閉じる。
「僕ね、裕くんのこと、ずっと羨ましいと思ってたんだ」
突然言われた言葉。
表情を消した妖精はこっちの返事を待たずに続ける。
「僕は昔からゲームが大好きだったんだけど、知っての通り下手くそだったからね
僕に出来ない事を簡単にやってしまう君を尊敬していたし、正直に言えばずるいと思ってたよ」
耳から入ってくるいつもより低い声。
そんなの……
「裕くんは気付かなかっただろうね、1番大好きな物で負けていたんだよ? そりゃあ悔しいし、苦しいに決まってるじゃないか」
初めて聞いた親友の心の中。
ならば一緒にゲームをしていた時の、あの楽しそうな雰囲気は全部嘘だったのだろうか。
面白かったのは俺だけで、学はいつも無理をして……
「もしそうだったら手伝って欲しいなんて言わないよ
嫉妬していたのは本当だし、心が痛かったのも本当だけど、それ以上に楽しかったんだ」
「僕よりも楽しそうにゲームをする君と一緒に遊ぶのが楽しかった、僕よりもゲームが好きな君が……」
そこまで言って妖精は深呼吸をした。
「ねぇ、知ってる?」
「僕は君がゲームをする姿を見てThe 2nd worldを作りたいと思ったんだよ」
こっちを見る学の顔は、昔と変わらない。
本当に楽しくて仕方がないとでもいう様な満面の笑み。
「遊んでくれる全員が、裕くんのように楽しめる様な世界を作る、それが僕のやりたい事なんだよ!」
いつの間にか両腕を横に広げて語る妖精を見て、他の運営メンバーを思い出した。
ふとした時に見せるキラキラした顔。
「やりたい事か……」
呟いて気付く。
そりゃあ場違いだと思うわけだ。
俺だけ何も無かったのだから。
「大丈夫、裕くんもすぐに見つけられるよ」
飛び上がった妖精はニヤニヤしながら片目を閉じる。
「それが僕達と重なれば最高だね!」
不思議だ、さっきまでのモヤモヤが無くなって気力が溢れてくる。
そうだな、とりあえずは
「やりたい事を探すところから始めるよ」
もし見つけられたら、嬉しそうに飛ぶ目の前の妖精に追いつけるだろうか?
「そのためにはお金稼がないとねー」
「そうだな」
「ちなみに僕は裕くんの5倍逃げ切ってるよ!」
「うるせ」
すぐに抜かしてやるぜ
「じゃあまたねー」
「あぁ」
もうこれ以上話す必要はない。
最後に拳を合わせた俺達はイベントに戻ることにした。
会議室から消える時に女の子の泣き声がしたのは多分気のせいだろう。
しょうがない、俺のために稼ぎにいきますか。
心なしか体が軽い気がする。
今なら2時間逃げ切れるかもしれない。
俺は色々と考えながらログアウトを選択した。




