運営会議2
星の流れる世界で考える。
最初から、こうなる事は予想していたし、防衛に成功される事もわかっていた。
当初の予定通り、魔王は1回も負けてないし、多くのプレイヤーを倒したから所持金もかなりの量だろう。
理解出来ている。
これがベストな終わり方。
でも……
なんか、悔しいなぁ
なんだろう、心臓が、胸が、重く感じる。
勝ちたかった
無我夢中で走って、拠点に辿り着く事だけを考えて、気付いたら時間が過ぎてしまっていて、
「楽しかった?」
久しぶりに、聴き慣れた声が耳から入って来た。
「勝ちたかった」
口から出た答えは、きっと答えじゃない。
「ん、そっか、やっぱり裕くんを選んで良かった」
見透かすような緑の瞳、少しだけ体が軽くなった気がした。
妖精が優しく笑いながら、小さな手を差し出してくる。
楽しかったよ
心だけで思いながら手を取ると、もう1度視界がホワイトアウトした。
少ししてから切り替わった景色は、イベントの直前に会議をした白い部屋。
既に5人が丸いテーブルを囲むように座っている。
そこには白い羽の妖精も見つける事が出来た。
「遅かったね、席についてくれ」
さっきまで一緒に戦っていた魔王、鈴木さんの指示に従って俺と学は残っている場所に腰を落とす。
「では会議と反省会を始めようか、シャル」
リーダーは黒い猫を見つめると首を縦に振る。
「結果、上級、中級、下級、全てイベントクリア
魔物撃破時の報酬含めて損失約23億、プレイヤー撃破による回収、合計で約1億」
説明はさらに続いた、各級ごとの回収金額や各モンスターの回収金額等々。
ちなみに俺の最終結果は1743人撃破で所持金は約1000万wで終了。
既に歩合給として10万円前後振り込んでくれたらしい。
これで親への借金も返済可能だ。
「ありがとう、次にイベントの反省点、新」
「お客様からの声っすね、イベント期間が長い、モンスターが少ない、魔王に会えない、最終日仕事で何も出来なかった、まだまだ有りますが、ある程度重複したのはここらへんっす」
白衣の男がリストを表示しながら話していく。
なんとなくだが、臆病なハエを思い出してしまう。
「本当にその通りだね、モンスターの量は完全に間違えた」
問い合わせや、運営に入ったクレーム全てに、こうしたら良かった、次はこうしようと皆で考えていく。
不覚にも滅多に見る事のない学の雰囲気に少し緊張してしまった事は内緒にしておこう。
話しているとわかる、
初めてのイベントだからある程度は仕方ない
俺を除いて、そう思っている人は1人もいなかった。
ここにいる全員が、本気でこのゲームを作っている。
だからだろうか?
少し場違いな気がした……
そんな事を考えている間も会議は進んでいく。
「次のイベントについて、静」
しずか、と呼ばれたスーツの女性が立ち上がると、メガネの位置を左手でなおす。
「まず候補だった対人戦は保留にしました」
秘書のような女性が語った理由は主に2つ
1つ、プレイヤーの数が多すぎて管理が難しい事
まずはレベルの差、次に戦闘スタイル、さらには勝負の結果によるその後の揉め事。
イベントとしてやるのなら全ての人にある程度平等に遊んで貰わなければいけない。
2つ、運営側の回収が難しい事
プレイヤー間で何かを賭けるなら問題ないが、それならわざわざイベントでやる必要が無くなってしまう。
トーナメントや、ランキング制にして賞品を出すのが簡単だと思うが、それだと絶対にこちらがマイナスになってしまう。
「また、前回の長すぎた、参加出来なかった、等の意見を参考にして考えました」
静さんは説明しながら空中で指を動かすと全員にプリントを配布した。
書いてある内容は第2回イベントについて。
詳細は簡単だった。
いくらかのwでイベントダンジョンに挑戦できる。
同じダンジョンには100人〜1000人程度を予定。
そこにはレアモンスターがいて、倒せれば高経験値か高額報酬。
初心者にも優しく攻撃を低く、速度を高く設定する。
勿論、長くやっているプレイヤーの有利は消さないように注意する。
俺はレアモンスターとしてダンジョン内を徘徊して、プレイヤーに見つかったら逃げればいいらしい。
頭の中には銀色の液体スライムが浮かんでくる。
次回のイベントはこれで確定。
今後も調整をしながら、3日以内には公式サイトに載せる事が決定した。
「他に何かあるかい?」
一通り話が終わり、リーダーが全員に問いかける。
「よし、じゃあ解散しよう、成功と呼べるかは分からないが、皆んなのお陰で大きな問題もなく初イベントを終えることが出来た! これからも力を合わせて最高のゲームを作って行こう お疲れ様でした!」
お疲れ様でした
全員の声が1つに重なった。
この後教えてもらったが、明日から三連休を貰えるらしい。
次のイベントは勝つ。
勝ちの条件が分からないが、俺はそう決意してから現実世界に戻ることにした。
「あれ? 私1回も喋ってない……」
黒猫が光と共に消えると、他に誰も居なくなった部屋で金髪の妖精が1人呟く。
その手には会議では使えなかったカメラのような物が悲しく光輝いていた。
ここまで読んで頂きありがとうございます
これにて第1回イベント終了です。
ブックマークや評価、感想をくれた方々、本当にありがとうございました!
書いている途中、かなり励まして貰いました。
今後も書ける時にどんどん更新していきます。
これからもよろしくお願いします。
ゆー




