魔王vs魔王1
村を抜けるとまた森に出た。
相変わらずの紫だが、変わったことが1つ。
緑が無い。
いや、元々紫一色なので緑は無かったのだが。
木は多いが全て枯れている。
地面も草や花は生えていない。
表現するならば、干からびた大地だろうか。
良い点があるとするならば視界が開けたお陰で遠くまで見渡す事が出来る様になった事くらいだ。
『よぉよぉ、魔王さんよ 痛い目に遭いたくなかったら
ちょいとアイテム出してもらおうかー?』
逆に言えばモンスターからも発見されやすい訳だ。
良く見るアニメやドラマでカツアゲする時の常套句を自分に言われる日が来るとは思わなかった。
視界に入ってきたのは、トカゲが二足歩行しているようなモンスター。
手には銀色の剣を持ちいかにも悪そうな顔をしている。
身長は俺と同じくらいで180程度か……
リザードマン25
想像通りの名前だ。
ポイズンが付いていないので毒は持っていないと信じたい。
「魔王を恐喝するモンスターってどうなのよ」
俺はこのモンスターを作ったであろう2人に視線を向ける。
「あははー、面白いでしょ!」
こいつは駄目だ。
「私は性格を好戦的にしただけです
言葉や、口調は学さんの担当なので」
私を変な人だと思わないでください、と金髪の妖精が全力で抗議する。
『無視してんじゃねぇぞ、コラ』
リザードマンが悪態を吐きながら走ってくる。
突いてくる剣の速度はハミルトンに比べれば止まって見える。
俺は余裕を持ってそれを躱すと勢いそのままにリザードマンの顔面に拳を打ち込む。
カウンターが綺麗に決まった。
剣を落としながらトカゲ野郎は大きく吹き飛ぶ。
俺は無意識に剣に近付く。
ピコンっ
シルバーソード
攻撃+30
拾いますか?
まだリザードマンは生きている。
なのにアイテムを拾える……
これってモンスターから無限に奪えるって事か?
丁度武器をなくしていた俺は迷わず拾い装備する。
『人の武器使ってんじゃねぇよ、犯罪だぞ』
さっきまで恐喝してたのは何処のどいつだ。
HPバーを半分まで減らしたチンピラに剣を向ける。
やはり武器と言ったら剣だろう。
オンボロソードとは違い自分が強くなった様な気分になる。
武器を失ったリザードマンは拳を構える。
さっきの仕返しだと思いながら俺はシルバーソードを水平に振るう。
ザクッとした音と共に剣が食い込む。
それから余り時間が経たないうちにモンスターは消滅した。
どうやらそこまで強い敵ではないらしい。
ピコンッ
体術(1)を獲得しました
体術(1) 肉弾戦で与えるダメージ1割アップ
速度+10
取得条件 二種類のモンスターに肉弾戦でダメージを与える
ピコンッ
体術(1)が体術(4)に進化しました
体術(4) 肉弾戦で与えるダメージ4割アップ
速度+40
進化条件 体術のみで300体のモンスターを倒す
連続でアナウンスが流れる。
これは思わぬ収穫だ。
なにより上げる気が無かった速度のプラスは嬉しい。
300体のモンスターと言ったら思い当たる節は1つだけ、
ゾンビ共に感謝だな。
『おっ、野生の魔王いんじゃん やっちまおうぜ』
『低レベルの雑魚は大人しくやられちまいなぁ』
一息つく暇も無く2体のリザードマンがこっちに走ってくる。
お前らもレベル22.23でそんな変わらないじゃないか……
どいつもこいつも不良チックだ。
片方はメリケンサックを付けて拳を構えてくる。
もう一方は特に武器を持っていない。
見える世界が変わった。
相手の動きが遅すぎる、
これが速度の恩恵か。
ゆっくりと迫ってくるメリケンサックを躱す。
武器なしの方へと直進。
シルバーソードで胸を貫く。
消滅する際の光を確認した。
『テメェ、良くも相棒おぉ』
ならば勝てない相手に喧嘩を売るのは辞める事だな。
「少し見ない間に強くなりましたね」
危なげなくもう片方のリザードマンを倒した俺を遠藤さんが褒めてくれる。
「ね!裕くんなら僕達の経済を守ってくれそうでしょー」
自分の事の様にドヤ顔で答える。
今の俺でもこの位戦えるのだ。
現在のプレイヤー達はどの位強いのだろうか?
トップの人はどんなステータスをしている?
あぁ楽しみだ
ハミルトンみたいな強いボスとは違う。
PvPならではの戦略、駆け引き、
相手の行動を読み合うのは対人戦でしか味わえない感覚だ。
早くやりたいなぁ
『ちょっとお金出してもらおぅかぁー』
モチベーションが上がった俺達3人は次々に出てくるリザードマンを倒しながら先に進むのであった。




