これが魔王のレベ上げだ?3
1人と2匹が紫の森を進んでいくと、
赤い目を持つ小さなウサギが現れた。
もちろん毛並みは紫だ。
「可愛いですね、私ウサギ大好きなんです」
飛び疲れたのか肩に座っていた遠藤さんが目を輝かせる。
「森の定番とはいえ、やっぱり小動物とかと戦うのは気が進まないよな」
目の前のウサギにはしっかりとHPバーと共にポイズンラビット14と名前が表示されている。
スライムに比べてレベルはそんなに高くないが、倒さなければいけないモンスターである事は間違い無いだろう。
「大丈夫だよー」
左肩に乗っている緑の妖精が急に声を上げる。
「怯えるとか無抵抗だとプレイヤーが困ると思って、基本的にこのゲームのモンスターは好戦的に設定してあるんだ!」
やっぱりゲームは戦ってなんぼだもんねー
と加えて話す。
キュウキュウ
ウサギが鳴く。
スキル 魔王の心得Ⅰが発動しました
これより常時モンスターの声を理解できるようになります
頭の中でアナウンスが入る。
そして目の前の兎がもう一度鳴く、
『そこの雑魚レベ、どけや』
……
『聞こえへんのか?刺すぞコラ』
……どうやらこの兎は俺の知ってる可愛い奴では無いらしい。
右の妖精が石のように固まる。
左の妖精が笑いを堪えて俺をみる。
「ね!戦いやすいでしょー」
沈黙を無視されたと思ったのか兎が接近してくる。
複雑な気持ちを抱きつつ目の前に集中した。
流石、兎の魔物だけあって移動速度はスライムとは比べ物にならない。
同時に妖精2人が安全圏まで飛び上がる。
やる事は変わらない、
相手が早くても突っ込んできた所を狙うカウンタースタイルでいく。
走り出した速度そのままでウサギが飛びかかってくる。
『喰らえやー』
可愛い鳴き声からは想像出来ない言葉と共にウサギの速度が急激に上がる。
直後お腹に衝撃が入った。
「クソッ」
昔授業でやった野球でデットボールを食らった時を思い出した。
ゲームの中とはいえ中々痛いんだな。
HPを見ると46になっていた、
防御を考慮してもそんなに攻撃力を持った相手では無いらしい。
完全にタイミングを外された俺は初めてモンスターの攻撃を受けた。
そしてそれがゲーマー魂に火をつける。
面白くなってきた
やはり戦闘はこうじゃないとな
着地した兎が紫のオーラを纏いながらまた飛びかかってくる。
恐らくあれは兎のスキルだろう。
となると、さっきの超加速も奴の技だと思って良いはずだ
やる気を出した俺の頭は今までのゲームの知識から目の前の状況を把握する。
どうみても触ったら毒になりそうなのでここは躱すだけにする。
兎が着地すると紫のオーラは消えた。
飛びかかって来るであろうウサギを注意深く観察する。
やはり飛んだ瞬間に速度が急激に上がる。
恐らく2倍程度……
元々躱すつもりしかなかったので今回は回避に成功した。
そして行動を把握してしまえば敵を倒すのは簡単だ。
お互いに振り返り攻撃態勢に入る。
ウサギが飛びかかって来る瞬間、
速度が2倍になることを想定して奴の軌道上に剣を振る。
空中でオンボロソードと紫の魔物が激突する。
そして赤いエフェクトが発生
魔物は空中で消滅した、
俺は達成感と共に息を吐く。
今回はレベルアップを告げるアナウンスは流れない。
「裕くんは凄いね!今の赤い光はクリティカルヒットだよー
滅多に出ないけど、ダメージ倍以上の補正が入るんだ」
勝利を確認した2人が降りて来る。
我ながらさっきの一撃は綺麗に決まったと思っていたので少し嬉しい。
「楽しくなってきた、早く次行こうぜ」
2人の妖精は嬉しそうに笑うと、
そうだねー
そうですねと返事をする。
そして更なるモンスターを求めて歩き出す。