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『雑魚』と罵られた少年は、やがて世界を救うのだろう。  作者: 望木りゅうか
第1章前編 ーカラリエーヴァ王国編ー
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暗闇の恐怖。思い込みの恐怖。


「で、ネフリスの役回りについてなんだが」


「え……はい」


「君の言う通り後衛にした方がいいと言う結論だ……が」


「お前をただの後衛にする気は無い。前衛にもなり変われるようになって欲しい」


先まで流していた涙を拭き取り、ネフリスは意味を問う。


「どういう事ですか?」


「それはーーーー」


パーティリーダのアサナトは、そのまま前衛と後衛を両方担うと言う事についての理由を述べた。


その理由と言うのは、ネフリスにとっても充分に納得できる物であった。


そして一番安堵したのは、『防衛者』だと勘付かれなかった事だ。


「ーーー分かりました。確かに、それで異議なしです」


なので普通に飲む。


「なら話は早いわね。クエストにでも行って連携内容を確立させるわよ」


そう魔導師のナミアが言った。


忘れない内にと言う事だ。


なのでさっさと切り上げ、ネフリス達はクエストを受諾した。


そのクエストの最低受諾ランクは鉄。


例えネフリスが銅ランクでも、鉄ランクが三人以上居るパーティーに居るので、問題なく受諾できる。


そしてそのクエスト内容。


「村付近の洞窟に棲みついたオークの子供退治。報酬二百カラですね。……はい、これで受諾完了しました。お気をつけて」


先程ネフリスの冒険者登をした受付嬢がクエストの紙に判子を押し、笑顔で送る。


報酬は言われた通り二百カラ。銀貨二枚分。


若者の小遣い程度にしかならないが、簡単なオークの子供退治だ。このくらいの価格設定でも仕方ないだろう。


「ありがとな。ユーリ」


「はい。言ってらっしゃいませ、皆様」


盾役のイェネオスがそう言い残す。


(ユーリって言うのか、あの人。……覚えておこう)


ネフリスにとってさっきの受付嬢の名前が分かったのは大収穫。


心の中でイェネオスさんグッジョブと賞賛を送っておこう。






クエストの場所へと向かう途中、ネフリスはハッと思い出した。


剣忘れてた……と。


そうネフリスが口にした途端に、イェネオスも思い出したかのように、ネフリスに一着の鎧を渡した。


軽くて強度も高そうな鎧だった。


「こんなの要りません、実力のあるイェネオスさんが着てください」と抗議するも「いや、着ておくんだぜ」と押し切られネフリスは結局着る事になった。


しかも、他の仲間達は全く鎧という鎧を着ていない。


あるのは多少の金属。


聞くと、経費削減の為だそう。



……理解出来なくも無いけど。



そうネフリスはその時納得した。



ーーー後で分かった事だが、仲間達にとって、鎧は着れないのでは無く、『着るだけ意味が無い』という事だった。






オークの子供が居るとされる洞窟前に、彼らは居た。


そう、ネフリス一行だ。


ネフリスは愛用の剣を携え、他全員は多少の戦闘準備を済ませている。


魔導師のナミアは四十センチ程の杖を持ち、剣士のエセウナは剣を腰に携え、他三人は何も持っていない。


これも資金が無いのだ、と陰ながらに察し、ネフリスは触れないでおいた。


「……準備出来たな?」


パーティリーダーのアサナトが全員に問う。


全員が頷き、大丈夫だと意を示した。


そしてアサナトは腰に付けていた二つのオイルランプを手に取り、それぞれ火を灯す。


一つはアサナト自身、もう一つは後衛のナミアだ。


洞窟の中は暗い。


しかも今回のは天然洞窟なのかかなり広い。


洞窟の中には光は届かない。


洞窟での戦闘において灯りは命。


流石に灯り系統の物を持たずに洞窟へと突っ込む馬鹿は居ない。


その定石を、アサナト達はしっかりと理解している。


そして一つの灯りが潰えても、もう一つの灯りがあれば大丈夫。


ちゃんと考えているようだ、アサナト達は。





ザッ、ザッ、ザッ。


六人の足音が生存を示す。


暗闇に於いて、全員の生存を確認させるのは、音だ。


足音、呼吸、心拍、声。


それら全ての内に、何か一つでも加わったら、それは敵だ。


感覚を研ぎ澄ませるのだ。


光に灯されるのが全てでは無い。


闇に満ちた視界の端には、何が居るのか。


それを、自身の視覚、触覚、聴覚、嗅覚。


それら全てを使って索敵する。


それが出来ないのであれば、洞窟に潜る資格なんて無い。


偶然な事に、ネフリスはその恐怖を知っている。


暗闇に潜む、闇を味方に付けた魔物の恐怖を。



正面のアサナトの足が止まる。


「横道だ。恐らく強襲の為の通路だな」


それは、洞窟の横に空いた小さな通路。


アサナトの言う通り、入ってきた冒険者を挟撃する為の古典的な仕掛けだ。


「……どうするんですか?」


「魔法を使って塞ぐ」


ネフリスの問いに、即答。


場数を踏んでいると言う事がはっきり感じ取れた。


だが、ネフリスはここで気付くべきだった。



ーーーオークの子供には、横道を掘って挟撃なんて言う知能なんて無い事を。



魔法を使ってアサナトが横道を塞いだ後、一同は再び歩き出す。



数分歩いていると、少し広めの部屋に出たような気がした。



間取りは分からない、暗すぎて。



そしてここで、シリアンがある事を暴露する。


「やっぱり、この洞窟は人口洞窟ですよー。しかもかなり真新しい」


「……え?シリアンちゃん今なんて……?」


人口洞窟?しかも真新しい?


クエスト内容って、オークの子供退治だよね……。


オークの子供って、あまり知能も力も無いから洞窟に篭って成長を待つんだけど……。


人口洞窟?こんなに大きいのが?


……いや待って。


しかもさっきの横穴。


思い込みや思い違いじゃ無ければ。


オークの子供には横穴なんて作る知能すらないよね……。





ーーーまさか。




「アサナトさん!もしかしたらこの洞窟には……!?」


「……っ!!」


アサナトが突然まだ火のついたランタンを前に投げ捨てる。


そして、それによって灯されたモノ。



そこに居たモノは……。


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