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第15回 真実

 あのときはまだこんなことになっていたなんて思っていなかった。

 全てはすでに始まっていたのだ・・・・・

 タイムリミットは、12月31日―――


            ◇


 その日、千尋ははっきりと夢を見た。

 貴也がイスに座って頭を抱えている。なんでそんなことしてるのだろう。不思議に思っても声を出すことはできなかった。

 だけど、そのときの彼の言葉ははっきりと聞き取れた。

「千尋・・・・・」


 そこで目が覚めた。今でも鮮明に覚えている。

 なんであんな夢を見たんだろう・・・やっぱり自分は死んだのかもしれない。1度そう感じてしまえば、そう簡単にその疑惑が頭から離れない。

 無理だよ・・・耐えられない。


「千尋さん、ちょっといいですか?」

 部屋に入ってきたのは、孝太だった。同じ境遇の彼は少しだけうかない顔をしていた。

「いいよ。どうしたの?」

「千尋さんも思ってるんでしょ?自分が死んでるかもしんないって」


 何も言わないが、それは肯定を意味していた。孝太はそれ以上つっこんだことを訊かなかった。

「もう1回行ってみませんか?先生んちの近くに」

 千尋は頷いて承諾した。


            ◇


 何度もここへは来ているが、来るたびに景色が変わって見える。今日改めて見てみると、道路にははっきりと見てわかるほどのブレーキの跡がついていた。

 まるで何かを思い出すたびに1つ1つ現実に引き戻されていくようだ。

 花はあいかわらずそこに供えられてあった。たぶんこないだ見た女の人のものだろう。


 千尋は失礼だとは思ったが、その花を間近で見てみることにした。なんの花かはわからなかった。

「ハッピーバースデー・・・・・」

 孝太の声に驚いて振り返る。一瞬そういう名前の花かと思ったが、彼はどうやらその花についていたカードを読んだだけのようだった。


「誕生日・・・千尋さんっていつですか?」

「私は3月だけど・・・」

「俺は7月です」

 どういうことだろう。この花が置かれたのは12月26日だ。いくらなんでも離れすぎている。もしかしたらここで死んだのは千尋たちではないのかもしれない。


 だけど、2人の中に渦巻いていた嫌な予感は消えなかった。むしろさらに深まっていくのを感じた。

「ねぇ・・・誰か26日に誕生日の人っていましたっけ・・・・・?」

 孝太の声は少しだけ震えていた。


 千尋は頭の中である1つのできごとを思い出していた。

 トラック、鉄パイプ、犬、それから―――・・・・・・


「――村瀬・・・」


            ◇


 あのとき、台所にいたときだ。千尋はなにげなく窓の外を見たら知っている緑色の服を着た人の姿が見つけた。

「あれ・・・村瀬だ」

 貴也に会いに来たのかと思ったが、様子を見てみてもなかなかその場から動こうとはしなかった。


 少しだけ気になって外に出てみた。と、そのとき村瀬よりも先に別のものが視界に入ってきた。

 それは、鉄パイプを積んだトラックが道路の脇に停めてあった車を避けて走ろうとする。

 しかし、停車中の車から犬と、そして犬を追うように少年が飛び出してきたのを見て、トラックは停車中の車にそのまま突っ込んでしまった。


 キキィィィ

 衝撃音と共に、荷台に載せてあった鉄パイプが崩れた。

「―――っ!」

 気がついたら、千尋は走り出していた。そのときのことはよく覚えていない。


 はっきりと覚えていることは、緑色の服を着た人が目の前に現れたということだけだった。


            ◇


 やっと思い出したか。

 白い煙を吐きながら村瀬は空を仰ぐ。もうこの世界を見ることはないだろう。

 タイムリミットは12月31日。49日はもうすぐだ――・・・・・

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