第1回 性別チェンジ
ここはどこだろう・・・?
あれ、私確か・・・・すごく大切なことがあったような気がするんだけど・・・・・なんだっけ・・思い出せないや。
っていうか、体だるっ!なんなのさ、まるで・・・・・自分の体じゃないみたい・・・・・
「おーい・・・そろそろ起きろや」
「ん・・・・・」
誰かの声に気がついて目を覚ますと、そこは知らない天井が広がっていた。しばらく呆けていると、ぬっと声の主が顔を出してきた。
「あ、ほんとに起きた。大丈夫か?」
茶髪でいかにも現代風な男。あれ・・・この人をどこかで見たことがあるような気がする・・・
「まずは自分の名前と生年月日と年齢を言ってみろ」
「え・・・田中千尋・・・・・6月12日生まれ。24歳」
「よし」
何がよしなのかはわからなかったが、そう言うことによって千尋自身の頭もはっきりとしてきた。
「何か大事なことを忘れてないか?」
「大事なこと・・・うん、そう、それをさっきから思い出そうとしてるんだけど・・・・・」
「10月15日」
男の言葉でようやく千尋は全てを思い出した。
「そうだ!私明日結婚式なんだ!やだー・・・もうなんでこんな大事なこと忘れたんだろー・・・・・って、今日14日よね?」
確認するように訊ねると、男は少しだけ困ったような顔をした。もう千尋はその人物の正体を知っている。婚約者の親友、村瀬高明だ。
「村瀬・・・?どうしたの?」
「あのな、よく聞け。お前は今男だ」
一瞬何を言われているのかわからなかった。何言ってるんだろ、村瀬のヤツ。もしかして自分のことが好きで気を引いているのかもしれないと思い始めたとき、村瀬は千尋の目の前にどんっと大きな鏡を出してきた。
「これが証拠だ」
鏡には、中学生くらいの男の子が映っていた。
千尋はしばらく少年と目を合わせながら、ゆっくりと右手を上げてみた。すると鏡の中の少年も同じように手を上げた。
それからすばやく動いてみたが、やっぱり鏡の少年も同じ行動をした。
「はぁっ!?どういうこと!?」
「見たままだろ。お前は男に性別チェンジした。以上」
「以上じゃないよ!ちゃんと説明してよ!村瀬!」
信じられなくて目の前の村瀬に向かって怒鳴りつける。
「俺だってよくわかんねぇよ。ただ1ヶ月前、貴也から連絡があってお前が行方不明になったことを知ったんだ。で、なんでかお前が中学生くらいの男になった変な夢ばっかみたから、おかしいと思って夢で見たこの場所まで来たらお前が寝てたんだよ。俺の見た夢と同じカッコでな」
千尋は頭が真っ白になっていくのを感じた。
「あー・・・俺今まで言わなかったけど、なんつーか正夢体質っちゅーか、ちょっと変わった夢を見るんだよ。まぁ気にするな」
村瀬の言葉なんて入ってこなかった。
なんで?なんで?ありえない・・・・・・・・・・!
「―――1ヶ月前って・・・・今何月なの?」
「11月14日。田中がいなくなってからちょうど1ヶ月だ」
「私どうしていなくなっちゃったの・・・?結婚式の前日は・・・っていうか、朝は貴也の家にいたはずだけど」
千尋はそのときの光景を思い出していた。朝貴也の家に行って、まだ朝ごはんを食べていない彼のために台所に立って・・・・・・立って、それから?
「とにかくお前が田中なら話は早いな。1度貴也に会いに行けよ。あいつずっと元気ねぇんだ」
村瀬の言葉に、千尋はただ頷くしかなかった。
体を触ってみてもよくわかった。自分は本当に男になってしまったんだと―――
こんにちは!
基本的にはラブコメですが、ちょっと深い話に
していきたいと思っています。
感想頂けると嬉しいです。