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第7話

 −試しになんの魔法が使えるのか、やってみるかい?−


 そう問いかけられ、修司は表面上は冷静−あくまで本人はそのつもり−に頷きつつ、

 「そういえばヘルダさんやリーナはどの属性に適正があるんですか?」

 と、逸る気持ちを抑えて聞いてみた。


 「私は水属性さね。ただ、リーナは、ねぇ。」


 世間話程度の感覚で聞いたつもりの修司であったが、何やらリーナの適正属性に関して言葉を濁しつつ、どうしたものか、という視線をヘルダはリーナに向けている。


 そんな視線を向けられたリーナは、

 「大丈夫だよ、おばあちゃん。村の人たちもほとんど知ってることだし、シュージさんなら大丈夫だよ。」


 リーナの言い分にそれもそうさね、と納得をしたヘルダは、

 「さっき説明した通り、エルフやドワーフには稀に二つの属性に適正がある者がいるんだけどね、リーナがまさにそれなのさ。一つは水属性、そしてもう一つが”聖属性”なのさ。聖属性は本来ヒューマンにしか適正を持つものが出ないとされていて、それこそがヒューマン至上主義の一つの大きな拠りどころみたいなものだったんだけどね。特に神聖法王国ルチオなんかは、聖属性をもってるヒューマンを”聖人”や”聖女”だって担ぎ上げたりもしてる。そんな中、ハーフエルフではあるものの、ヒューマンじゃないリーナに聖属性の適正がある−。そんなことが知れ渡ったらどうなるか、お前さんにもなんとなくはわかるだろう?」


 修司は真剣な表情で頷く。確かにそんなことがヒューマン、それもヒューマン至上主義とやらを掲げている連中に知られればどのようなことになるか、想像できない修司ではなかった。


 そんな、少しばかり重い空気になったところで、

 「けど、聖属性魔法って便利なんですよ!重たいケガなんかは無理ですけど、ちょっとした擦り傷や切り傷くらいならパパッと治せちゃうんですよ!」

 そうやって、わざとらしく明るく話すことで重くなった空気を吹き飛ばそうとするリーナ。


 そんなリーナを見て、健気な娘や−と内心目尻に光るものがあった修司であった。


 せっかくリーナが重たい空気を吹き飛ばしてくれたこともあり、ヘルダがさっさと本題に話を戻す。


 「それで?どうするんだい?試してみるかい?」


 「はい、お願いします!けどどうすれば良いんですか?先ほどもお伝えしたように、私が元々いた世界には魔法とか魔力というようなものは物語とかの中にしかなかったものですから。」


 「じゃぁまずは・・・そうさね、そこに立ったら肩の力を抜いて目を閉じて、私のいう通りにするんだよ?」


 そう言ったヘルダに対し少し困惑した表情を向けるリーナの様子と、先ほど少し間が空いた時に何やらハッとした表情をし一瞬だけだったがヘルダがニヤけたように見えたのがやや不安ではあるが、魔法が使えるかどうかの前にしては些細なことだと深く考えず、ヘルダに言われた通り今まで座っていたイスから少し離れたところに立ち、肩の力を抜いて目を閉じる。


 「そしたらまずはそのまま左腕を大きく曲げながら左手が頭の上にくるように上げな。次は同じように右腕を大きく曲げながら、今度は手の平を上に向けたまま右手が無の前にくるように・・・そうそう、良い感じだよ。いいかい、ここから少し難しいから集中するんだよ?まず右足に重心を移して左足を上げるんだ。そのままもっと左足を上げたら膝を曲げて左足首を右足の膝の上にくるようにするんだ。最後にそのまま軽く右膝を曲げたら・・・よし!成功だよ!」


 言われるがまま、ポーズを10秒ほど維持していたが、特に何か魔力のようなものを感じることもなく、また、ヘルダに何かを言われることもなかったのでうっすらと右目を開けると、テーブルに突っ伏し、必死で笑うのをこらえているのを見て−やられたっ!

 特段手に何か持っていたわけではないが、気分の問題で頭上に掲げていた左手をなにか床に叩きつけるように思い切り振りおろしていた。

 よくよく今自分がしていたポーズを思い返すと、どこからどう見ても”シ。ー”である。−というかなんでこのポーズだったんだ?あるのか、この世界にも”シ。ー”が?、と恥ずかしさと怒りとでなんとも言えない感情になっている修司に気づき、ヘルダは笑いをこらえるのをやめていた。


 「イーッヒッヒッ。いやぁ、悪かったね。とっさに思いついちまったもんだからどうしてもやってみたくなっちまってね。いやぁ、ほんと、悪く思わんでおくれ。」


 そう涙を浮かべながら言うヘルダに対し、修司はこめかみのあたりをピクピクとさせながら内心で、いつか絶対に泣かす−笑い泣きと言う意味ではなく−と改めて決意する。


 そんなシュージとヘルダを見て、

 「もう、おばあちゃん!良い加減にしないとシュージさんが怒っちゃうわよ!」

 とリーナはヘルダを嗜めるが、その目尻には光るものがあり、表情も笑いをこらえているのが見てわかる。


 そんなリーナを見て修司は、

 −その表情もまた可愛いから良し!

 と、どうしようもないことを考えているのであった。

 引っ張ってしまいすいません。苦笑 本当は”シ。ー”のくだりはなかったんですが、ヘルダではないですが咄嗟に思いついてしまって、入れてしまった結果、引っ張ってしまいました。

 書いていてリーナが今の所空気過ぎる・・・というのが目下の悩みです。ヘルダがヒロインなんてルートは絶対にない−はず・・・。

 何はともかく、引き続き楽しんで頂ければ幸いです。

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