第29話
結論から言うと、修司の提案はほぼ却下された。
とはいうものの、そもそも修司をしてすんなり了承されるとは考えていなかった。どちらかというと、最後までブーたれていたのは言わずもがなドワーフ三人衆であった。
ともかく、7人で話し合った結果、ひとまずはシンプルな−いわゆる銭湯のような作りになることが決まった。
まず浴室は当然ながら男女毎に作り、それぞれ4m×8m程の浴槽と簡単な洗い場と脱衣所を作ることとなった。ちなみに浴室と浴槽は総檜ならぬ総パリトゥサである。そしてドワーフ三人衆が頑として譲らなかったこともあり、男湯にのみ小さいながらも露天風呂を作ることとなった。これはドワーフ三人衆を口説く時に言った手前、修司としても後押しを手伝わざるを得なかった。
そのように話を進める傍でオルド達は早速施設の設計を行なっていた。
そして粗方概要が決まると、オルドが−
「で、お前の住む場所はどんな感じにすりゃ良いんだ?」
と、さも当然というように温泉施設の設計図を見せながら尋ねてくる。
その問いかけにしばらくの間、何を言われているのかわからないと言った様子でいる修司。
「ん?お前がこの施設を管理するならここに住むのが手っ取り早いだろ?」
「え、俺が管理するんですか?」
「何を当たり前のこと言ってるんだ?そもそもの発起人はお前だろう?なら管理するのも当然お前だろうて。」
そう言われた修司は周りを見回すと、皆が当然というように修司を見ながら頷く。
「けど、そうすると農作業の手伝いとか・・・。」
「施設の管理も立派な仕事だろう。それに浴槽の清掃とかもあるだろうしな。そう考えると誰も文句は言わないだろうさ。」
こうしてめでたく、修司は温泉施設の管理人に就任したのだった。
それからの日々というもの、修司は毎日源泉付近へとドワーフ三人衆のうちの誰かとリーナという3人で向かい、パリトゥサを成長させる日々が続いた。初めの数日は、もう数人手伝いとして共に源泉へと向かい、成長させたパリトゥサを木材にしてからロの字型の木樋を作っていたのだが、ある時リーナが、−初めから木樋みたいに成長させられれば良いんですけどね−、という何気ない一言から物は試しとやってみたところ、なんと直径50cm程の空洞のあるパリトゥサに成長させることができたのだ。
それからというもの、3人だけで向かうようになり、基本的には修司はパリトゥサを成長させ、ドワーフ三人衆がそれらをうまく繋ぎ合わせるようにちょっとした加工をするだけで住むようになったため、作業が捗ることとなった。
というよりも、この発見がなければ工期はかなり伸びていただろう。
麓から源泉までの直線距離はおよそ2km程あり、修司が1日に成長させることが出来るパリトゥサは、直径1mで長さが30mのものが3本だ。
中が空洞になっているのと、木の直径自体を抑えることで長さと本数も増やすことができたものの、全長全てをそのまま木樋に使えるわけではないので、実際に1日あたりの木樋を伸ばせる長さは60m程であった。
ただ、麓側においても、温泉施設の建設と併せて1日20m程ずつ木樋を伸ばしている。こちらは、麓側の100m程はコの字型の木樋を伸ばし、その後はロの字型の木樋となっている。
なんだかんだで大掛かりな作業となり、常時20人前後の人達が手伝ってくれていた。裏を返すと、それだけの人達が温泉施設の完成を心待ちにしていたのだった。
そのおかげもあって、工事は特に問題もなく進んでいった。・・・途中ドワーフ三人衆が何かを画策しようとしたがアッシュにバレて何やらこってり搾られてはいたが。
そうしてようやく、工期にしておよそ四週間、温泉の発掘からだとほぼ一月半の末、遂に温泉施設が完成し、なぜかやることになったオープニングセレモニーを明日に控えた今、ヘルダの家の中、修司の前にはドワーフ三人衆が何やら深刻な表情をしていた。




