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第21話

 あれから一週間以上が経ち、特にこれといった大きな出来事もなく、いつも通りな日々を送っていた−のだが、その平穏は荒々しくドアを叩く音によって破られた。


 夕食後の魔法の練習をしようとしていた修司は、自分が行きます−と一言告げて戸の方へと向かっていったのだが、それを呼び止める声がする。


 「あー、いや。なんとなく誰が来たかわかるから行かなくていいよ。私らは今家にいない。いいね?」


 そのようにはっきり居留守を決め込むという発言をするヘルダに修司は、内心無理だろうと思う。

 なにせこの村で夜中に人が出かけているということはほとんどないからである。


 そうしてしばらく戸を荒々しく叩く音がなっていたが、ひときわ大きな音がして少しすると、修司達のいる部屋にドワーフ達が入って来た。


 「ほれ見ろ。やっぱりいたぞ。ガッハッハ。」


 そう言って豪快に笑っているのは、先日大火傷を負い運び込まれたオルドだった。


 そんなオルド達を見てヘルダは大きくため息をつく。


 「はぁ。どうせお前達はまた戸を壊したんだろ?どうしてお前さんがたドワーフってのはものを作るのが唯一の取り柄だっていうのにそうやってすぐ物を壊すんだい。」


 「ふん。元はと言えば患者がこうして尋ねて来ているのに居留守を使うのが悪い。それとも何か?その長い耳を持ってしても寄る年波には勝てず、戸を叩く音がついに聞こえなくなったか?」


 「私を老人扱いするとはいい度胸じゃないさね。それにお前さんのように動き回るのをうちでは患者として認めないんだよ。そんなに動けるんならお前さんがたが大好きな火酒でもあとはぶっかけときな。」


 −というようにオルド達が部屋に入って来てすぐに何やら険悪な雰囲気になりつつあった。


 ちなみに玄関の戸が気になったのでちらっとそちらの方を覗いて見たが、案の定壊れていた−のだが、どうやったらあんな風に壊れるのかはわからなかった。


 ヘルダとオルド達のやりとりはまだ続いており、どうしたものか−と思っていると苦笑を浮かべながらリーナがこちらへと近づいて来た。


 「なんでかわからないんですけど、エルフとドワーフってあんまり仲が良くないんです。と言ってもうちのお婆ちゃんとオルドさん達のあれは単純にじゃれ合ってるだけなんですけどね。」


 そんなリーナの言葉がどうやら聞こえたらしく、4人が声を揃えて否定してくる。


 そうしてようやく落ち着いたのか、オルド達がこちらにのっしのっしと近づいてくる。


 「お前がシュージか。この間はお前のお陰で助かったらしいからな。遅くなっちまったがその礼を言いに来たのさ。危うくもう鍛治が出来なくなるかもしれなかったからな、助かった。あぁ、そうそう俺はオルドってんだ。何か俺にできることがあるならなんでも言ってくれよ。」


 そう言いながらそのゴツゴツとした手を差し出してくる。


 その手を握り返しながら、

 「いえ、自分がしたことなんてそんな大したことじゃないですよ。けど、お役に立てて良かったです。何かあればお願いしますので、これからよろしくお願いします。」

 と挨拶を交わす。


 その後、オルドと一緒に来ていたドワーフの二人−バルドとバムリからも礼を言われながら互いに自己紹介をした。

 このオルド、バルド、バムリのドワーフ三人衆だが、兄弟でも親戚でもないのだが、非常に似ており見分けるのが非常に難しい−バルドには現在火傷の痕があり区別がつくが−。


 「そういえばオルドさんはなぜあんな火傷を負う事になったんですか?」


 そう何気無く尋ねた修司だったのだが−。


 「あぁ。しばらく前からイグナーツ山脈で鉱石探しをしてたんだがな、今回は何か新しい鉱石とか珍しいもんがないかと、普段人があんまし近寄らねぇとこを中心に見た回ってたんだよ。そんで、村に帰る前に最後に探しに行ったのが、卵が腐った匂いのするあたりだったのさ。」


 そのオルドの話を聞いていた修司は、

 −あれ、これはもしかして・・・−

 と内心思いながらもオルドの話を聞き続ける。


 「そんでその辺りを探してたんだけどよ、所々岩の表面が金色みたいなオレンジになってるのが転がってる場所があったのさ。んでそのすぐ近くにちょっとした穴があったから気になってちょっと覗いちまったんだ。そしたら急に視界が真っ白になってとっさに腕を前にしたらああなったってわけさ。バルドやバムリが言うには俺が浴びたのは蒸気だったらしいがな。ったく、本当に酷い目にあったぜ。」


 そう話終え、愚痴るオルドに対し、修司は内心で興奮していた。


 こんな大火傷を負ったオルドに対して頼むのはかなり気がひけるが、最終的には己の欲求に耐えきれず−


 「オルドさん。こんな大変な目にあった直後のオルドさんにお願いをするのはすごく心苦しいのですが、自分をそこへ連れて行ってくれませんか?」


 修司はそう言ってオルドに頭を下げる。

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