第17話
修司が蔓に対し、伸びるイメージで魔力を注いでいくと−
「伸びた・・・かな?」
しばらくの間、蔓が少しうねうねと動いて、魔力が空になると当然ながらその動きも止まったのだが、うねうねと動いていた分見た感じでは少し伸びたように思える程度にしか変化はない。
「とりあえず、まっすぐ伸ばしてみれば違いがよりわかるんじゃないですか?」
リーナにそう言われたので、まっすぐに伸ばしてみる。
「!?・・・思ったより伸びてるな。」
「そうですね。」
伸ばして見てわかったが、魔力を注ぐ前は修司の肩ほど−約1.5m−だったが、今では修司の身長よりも明らかに長く、ざっとではあるが2mあるかないかくらいだろうか。
一番初めは1m程だったことを考えると、倍近くにまで伸びている。しかも、その内50cm程は数日かかって伸びた−伸ばそうと思っていたわけではないが−のに対し、伸びるイメージで魔力を注いだことにより、同じだけの長さを一度で伸ばしたのである。
その様子を面白そうに見ていた人物がいる。−もちろんヘルダである。
「これはこれは。随分と面白そうなことになってきたじゃないかい。」
そう言われた修司は、なんとなくヘルダが考えていることが想像できた。
「これはあれだね。どんな植物ででもできるのか。どんな状態でなら効果があるのか。色々調べる必要があるねぇ。」
そう言うヘルダは、いかにも面白そうなおもちゃを見つけたというような表情をしている。
それはそうだろう。ヘルダは”薬師”なのだから。例えばだが、修司の木魔法で薬草を伸ばすことができるとしたなら、それはものによっては薬草を”増やす”のとほぼ同義の場合がある。
また、この”伸ばす”という結果が、”成長”ということであれば−。薬草だけに留まらず、もしかしたら村の食糧事情にさえ影響が多少なり出るかもしれない。
とはいえ、修司の魔力はまだまだ微々たるものだし、これから魔力量が増えてもこの世界の常識からすれば、そこまで劇的な食糧事情の変化などは起こらないだろうことは明らかだ。
そうした点を踏まえても、修司のこの木魔法でどんなことができるのか次第では、非常に有用な魔法となりそうである。
こうして翌日以降、魔法の練習は練習というより実験の様相を呈することとなった。
そうしてさらに数日が経ち、その間の魔法実験により、木魔法に関して次のことがわかった。
基本的には、”植物”であれば”操作”することや、”成長”させることができる。
”操作”に関しては、蔓を操るのと同じように、魔力を注いで動かすことができるが、動かせる範囲やその速度に関しては植物の特性により違いがある。例えば、蔓のような植物はそれこそ鞭のように動かせるが、木の枝などはゆっくりと曲がっていき、魔力を注ぐのを止めるとその形状のままになる。
”成長”に関しては、より面白いことが判明した。まず、やはり蔓を伸ばしていたのは蔓を”成長”させたからであった。そして”成長”させるには、ある程度の”原型”が残っていないとできないこともわかった。
例えば、植わった状態の植物や、欠損の状態の植物に関しては問題なく成長させることができた。それに対し、イスやテーブル、矢などの元々は”植物だった”ものを成長させることはできなかった。これに関しては”操作”の場合も同じだった。
他にも、ペースト状にすりつぶしたものや粉末にしたもの、紙なども試したが、そうした原型をとどめていないものは成長させることが当然できなかったが、逆に種子などは成長させることができた。
未だにわかっていないものとして、”木の枝”などがある。というのも、木の枝の場合、成長させることができるものとできないものがあるのである。恐らく何かしらの条件のようなものがあるのだろうが、そうしたものは今後も手探りで調べる予定である。
そして”成長”の最も面白いというか不思議というか−の点は、イメージによって”成長を色々といじれる”らしい点である。
これについても未だどこまでできるのか−その全容はわかっていないが、木魔法に関しての実験をしようとしていると、ヘルダから一つの種子を渡された日があった。
「これは?」
「それはダンデの種子だよ。ちょいと試してみたい事があるから、今日はそれを成長させてみてくれないかい?」
−ダンデとは、黄色いタンポポに非常によく似た花で、リーナと初めて北の森で採取した薬草でもある。
また、この時の修司は、ダンデ程度であれば魔力を全て使えば種子の状態から咲かせることまではできるようになっていた。
「わかりました。やってみます。」
そう言って修司はその種子に”ダンデが”咲いているイメージ持ちながら魔力を注ぎ込むと、魔力が空になったがちゃんと”ダンデが咲いていた”。
「これでいいですか?」
そう修司がヘルダに問いかけると、面白そうなものを見るように”修司が咲かせたダンデ”を見ている。
そうしたヘルダに疑問を抱くと−
「いやいや、面白いね。お前さん、魔法を使う時どんなイメージをしたんだい?」
と逆に尋ねられた。
「ダンデが咲くのをイメージして魔法を使っただけですが・・・。なにか変なところでもありましたか?」
「ひっひっひ。さっきお前さんに渡した種子だけどね。あれはダンデの種子じゃなかったのさ。」
そう言って面白そうな笑みを向けてくるヘルダだった。
拙作にも関わらず、日毎にどんどん読んでくださっている方やブックマーク、評価してくださる方が増えているようで、本当にありがとうございます。
少なくとも1章が終わるまでは頑張って毎日更新できるようにしますので、引き続き楽しんでいただければ幸いです。