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第12話

 異世界生活3日目−


 昨日と同じように午前中はリーナと一緒に薬草摘みへと行く。今日はアッシュさんはおらず、代わりにトムさんの相棒であるガルフという人物がトムさんと共に待ってくれていた。


 ガルフは”獣人族”だ。ヘルダやリーナからこの村には獣人族の者も何人かいることは聞いていたし、昨日農作業をしている時に遠目にも見かけていたのでそこまでの驚きはなかった。

 ただし、普通の獣人族ではなく、リーナと同じような獣人族とヒューマンのハーフとのことだが、パッと見た感じではわからなかった。獣人族の見た目は、極端なことを言ってしまえば二足歩行の獣である。

 目の前にいるガルフも、見た限り、首から上や肘から先などの服で覆われていない部分は”狼”のそれ−とはいえ何故か手の形だけは変わらないように見えるが−であり、尻尾もある。こうしてみると純粋な獣人族に見えるが、聞いたところ、いま見えている個所以外−つまり服の下のほとんどがヒューマンのそれなのだそうだ。


 ガルフは修司と年が近い−修司の二つ上−こともあり、割とすぐに打ち解けることができ、互いに”ガルフ”と”シュージ”と呼ぶようになり、これらのことを教えてくれた。


 ちなみに、ガルフのように獣人族とヒューマンの間に生まれた子の見た目はまちまちなのだとか。実際に、ガルフには妹がいるらしく、獣人寄りの見た目であるガルフに対して妹の方はヒューマン寄りで、獣人の特徴として残っているのは耳と尻尾、膝から下くらいらしい。


 妹の話をしている時のガルフは少しテンションが高く、いかに妹が優しくて可愛いか、ということをこれでもかとしてきて、それに対して−そんなに良い娘なら今度ぜひ会いたいな、と相づち程度で言うと、本物の狼のように唸りながら睨んできた。−どうやらガルフはいわゆる”シスコン”なのだろう。


 そんな話をしているとすぐに北の森へと着いた。昨日とは別の場所へと進み、10分ほど歩いた少しだけ昨日より奥まった所で昨日同様に薬草の採取と周辺の見回りと罠の確認等の二手に別れた。


 そうして薬草の採取をしていると、リーナからもう少しだけ詳しいことを聞いた。と言うのも、ガルフやその妹も自分と同じように”追放された”のだとか。獣人族においてもエルフ同様に異種族と血が交わった者を半端者・混ざった者−”ミシュング”と言ってエルフでいう”穢れた血”同様に蔑みの対象になるのだという。当然ながら全ての獣人族がそのように蔑んでいるわけではないが、年老いた者ほどそうした傾向が多いのだとか。


 また、普通異種族間では滅多に子はできないが、仮にできたとしても普通は母親と同じ種族の子になるのだが、何故かヒューマンとの間では、両親の特徴が混ざった子が生まれるのだという。何故そうなるのかは今だに分かっていない。加えて説明するならば、ゴブリンやオーガの”苗床”とされてしまった者から生まれるのは、必ずゴブリンやオーガであり、ヒューマンでもそれは変わらないとのこと。



 少しなんとも言えない空気になってしまったが、リーナが言いたかったことは、そうした事実があることを知った上で、先入観や思い込み、周りの人が言うことに惑わされずに”その人のことを見て”色々と考え、判断してほしいとのことだった。


 リーナの話にしっかりと頷くと、リーナも嬉しそに頷いていた。


 そんなこんなで薬草採取も粗方終わると、猪のような動物を担いだトムさんとガルフが戻ってきた。そして昨日同様、村へと戻るときはガルフと修司の二人で担いでいった。



 午後からは昨日に引き続き、同じ畑で日が傾くまで作業を行う。それが終わり家に戻ると家の裏手の井戸で体をきれいにしてからリーナとの勉強を夕食まで行う。そして夕食を食べ終わると、3回目となる適性属性の判別を行うも、結果は昨日や一昨日と同じだった。


 「これでお前さんに適性があるのは木属性だけってことがわかったね。ふぅー。ちょいと安心したよ。これでもし他の属性に適性があったり、また訳のわからない属性が出てきたりした日にはどうしようかと内心ヒヤヒヤだったよ。」


 そう言って笑っているヘルダだが、実際にそうなった場合どうしたものかと悩んでいたのも本当だった。


 「さて、それじゃぁ明日からはその”木魔法”でどんなことができるかを探りながら練習するんだね。」


 そう言いながら、15㎝ほどの気の棒に魔石のついた−いわゆるワンドと呼ばれるものを差し出してきた。まだ二日だが、しっかりと働いていることへのご褒美だとのことだ。ちなみにそのワンドはヘルダの手製で、その制作にはリーナも手伝ってくれたとのことだ。


 この村−に来てまだ三日だが、受け取っているばかりで誰にもまだ何も返せていない、と最初は受け取るのを辞退したが、そう思えるのならこれからじっくり返してくれれば良いし、それは何も自分たちへではなく、次の誰か困っている者へでも良いと言う。この村はそうしてまわっているのだから−と。


 そう言われ、修司は頭が上がらない思い出そのワンドと思いを受け取る。そしてまだ三日しか経っていないし、他の国や街がどうなっているのかなどわからないことだらけではあるが、この村で暮らして少しでも恩を返していこうと思ったのであった。

 内容とは関係ありませんが、昨日初めてこの作品に対して評価をつけてもらうことが出来ました。しかも拙作にも関わらず5ptも。本当にありがとうございます!

 何気なく、こんな作品あったら良いのにな〜、ないなら書いてみるか!と思い書き始めたものですが、読んでくださる方が増えたり、こうして評価されてみると嬉しいものですね。

 引き続き楽しんで読んでいただけるよう頑張りますので、今後ともよろしくお願いします。

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