表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

12/34

第11話

 北の森についた修司達は、早速リーナの案内で目的の薬草が生えている場所を目指す。と言ってもその場所は今いる場所からほんの少し入った場所らしい。


 森に入って5分ほど歩くと目的の場所に着いたらしく、修司は目的の薬草をリーナに実際に見せてもらいながら特徴を教えてもらう。修司にこうした山菜摘み−今摘んでいるのは薬草だが−の経験はほとんどなく、似たような経験としては、それこそ子供の頃に両親に連れられて行ったキノコ狩りくらいのものである。

 そんな修司でも、今日は見分けのつきやすい薬草の採取にしてもらっていたこともあり、リーナと手分けして次々に摘んで行く。その際にリーナから受けた注意として、決して全て採ってはいけないとのことだ。そうすることで、何度もまた同じ場所付近に生えてくるようになり、何度も採取できるようになるのだとか。


 修司とリーナが薬草の採取をしている間、アッシュとトムは二人から離れすぎない距離で周囲を警戒しながら近場の罠を確認したり、獲物がかかっていればその処理や罠の再設置を行っていた。ちなみに本日の収穫はウサギ二羽と鹿が一頭だった。


 そうして十分な量の薬草も採取できた頃には日もすっかり中天に近づいていたので村へと戻ることにした。ちなみにアッシュとトムが持って来た鹿とウサギは、程よい長さと太さの木の棒にくくりつけ、漫画などでよく見るあの状態にした上で、村までは修司とトムが担いでいく事となった。


 村へと戻って来た頃にはすっかり昼時になっていた。村へと戻る道すがらで、アッシュと戦闘やその手の経験が全くない事を話していたこともあり、別れ際に今度必要最低限の剣の使い方などを教えてもらう事となった。

 また、トムは行きの時と同じように終始無言であったが、別れ際に本日の収穫の内ウサギを一羽、無言でこちらに差し出して来た。そのことに修司が若干戸惑っていると−


 「初仕事祝いだ。」


 たった一言それだけ言うとウサギを修司に押し付けそそくさと立ち去って行った。


 その背中に向かって、ありがとうございます!−と慌てて修司は言いながら、リーナが言っていた通り根は優しくて面倒見が良い人なんだな、ということを実感していた。



 そして昼食を食べ終わった後はリーナに村の畑まで案内してもらい、そこでも農作業に従事している人達に色々と教わりながらその日の作業を行なっていく。普段使っていなかった筋肉をフル活用していることもあり、非常に大変だったが、会社で働いていた時には感じられなかった充実感のようなものも感じていた。

 何よりも、共に働く人たちが初めて会う自分に対しても気さくに話しかけてくれたりと、なんだか暖かいのだ。修司が働いていた会社の人たちが冷たかったわけではないが、皆が皆自分のことに精一杯で周りを気にかける余裕がなかったのだ。−中には自分だけ楽をしようとする者や、他人の足を引っ張ろうとする者もいたが。


 日もすっかり傾いてきて、今日の作業はこれで終わり−また明日、と共に農作業をしていた者達と別れリーナとヘルダの家へと帰っていく。家に着き、居間の戸を開けると−


 「「おかえり(なさい)。」」


 リーナとヘルダが戻ってきた自分に声をかけてくれた。


 昨日も感じたことではあるが、家に帰った時にたった一言おかえり−と声をかけてもらえることがどれほど嬉しいことか−。


 そんな二人に対し修司もまた、ただいま−と返す。


 「それでこの村−というよりかはこの世界か、での初めての仕事はどうだったい?」


 そう尋ねるヘルダに対し修司は、

 「とても大変でした。普段使ったことのない筋肉まで使ったので体のあちこちがバキバキ言ってます。・・・けど、元いた世界で働いていた時よりもとても充実した気分です。」

 と、笑顔で答える。


 「そうかい。それは良かったね。とりあえず汗もたくさん掻いただろうから家の裏にある井戸を使って体を拭いてきな。」

 ヘルダもまた、優しい顔でそう言う。


 言われた通り家の裏に回り、井戸から水をくんで体をきれいにする。−欲を言えば風呂にでも入りたいところではあるが、ここにそのような贅沢があるわけもなく、また、今の少し火照った体には水でも十分に気持ちのいいものであった。


 居間に戻るとリーナが待っていてくれており、前日の約束どおりこの世界の読み書きを教わった。この時非常に助かったのは、この世界の文字がアルファベットのような表音文字であり、会話自体は既に−何故かはわからないが−できることだった。そのため、基本的には文字の書方と、どの文字がどの音を表すかを覚えることである程度の読み書きはすぐにできるようになった。

 とは言っても、細かな文法などはあるので、引き続きそうしたことは教わらなければならないが。


 そして学習の時間が終わると夕食を摂り、昨日に引き続き魔石に魔力を流すことで属性の判別を行うが、結果としては昨日と同じように魔石から蔓が生えてきた。これで明日も試してみて同じ結果であれば、適性のある属性は木属性だけということがほぼ確定だろうとのことだった。


 こうして修司の異世界生活二日目は過ぎていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ