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第9話

 修司は右手の中にある、蔓の生えた魔石を見ながらヘルダに対し、

 「こういうことって稀にあったりすることなんでしょうか?」

 と問いかけるも−


 「いや、聞いたことがないね。蔓が生えてきたってことは、おそらく何かしら植物に関連のある魔法が使えるってことなんだろうけど・・・。」


 やはりヘルダもわからないようである。これはやはり自分が”迷い人”であることと何かしら関係があると考えるのが妥当だろう。−つまり知らぬ間に”チート能力”のようなものをもらっていた、ということだろうか。・・・とは言え、”木魔法”なんて本当に何ができるのだろうか。それに、先ほど魔石に体の周りのもや〜っとしたもの−ヘルダさん曰く魔力−を注いで以降、魔力もどうやらすっからかんのようである。

 よくある異世界者にありがちな、身体能力や魔力が隔絶していて無双ができる−ということはないらしい。ちなみに魔力は使えば使うほど増えていき、大体どの人もある一定量の魔力まで成長するとそれ以上は成長しないとのこと。


 そんなことを考えていると、

 「まぁ、あとは明日と明後日と、もう2回ほど今のと同じことを繰り返すんだね。」

 とヘルダが言う。


 なぜもう2回ほど繰り返す必要があるのか、と疑問に思っていると、

 「魔力が体の外に出るまで成長すると、さっきやった方法でどの属性に適正があるかを調べるんだけどね、説明した通りエルフやドワーフなんかは稀に2つの属性を持つものがいるから3回くらい繰り返すのさ。本来ヒューマンは適正属性が一つだから繰り返す必要はないんだけど、ねぇ?」

 −とヘルダの言いたいことはなんとなくわかった。自分は”迷い人”であり普通のヒューマンとは違う。現にたった今さっき見たことも聞いたこともない属性−木属性−への適性が出たばかりである。もしかすると他の属性にも適性が出る可能性があるかもしれない。ヘルダはそれを考え、もう2回ほど繰り返したほうが良いと言っているのだろう。


 ヘルダの言うことにそうする旨を伝えると、

 「さて、それじゃぁお前さんが今後どうするか、と言うのはすぐには考えつかないだろうから何日か考えるんだね。その間、日中はお前さんにも働いてもらわないと−と言っても手伝い程度だけどね。そうすれば私たち以外のこの村の住人とも話ができるし、お前さんがどうするかの助けにもなるだろうさ。ちなみにお前さん、何かできることとか得意なことはあるのかい?」


 そう言われ、自分に何ができるかを振り返ってみる。元々いた世界ではコンサルとは名ばかりの弩ブラック営業会社にいた。そこでやっていたこととなると、時間さえあれば手当たり次第に電話をかけ営業のためのアポ取りをし、アポが取れればその企業のことをある程度分析し営業資料を一から作り、アポ先で営業トークをする。基本的には朝から晩まで毎日毎日この繰り返しである。−とてもではないがここで何か役に立てそうな経験がないということに内心かなり凹んだ。唯一活かせるとしたら、その弩ブラック会社で鍛えられた精神力と体力だろうか。ただその点においても、先ほど会ったアッシュのような筋骨隆々な人物を見た後では−。


 「すみません、特段これというものはありません・・・。」

 申し訳なさ一杯に軽く俯きながらそう告げる修司。


 それに対しヘルダは、

 「別に気にしなくて良いさね。元からお前さんを見て、何かしら戦闘訓練を受けていたりってことはなさそうだと思っていたしね。それに手伝ってもらうとしても、基本的に畑仕事や村の周りの柵の修繕だったり、大抵どんな人でもできるようなことくらいしかないしね。あとはリーナの手伝いとして一緒に薬草を摘んできてもらったりとかだね。」


 自分にもできることがありそうでホッとする修司。そうしてヘルダと話し合い、しばらくは午前中はリーナと一緒に薬草摘みの手伝いを、日中は畑仕事の手伝いをすることとなった。

 また、畑仕事が終わった後暗くなるまで、リーナがこの世界の読み書きを中心に色々と教えてくれることとなった。


 そうしたことが決まった頃には外はすっかり日が傾き夕暮れ時となっていた。昼食を食べ終えて程なくヘルだからこの世界に関することなどの話を聞いていたが、思ったよりも長時間話を聞いていたらしい。

 夕食の準備をするということなので、野菜の皮むきなどの自分にもできる手伝いをすると申し出て、3人で夕食を作り食べ終えると、今日は色々あって疲れただろうから明日からに備えて早めに休みな−と言われ、リーナの部屋に通された。

 当然ながらリーナは、今夜はヘルダと一緒に寝る。明日以降は修司の分の寝具−藁をつめた布団のようなもの−を用意するので、それを使って食事をとっていた部屋で眠ることとなった。


 一日だけとはいえ、リーナの部屋を使うことに最初は辞退していたが、明日からの仕事に障りがあるほうがよくないということで渋々ながら受け入れたものの、やはり気が咎める。加えてリーナのような美少女の部屋である−。

 一度頭を振り、それ以上深く考えないようにして明日からの仕事−手伝いを頑張ろうと決心し、さっさと床について明日に備えることとした。


 −そういえばこんなに早く寝たのいつぶりだろうか?あ、それにシャワーとかもしてないや・・・−


 そんなことを考えつつ修司の意識は暗転していった。

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