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思ったより軽いのでいつもより振り回せそう

「うわすごい!」

昨日は空からしか見なかったが、実際に歩いてみると色々なものがある。

それこそ分かりやすい武器や鎧を売っている店、うまそうな匂いをさせている屋台、何の店か分からないものまで様々だ。歩いている人も、人間もいれば明らかに人間とは違う。獣の姿で二足歩行しているのとか、空を飛んでいるのとか、半分透けて向こう側がみえるのとか、圧倒されるくらいに色んなものがある。飽きない。夏祭りみたいでワクワクする。

「南地区はこっちですよ。先に志帆様の装備を整えましょう」

…ここで今気付いてしまった。あたしは重大なことを忘れていた。


お金がない。


というか、ここの通貨はどう考えても円ではないだろう。そもそも夏祭りだから小遣い程度のお金しか財布に入っていない。

「…あの、今あたしお金を持ってない」

黙っても仕方ないのでとりあえず正直に言ってみる。金の貸し借りは大嫌いなんだが、どうしようもない。丸腰で旅はできないことくらいは簡単に想像できる。

「あぁ、お金なら気にしなくて大丈夫だよ。俺は一応勇者だし、財産は困らない程度にあるから」

…勇者って金持ちなのか。いやいやいやそうじゃない。

「前に傷の手当てして貰ったし、巻き込んでしまった迷惑料ってことで、俺が責任持つから気にしないで」

確かに手当てはしたが、絆創膏を渡しただけだ。

「いや、流石にそれは。必ず返す」

「返すって言っても、元の世界に戻ったら無理になるよ」

その通りだった。その為に旅に出るんだし。

返す言葉がなくどうしたものかと考えていると、それなら、と村人Aが切り出した。

「今から行く武器屋の店主、俺が初めて旅に出た時にお世話になったんだけど、最初は必ず武器を売るのを渋るんだよね。で、必ず条件を出してくるからそれをクリアすれば俺が支払いを持つよ。…正直またあの店主の条件をクリアするの面倒くさいから」

「…分かった。それなら」

無理矢理ハンデを押し付けられた気がするが、条件を飲むより他ない。

「そういえば私たちもその方にあったことがないですね。どういった方なんですか?」

「…会えば分かる」

そんな会話をしているうちに、店の前についた。大通りに面しているが、大きい建物に挟まれていてうっかりすれば見逃しそうだ。

「どーもー」

扉を開けるとカラン、と鈴の音がした。店内は思ったより明るく、壁にぎっしりと武器や鎧が置いてある。

「…その声はエンか?」

店の奥から声がした。のそっと小さい影が見える。逆光で顔は見えない。

「久しぶり。元気?」

軽く手を上げた村人Aを見た瞬間に、小さい影が突進してきた.

「エンかぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!!!無事だったんだなぁぁぁ!!!!!」

建物がビリビリと震えるくらいの声量で叫びながらガシッと村人Aにしがみついた小さな影は毛むくじゃらのおっさんだ。たぶんドワーフとかそんな感じの人なんだろうか?笑いながら号泣してる。器用だ。

「心配してたんだぞ!戻ってこれたんだな!」

「痛いよグリガンド。色々あったけど戻ってきたよ」

おいおいと泣いてるおっさんの背中を軽く叩きながら、村人Aは困ったらように笑ってる。こいつ、本当に好かれてるんだな。

「そっちの美人さん達は?お仲間か?」

「そうだよ。一緒に戦ったサエンとサラン。それでもう1人が、俺が向こうの世界で困っていたときに助けてくれた人で、駒崎さん」

おっさんが村人Aから離れてこっちへやってきた。

「そうかそうか。エンを助けてくれたんだなぁ。本当にありがとう。何度お礼を言っても足りんなぁ」

順番にあたし達の手をギューっと握ってブンブン降っていく。かなり力があるから、サエンはともかくサランはかなり痛そうで困ったような笑顔を浮かべている。

「それでどうした?何か探し物か?」

「あぁ、彼女の武器と防具を見立てて欲しいんだ」

そう言ってあたしの方を見た。

「お嬢ちゃんの武器と防具か。そうそう自己紹介がまだだったな。俺はグリガンド。ドワーフのグリガンドと言えば武器と防具のスペシャリストさ」

胸を張って反り返る。小さいのでなんか可愛いが、そんな事言ったら失礼だろう。

「それで、見たところある程度腕はありそうだがどんな武器がいいんだ?」

「えぇと…」

「彼女のいた世界の武器に一番近いのが槍なんだ。何か良いものがないか?」

村人Aが助け船をだしてくれた。薙刀と言っても通用しないだろう。

「それならこいつはどうだ?」

 そういって身長に似合わないような力で壁から引き抜いたのはあたしの身長と変わらないくらいの長さで、かなり薙刀に近い形状になっている。

「とは言っても、お嬢ちゃんじゃぁ無理か?」

「貸して」

 『お嬢ちゃん』『無理』というキーワードに若干カチンと来てしまった。うるさいチビが。

「ホントに大丈夫か?売り物なんだからな?」

 そうは言いつつも貸してもらった。受け取った瞬間、あたしはいつも通りに構える。風がヒュンと切れる音がした。

「うおっ!?」

「うわっ?」

 反応は様々だったが、そんなことはどうでもよかった。これは思った以上にしっくりくる。すごく良い。

「…お嬢ちゃん…重くないのか?」

「全然。できれば試しに少し動きたい」

 あたしの言葉にドワーフのおっさんは顔を引きつらせながら裏庭を案内してくれた。実際に動いてみればなんとなくの感覚は掴めるだろうと確信していた。


 裏庭は想像以上に広かった。ドアから一番向こうの壁に試し切り用だろう丸太が3本立っている。

「お嬢ちゃん、エンから聞いてるかもしれねぇが、俺は武器を売るときに必ず条件を付けるんだ。それはいくらエンの恩人のお嬢ちゃんでも譲れねぇ」

 そう言って丸太の方をクイッと顎で指した。

「もしお嬢ちゃんがあの丸太を全部真っ二つにしたら、武器も防具も料金は全部タダだ」

「…できなかった場合は?」

「その時は他の条件をクリアしてもらうに加えて正規料金を支払ってもらう。こちかと慈善事業じゃなくてちゃんとした商売だからな」

「分かった」 

 そう言いうなりあたしは思いっきり薙刀もどきを振りかぶり、丸太に向かって走り、薙ぎ払った。


 ズドッスン


 たぶんそんな音だったと思う。何か重いものが落ちた時の音だ。

「…嘘だろ…」

 村人Aの呟きだけが妙に耳に響いた。


 丸太は3本ともきれいに真っ二つになった。切られた上半分がそれぞれ地面に半分ほどめり込んでいる。

「切れたぞ」

 ドワーフのおっさんは茫然とこっちを見ていたが、ハッと気を取り直した次の瞬間、大声で笑い始めた。「いやーこんな豪快なお嬢ちゃんは初めて見た‼さすがエンの恩人だ!!」

 人の背中をバシバシ叩く。セクハラで訴えるぞこのチビ。

「約束通り武器はそのまま持っていけ!それは紛れもなくお嬢ちゃんのだ!」

 さあて次は防具だなーと鼻歌まじりに店に戻っていくドワーフの後ろを付いていこうとした時、村人Aに声をかけられた。

「駒崎さん…本当にあれ、…重くなかった?」

「全然。思ったより軽いからいつもより振り回せそうだな」

「…そうか、それならいいんだ…」

 なにやら複雑そうな顔をしているが、それよりあたしはこいつにお金を借りなくて良かったな、とそんなことを考えながら、店の中へ入っていった。

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