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装備と言われても(大体一通り扱える)

さすがに昨日は疲れてたのか、目を覚ましたら日の光がだいぶ高い。完全に寝坊した。

ボーッとする頭をスッキリさせるため、部屋に備え付けてあった洗面台で顔を洗うといくらかシャキッとした。昨日寝る前に貸してもらった格好のまま部屋の外に出ていいものか考えてると、ドアがノックされた。

「志帆ー!起きてるー?」

サエンの声だ。

「おはようございます、起きてます」

ガチャッとドアが開き、サエンが入ってきた。

「おはよー!ゆっくりできた?」

「お陰さまで。よく寝れたから、体はだいぶ楽だよ。…今って何時くらい?」

聞いてはみるが、時間の単位は一緒なんだろうか?

「丁度鳥族の朝の集会が始まる頃だから、そんなに遅い時間じゃないわよ」

…やっぱり分からなかった。

「朝ごはんができたから呼びに来たんだけど、どう?食べれそう?」

「いただきます…あ、このままの格好で大丈夫?」

一応王子とかもいるし、上下スウェットらしき格好でもいいのだろうか?あたしが着ていた服はどこいったんだろう?昨日ベッド脇に置いてたんだけど見当たらない。

「大丈夫大丈夫。アンバー陛下は全く気にしないし、ガイもそこらへん無頓着だから。ついでに志帆の着ていた服はソフィーが洗濯してるよ。あ、ソフィーはスティーブと同じ我が家のメイドね。昨日は用事があってちょうどいなかったのよ」

成る程、もう1人いるのかあのぬいぐるみ。

「じゃあ行きましょ。エン君はまだ寝てるし、食べる時間はゆっくりあるわよ。それから旅の支度を整えるとしますか」

サエンと並んで食堂に行くと、そこにはこれまた美味しそうな食事がところ狭しと並んでいる。我が家は父さんの好みで和食がメインで、それ以外のジャンルの食事は滅多に出ないから新鮮な感じがする。

「おはようございます志帆様。ゆっくりできましたか?」

「おはようございます。お陰さまで」

サランは優雅に微笑み、お茶を飲んでいる。窓から差し込んでくる光が後光のようになり、まるで絵画のように見える。

「あれまぁおはようございます、異世界の嬢ちゃま。お茶はいかがかしら?」

下の方から声がした。そっちを見てみると、そこにはスティーブより一回り小さいおばあちゃん型ぬいぐるみがいた。この人がさっき言ってたソフィーだろう。三角巾と割烹着に丸い小さな眼鏡をかけている。この家の雰囲気とはかけ離れたえらく和風な感じだか、ぬいぐるみのせいか特に違和感は無い。

「えーと、冷たいお茶が欲しいです」

「うふふ、了解よ。待っててね」

…なんか和む。小さい頃からぬいぐるみとか、いわゆる女の子らしい物にはさして興味が無かったが、こうして動いてると結構可愛い。

「あ~寝た寝た~…おはよう」

大きなあくびをしながら村人Aが食堂に入ってきた。こいつ寝癖はそのままで上半身裸でやって来た。服を着ていた時は気にしてなかったが、筋肉はしっかりと付いている。それも格闘技とかで鍛えたというか、実戦的な筋肉だ。それと無数に付いている傷。そういえば勇者だって言ってたな、こいつ。

「おはようエン君」

「おはようございますエン様。志帆様もいらっしゃるし、服は着たらいかがですか?」

「…そうだった。ごめん駒崎さん、すぐ着る」

「いや普段父親とか兄の裸を見てるから気にしない」

あの2人は褌だからもっと露出度が高いしな。

もそもそと服を着ている村人Aを尻目に、あたしはソフィーが運んできてくれたお茶を飲みながら、目の前にある見た目は程よく焼けたトーストらしきものにバターっぽいものを塗って食べる。…めちゃくちゃうまい。味はパンとバターそのものだ。フワッフワのパンに塩っ気があるバターが最高に合う。まさにシンプルイズベストだ。何枚でもいける。

「それで、食べたら志帆の装備を整えにいきたいんだけどエン君も買い物あるよね?」

サエンは朝からジョッキ片手にグビグビやってる。本当に飲んべえだなこの人。

「…そういえば俺の武器と装備ってあの後どうなった?あれ2度と手に入らないぞ」

「ちゃんと回収してありますわよ。南地区のドワーフの店できちんと手入れをしてもらって、奥の部屋に保管してますわ」

「装備?」

 あれか、鎧とか剣とかそういうやつだろうか。よくゲームとか漫画とかで出てくる伝説の装備的なやつ。

「そう、俺が前の旅で手に入れた剣と鎧で、俺しか使えないやつがあるんだ。メシの後見てくる。…そういえばサエンが駒崎さんの準備って言ってたけど…駒崎さん、何か武器を使った経験って…」

「人外相手に戦ったことがないから何を使えるって言えばいいかよく分からないけど…とりあえず竹刀・木刀・弓道の弓・薙刀は一通り扱ったことがあるよ。一番経験が長いのは薙刀だな」

「…それだけ扱えれば十分だと思うよ…」

…何だか村人Aの顔が引きつっているのは気のせいだろうか。

「なぎなた?って聞いたこと無いなぁ。どんな武器?」

そうか、村人Aは向こうにいたから分かるけど、こっちの世界に薙刀は無いのか。

「槍みたいな武器だよ。形が似ている」

へー、サエンとサランが納得したような表情をしている。単に薙刀歴が長いのは姉ちゃんの『日本刀よりリーチが長いから女だったら薙刀の方が人生役に立つ』という持論のお陰なんだが。まさか本当に役に立つとは思わなかった。その次に長いのは弓だから、こっちでもかまわないんだけど。

「皆さんおはようございます」

扉の開く音がして、ガイがやってきた。昨日はゴテゴテと何か色々くっついていたが、今は何も付けていない分、村人Aと一緒で実戦的な筋肉がしっかり付いているのがよく分かる。

「おはよーガイ。ご飯できてるよ」

「おはようガイ兄さん。アンバーは?」

「陛下ならまだ寝てるよ。起きる気配もない。流石に疲れたんだろうから、そのままにしておいてやってくれ」

成る程、命懸けで逃げてきたらそりゃ疲れる。別の世界から飛ばされても疲れるが。

「ガイ様、私達は朝食の後に明日からの旅の支度をしに買い出しに出掛けますけど、一緒に行きますか?この街でしたら追っ手から見つかることも無いですし、万が一見つかったとしても手出しはできませんけど」

「そうしたいところですけど、とりあえず陛下が起きないと流石に単独では動けませんから、今は遠慮しておきます」

「んじゃ留守番お願いねー」

「承知しました」

この街はあの王国の一部では無いんだろうか?中立国とかそんな感じなんだろうか?当然だけど分からないことの方が多い。

「ねぇガイ、なぎなたって知ってる?」

「なぎなた?」

やっぱり知らない感じだ。

「向こうの世界にある、槍に似た武器だよ。駒崎さん用にこれから調達してくる」

「え?槍使いなんですか!?」

すげぇ、と思わず声が漏れている。驚いた顔でマジマジと人の顔見た後、ハッとしたように謝ってきた。

「すみません、失礼しました。女性の槍使いは見たことがなかったので、つい。ロンド帝国に女性の槍使いがいるとは聞いたことがあるんですが」

「そんなに珍しいのか?」

そうですね、と言って頷かれた。そんなものなのか。

「丁度良い物が見つかるといいですね。エルフとドワーフの多い南地区だったら、良質な武器が見つかると思いますよ」

エルフってあの耳が尖った人々だろうか?実在してるのか。ちょっと楽しそうだ。

「オッケーありがとうガイ。…そろそろ食べ終わったみたいだし、早速出発する?」

食べていたパン、おかわりまでした最後の一口をしっかり飲み込み、あたしは頷いた。

「では参りましょうか。…スティーブ、ソフィー。すみませんが後片付けをおねがいいたします。ガイ様、どうぞごゆっくり」

「いってらっしゃいんす、皆さん方」

「お夕飯までには戻ってきてくださいな。腕によりをかけますから」

2体のぬいぐるみに見送られて、あたし達は街へと向かった。

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