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ムカつくジジィにぶちギレしました

謁見の間というやつだろうか、豪華絢爛という言葉がしっくりくる。体育館並に広い空間の奥の方。ちょうど壇上で校長とかが長話するあのへん。そこにまた一目で金かかってるなと分かる豪華な椅子に、この国の王で村人Aを呼び戻してあたしも巻き込んだ張本人が座っていた。あまり威厳があるタイプではなさそうだ。そこら辺にいるうだつの上がらないしょぼくれたオッサンにしか見えない。

「よくぞ戻った、勇者エンよ」

「うるせぇクソジジイ」

「裏切り者が」

「今ここで息ができるだけ幸運だと思って下さいませ」

最初から罵詈雑言、一応王様に対して大丈夫なのかと思ったが、言われた本人も周りに控えてる連中も動じない。

「どの面下げてよくぞ戻ったなんて言えるんだ?理由次第ではこの場で切り捨てるぞ」

美人二人も何気に戦闘体制に入ってる。かなり物騒な雰囲気だ。空気がピリピリしている。

「……その件に関しては申し訳なかった。今一度そなたの力が必要なのだ」

一応口では謝ってるが、どうも態度が偉そうで傲慢な感じが拭えない。個人的にすっげぇ嫌いなタイプだな。村人A達も同じ印象を受けたんだろう、更に空気がピリピリしている上に重く感じる。

「アホかジジイ。自分がいい顔したいからって俺を生け贄にしたやつが何ほざいてる」

村人Aが剣を突き出した。うわホントに斬るつもりだ。話の全体像はよく分からんけど、とりあえずあのクソジジイが村人Aと美人達に心底恨まれてるのは分かった。ぶった切りしたいくらいには恨んでるんだなーと思うが、そんな血生臭い場面を見るのは正直嫌だ。

「『太古の統治者の称号』の現在の保持者はワシだ。殺せば全てが暴発する。そなたらの後ろにいる異界より来られた娘も、元の世界に戻る道は完全に断たれるどころか命の保証もできんぞ」

淡々と言っているつもりだろうが、口の端が微かに歪んでいる。嫌な笑顔だ。しょぼくれたオッサンだから更に気持ち悪い。

「……死ねばいいのにクソジジイが」

村人Aが憎々しげに剣を下ろし、声を絞り出す。

「……何を、どうしろと?」

クソジジイは満足そうな顔をした。生理的に無理。

「では勇者エンよ、クダンザルド王国の王である、このワシが命ずる。再び世界に害を為す『古き神々』を討伐し、世界に平穏をもたらすのだ!」

嬉々として上から目線で命令してきたこのクソジジイ。腹立たしい。この短い時間に理解不能な内容の話を聞かされ、付き合わされ、実際のところかなりあたしはイライラしている。挙げ句戻れないだの何だの言われたら不安にならない方が不思議だろう。それでもってそのイライラがこの場で一番生理的に受け付けないクソジジイな国王に向けられたのは仕方のない事だと思う。

「……さっきから黙って聞いてりゃなんなのさ」

何だか妙に体が熱い。

「こ、駒崎さん?」

あたしのイライラに気付いた村人Aが声をかけてきたが、一度口をついて出た一言は見事にスイッチになってしまった。

「戻れないとか!何なんだテメエ!勝手に巻き込むんじゃねえ!」

パーンッ!パリン!

「おまけにその上から目線!ふざけんな気分悪い!」

ガシャン!パーン!ガシャン!

「勇者とか意味分からん!分かるように説明しろやハゲ!」

ガシャーン!!バリン!

「大体キモいんじゃ!何が王だ!ただのオッサンじゃろが!」

バシャーン!バリン!ガシャン!

一通り叫んだ。少しさっぱりしたな。

「ええと……駒崎さん、その辺で少し落ち着かない?」

村人Aが恐る恐るといった感じで話しかけてきた。そういや何か合間にいろんな音が聞こえたなーと思ったら、部屋が半壊してた。豪華絢爛だった部屋の窓ガラスは全て無惨に割れ落ちるかひびが入ってる。天井のシャンデリアは鎖が切れて落ちかけているし、垂れ幕やらなんやらも無惨に落ちかけている。更に玉座も何か元の位置からずれており、豪華な装飾品も壊れている。

「……あの防御魔法、こんな使い方も出来るんですねー……」

「……使用者の意識次第ってとこね……」

村人Aも美人達も呆然としている。ついでにいうとクソジジイは玉座から落ちて腰を抜かしているらしい。その辺の家人っぽい奴らもただ呆然としてこっちを見ている。

「……今あたしがやった?」

とりあえず村人Aに聞いてみたら無言で頷かれた。……一体あたしは何をどうしたんだろうか。体か妙に暑かったが、何か関係あるんだろうか。でも気分は今までに感じたことのないくらい清々しい。爽快だ。おまけに、不思議なくらい罪悪感が無い。全く。

「そっ……その娘は何者だ!?異界の娘が何故このような魔法を使えるのだ!?」

王冠が頭からずり落ちてる。ハゲがますます眩しい。

「うるせぇジジィ!テメエが勝手に巻き込んだんじゃろうがハゲ!」

一括するとはた目にも肩が飛び上がり、脱兎の勢いでずれた玉座の裏に逃げ込んだ。……そんなに怖いのか、怖いよな。たまに周りに怖いって言われてたしな。

そのままクソジジイを睨み付けてると、村人Aがあたしの肩をポンッと手を置いた。

「駒崎さん、ここにもう用はないから行こう。……おいクソジジイ」

また肩が飛び上がったのが見えた。

「話は終わったからもういいな?……『太古の統治者の称号』は必ず返して貰う。首洗って待っとけ」

言っている事だけ聞くとどっちが悪役なんだか分からない気がする。まぁ仕方がない、あんなクソジジイ相手だとガラも口調も荒っぽくなるだろう。

「サエン、サラン、行くぞ……駒崎さんもこっち」

村人Aに声をかけられ、最後にクソジジイを一瞥して、あたしは3人の後を付いていった。




「とりあえず私達の家に行くってことでいいわよね?」

「エン様も異界のお嬢様も、バタバタしてたところにあんな不快な生物と話したからお疲れでしょう?まずはお体を休めませんか?反り血で汚れてますし」

謁見の間を出て、さっきのアフリカゾウサイズの爬虫類が待っている所まで戻ってきた。意外なことに大人しく待っている。何となく、たまに見かけるスーパーの外で犬が買い物中の飼い主を待っているのと似ているな。

「あぁ頼む。今もルルーフの街にいるのか?」

「そうよ。あそこ住みやすいし」

「何かと便利なものですから」

どうやらこれから美人宅に向かう方向で話が進んでいる。この異世界……でいいのか、まだ状況を飲み込みきれてないが、土地勘が全くない以上は大人しく着いていくしかない。ここで1人で放り出されても路頭に迷うどころか命すら危うい。

「じゃあ行きましょ!さぁ乗った乗った!」

美人、名前が分からんからチャキチャキ動くショートヘアーのこっちを仮に美人Aと心の中で呼ぼう。美人Aが爬虫類の背中によじ登っていく。

ちょっと待てこの爬虫類にどうやって乗るんだ?乗馬の要領でいいのか?先に乗った美人を見ると、ちょうど背中にある角らしきものの間に座り、他の角に引っ掻けてる手綱を握っている。成る程。

「駒崎さん、乗れる?大丈夫?」

「乗馬の要領なら平気」

さっきの美人に倣って背中によじ登り、手綱を握る。

「じゃあ行くわよー!そりゃーっ!」

ブワッと土埃が舞い上がり、思いっきりグラッと揺れる。慌てて手綱を強く握り、体制を整えた。

「うわ凄い!」

爬虫類は空を飛んでいた。風が強くて飛ばされるんじゃないかと思うが、角がうまい具合に体にフィットして結構安定感がある。あらためて景色を見てみると、そこは本当に異世界だっていうのが嫌でも分かる。

空に浮かんでいる無数の島。大きな島には町らしきものが見える。島よりもっと上の空には何か光っている魔方陣とでもいうのか?それが浮いている。その他にも、雲を突き抜けて頂上が全く見えない垂直に切り立った崖。延々と燃えている炎の壁。あり得ない物だらけだ。

「この子は早いから街までそんなにかかりませんわよー」

もう1人の美人、ロングヘアーの育ちの良さそうなお嬢様風の彼女を仮に美人Bと呼んでおこう。彼女が声をかけてくれたが、風の音に邪魔されて聞き取りにくい。どのくらいの時速かは分からんけど、相当早いんだろう。今見てる景色はあっという間に後ろに流れていく。

「駒崎さーん!本当に大丈夫!?酔わない!?」

村人Aが声をかけてくる。聞こえにくいから半分怒鳴ってる感じだ。

「大丈夫ー!」

こちらも怒鳴り返す。自分の声も聞こえにくい。それにしても、生身で風を感じて空を飛ぶっていうのは思ってた以上に気持ちいい。さすがに爬虫類の背中に乗って飛ぶなんて想像もしなかったけど。

「見えてきたー!」

美人Aの言葉に下を見る。そこには確かに街らしきものが見えてきた。これもやっぱり異世界なんだって思わざるをえない街だ。

見たこともない巨大な木を中心にして、放射状に通路が張り巡らされている。モノレールみたいなのが走っているのも見える。それでもって基本的に地面はない。湖の上にその街は作られていた。

「あそこがルルーフの街ですわ!」

「相変わらず不思議な形の街だなー!」

「んじゃあ着陸ー!」

美人Aが叫んだと同時に爬虫類が急降下した。慌てて手綱をにぎりしめる。ジェットコースターとかフリーフォールみたいな感じで楽しい。

「サエンもう少しゆっくりー!!!」

村人Aの泣き言が聞こえてくる。

「なに言ってるのエン君!!!これくらいやらないと楽しくないでしょーが!!!」

全くその通りだ。村人Aの軟弱者め。

「酔ぉーーーうぅぅーーー!!!気持ち悪りぃぃぃーーーーーーーーー!!!」

そんだけ叫べれば十分大丈夫そうだ。


爬虫類は急降下した後に街の上を何度か旋回し、木のてっぺんに近い枝に降りた。枝といっても広い。大型トラックが楽にすれ違えるくらいには広い。美人Aが爬虫類を近くの枝に繋いでいる。ホントにペットだ。

「さあ私達の家はこっちよ!着いてきて!」

美人Aが指差した方を見ると、そこにはこじんまりした家があった。童話とかに出てきそうなメルヘンな外観をしている。リスとかウサギとかが出てきそうだ。

「気持ち悪い……」

村人Aはオエッと吐きそうになりながらフラフラした足取りで家へ向かって行く。あいつは三半規管が弱いらしい。美人達と村人Aの後を追って、あたしも家へと向かった。

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