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【前編】白雪姫暗殺計画

 あるところに、「白雪姫」と呼ばれる大変容姿に優れた王女がいました。

 透けるようなプラチナブロンド、雪のように白く滑らかな肌、青空のように透き通る青い目。これらの特徴はこの王国で最も美しいとされてきました。要するに、白雪は産まれながらにしてすべての要素を兼ね備えた完璧な少女であるということです。

 しかし、そんな彼女を心の底から憎む女がいました。彼女は白雪の継母であり王妃でした。

 王妃は物心付いたときから、ずっとこの世で一番美しいのは自分だと思い込んで生きてきましたが、その一方で毎日毎日寝室の怪しげな鏡に向かって「この世で一番美しいのは誰?」と確認しなければ気が済まない、面倒くさい女でした。

 鏡は王妃に訊かれる度に「この世で一番美しいのはあなたです」と機械的に答えてきました。しかしある時、ちょうど白雪が15歳になった頃、その答えは変わりました。


「この世で一番美しいのは白雪姫です」

「はて、聞き間違いかしら? もう一度訊くわ。この世で一番美しいのは誰? ほら答えなさい」

「……はい。この世で一番美しいのは白雪姫です」


 鏡の無機質な返答に、王妃は顔を真っ赤にして怒り狂いました。


「あの小娘を、抹殺しなくては……」


 血迷った王妃は王国いちと言われる凄腕の暗殺者を大金で雇い、白雪の暗殺を企てました。昔から何かにつけて意地汚い彼女は、自分の手を汚したくなかったのです。



 暗殺者は身分を偽って白雪を森のお花畑に呼び出し、彼女を暗殺しようとしました。しかし、彼女のあまりの美しさに殺すのを躊躇いました。暗殺者が目の中をハートにして躊躇っていると、白雪は突然こんなことを言い出しました。


「あなたが誰なのか、私はよく知っております。きっとあの王妃に言われてきたのでしょう? 私もこのままおとなしく殺されるわけにはまいりませんので、ひとつ私と取り引きをいたしませんか?」


 白雪はまるですべてを見通しているようでした。暗殺者はだらしなく口をぽかんと開けたまま、白雪の話を聞いていました。


「良いですか。王妃の所へは豚の心臓でも持って行きなさい。そうすれば、あなたには王妃が払った倍の金額を差し上げます。もちろん、あなたの身の安全を保証したうえで」

「そんな……! しかし君はどうするんだい? もし城へもどったら、君は王妃に殺されてしまう」

「大丈夫です。すべては計画通りに進行します。何も心配要りません。さあ、行きなさい」


 金と美人に目がない、自分の欲望にとことん忠実な暗殺者は、あっさり白雪の言いなりになってしまいました。だって彼女の言う通りにすれば、もしかしたら何らかのご縁ができるかもしれませんからね。



 それから数日後、王妃は鏡に向かってほぼ確信した様子で訊ねました。


「この世で一番美しいのは誰?」


 ところが、鏡は顔色ひとつ変えずにこう言い切ったのです。


「この世で一番美しいのは白雪姫です」

「いい加減になさい!?」


 王妃は例のごとく怒り狂い、拳を振り上げて鏡を叩き割ろうとしました。しかし、そこであることに気がつきました。


「鏡は嘘をつかない。ということは、もしかして……白雪がまだ生きているということ?」


 王妃は問いました。


「はい。生きております。彼女は今、森の小人の家に住んでおります」


 鏡は相変わらず機械的に答えます。


「小人の家だと? では、あの暗殺者が持ってきた心臓は何だというのだ!」

「はい。それは豚の心臓でございます……フフッ」

「豚の心臓だと!? あの糞野郎、私を騙すとは!」


 王妃は茹でタコのように真っ赤になって怒りました。白雪を殺し損ねた暗殺者を生かしてはおくまいと思い、彼を騙してもう一度呼び出そうとしましたが、不思議なことに、彼は不慮の事故で死んだことになっていました。

 怪しく思った王妃は、鏡にあの男は本当に死んだのかと訊ねました。すると、鏡は確かに死んだと言い切りました。


「何てことだ。では、私はこの怒りをどこにぶつければよい!」


 王妃は眉間に深い皺を寄せて考えました。


「そうだ。もう私がやろう。初めから他人なんぞに任せているからいけない。たしか、白雪は森の小人の家にいると言ったな」


 王妃はついに自分で白雪を抹殺することに決めました。それから秘密の地下室へ行って毒リンゴを作りを始めたのです。


「白雪め、馬鹿で純粋なお前は疑いもしないだろう。継母であり王妃であるこの私が、毒リンゴを持ってお前の所へやって来るだなんて、想像すらしていないだろう! 大人の邪悪さを思い知るがいい」


 王妃は出来上がった毒リンゴをかごに入れ、知り合いの魔女の家に行きました。

 王妃は魔女に、自分を一時的に老婆にしてくれるように頼み込みました。


「いいかい、一時的にだからね」


 王妃は魔女に念を押しました。


「またあんたかい。いったい何を企んでるのか知らないけど、この魔法は夜の12時まで解けないようにするからね」


 魔女はそう言って王妃に魔法をかけ、しわくちゃの老婆にしてしまいました。


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