プロローグ
4月ーー
出会いと別れの季節。
真新しい制服を着て桜並木の道を歩くーー
暖かなそよ風が頬を優しく撫で、鳥たちの鳴き声が聞こえる。
カバンも革靴もすべて中学の頃のものと新調し、気分までかなりいい感じだ。
そうーーおれは中学の時とは違うんだ。
変わるんだ。なにもかも全て変わる。
親にあれだけしつこく頼んで、隣町の高校に進学させてもらったんだ。
あのころの俺を知るやつはもう、ここにはいないーー
聞くも悲しい、知るも悲しい中学時代を経験した俺は、いわゆる高校デビューするために隣町の高校を受験したんだ。
偏差値も高く、なかなか有名な進学校なだけにかなりの苦労をした。
しかし、それだけの価値は間違いなくあった。
なぜなら!超暗黒的な中学時代を以下略ーー
ともかくーー同じ轍は二度と踏まないーー
誓ったんだ。
一般的な人間にはないこの能力を隠し続けようとーー
新入生でにぎわう校門に足を踏み入れると、空気ががらっと変わった気がした。
同じ中学の友人は1人もいないが、そんなことはどうでもいい。
いなければつくればいいんだから。
まあ、それができなかったから隣町まで着てんだけどね泣いてないからねきっと多分!
気後れしないようにーー
間違ってもあのことだけはーー
深く息を吸い、体育館前に張り出されたクラス割りを見に前へ進んだ。
「どんなことがあっても、幽霊が見えるなんていわないからな!」
そう、小声でぼそっと言いながら、クラス割りに目を向けるのであった。