第玖話
「ここは?」
こころ龍之介、声に首を傾げる。
【こころ龍之介】
「ん?あれ?今の女の子じゃなくって、中年のおっさんの声・・・。スタッフ、箱の扉押さえて!ディレクター、ちょっと来て。演出と違うんだけど」
【ベス】
「ホントですね、先生。女の子登場って、ココに・・・」
ディレクター、こころ龍之介に事情を説明する。
こころ龍之介、頷く。
会場、騒ぎ出す。
【こころ龍之介】
「会場の皆さん、お静かに。スタッフ、そのおっさん引き止めて。扉から出さないで」
【謎の声】
「おい、ここドコなんだよ。なんで開いた扉が閉まるんだよ」
【こころ龍之介】
「申し訳ない、時空間接続を間違えた様だ。元に戻すから、離れてくれ」
【謎の声】
「おい、待て。一体何の事だ?ココ、管理局の便所じゃないのか?」
こころ龍之介、何かに気付く。
【こころ龍之介】
「あのー、非常に恐縮なんですが、お名前だけ頂いていいですか?」
【謎の声】
「なんなんだ、私はワカツ・・・」
【こころ龍之介】
「はい、さようならー」
箱、光が消える。
【こころ龍之介】
「あー、ヤバかった。ミハエル、ちょっと来て」
ミハエル、ステージの上に。
【ミハエル】
「先生、どうされました?」
こころ龍之介、ミハエルに耳打ちする。
ミハエル、にやにやしながら頷く。
【ミハエル】
「その程度でいいんですか?消す事もたやすいですが」
【こころ龍之介】
「作者的には使い易いから、消すのはマズい」
【ミハエル】
「では、ご依頼通りに。報酬頼みましたよ」
【こころ龍之介】
「カリブでのバカンス、了解した」
ミハエル、ステージから消える。
ベス、不思議そうな顔。
【ベス】
「何だったんですか?今の一連?消す、とか言ってましたけど・・・」
こころ龍之介、ベスにニッコリ笑う。
【こころ龍之介】
「ベス、世の中には知らない方が幸せ、って事もいくつか在って。今のは、その1つ。理解った?」
【ベス】
「了解りました。私は何も見なかった。何も聞かなかった。コレでいいですね?」
【こころ龍之介】
「ベス、君は利口だね。僕はそんな女の子大好きだよ。くっくっく」
会場、何もなかったよなーとざわつく。
こころ龍之介、何か思い付く。
【こころ龍之介】
「ここで読者様に挑戦状です。私、こころ龍之介はミハエルに、誰に対して何をする事を依頼したでしょう?また動機は?解答をコメント欄に書いて下さい。1番正しい正解者には、超豪華プレゼントを口止め料としてプレゼントいたします。締め切りは6月末日正午までです。正解もその時点で発表します」
【ベス】
「とりあえず、アヤしいですね」
【こころ龍之介】
「まあね。さて、今度こそ、時空間接続が上手くいったようだ」
ステージ中央の箱が再び光出し、ガタガタ震え出した。
【謎の声】
「ここは?」
こころ龍之介、箱の中から聞こえる声の主が、女の子なので安心する。
【こころ龍之介】
「今度、上手く行った様だね」
箱の扉の隙間から、光が零れだす。
扉が勢いよく開き、光が人型に集約されていく。
【こころ龍之介】
「こほん。会場の皆さん、大変お待たせしました。18年の時を越え、来て頂きました。本日、最後の超ースッペ~シャルなゲスト。“禁断のくらら・アーリーデイズ”主人公、天猫くららさんの登場です。拍手でお願いします!」
会場、溢れんばかりの拍手!
光がゆっくりと消え、完全に女の子に変化。
“三獣士”、固まる。
“マルスの盾”、固まる。
天猫くらら、ゆっくり目を開け、首を傾げる。
【天猫くらら】
「ここは?」
“三獣士”、ダッシュでステージへ。
“マルスの盾”、ダッシュでステージへ。
【鉄、真、JJ】
『お嬢!』
【ガブリエラ、ミハエル&マルスの盾隊員】
『姫さま!』
天猫くらら、もう一度首を傾げる。
“三獣士”、天猫くららの前で立ち尽くす。
“マルスの盾”、片膝を付き、臣下の礼をとる。
【天猫くらら】
「あれ?ここって“ZOO”だよね?さっきまで誰もいなかったのに?」
【鉄】
「“お嬢”、今まで何処いっててん!心配したやろがぁ~」
【真】
「何をしようとかまいわせんが、連絡ぐらいしろ。“お嬢”」
【JJ】
「ホントだョ、皆んな捜し回ったんだカラ」
JJ、天猫くららの両肩を掴もうとする。
ガブリエラ&ミハエル、動く。
ミハエル、JJの喉元にフォークを突き付ける。
ガブリエラ、天猫くららとJJの間に割って入る。
【ミハエル】
「手荒な事はしたくないけど、それ以上動くと死ぬよ。貴方」
【ガブリエラ:暴走モード】
『下がれ!キサマごとき下郎が、直接話など出来る御方ではないわ。ましてや触るなど。無礼な!下がれ、下がれ!』
天猫くらら、なんだか解らないが、知った顔が脅されている事にキレる。
天猫くらら、ガブリエラの肩をつつく。
ガブリエラ、振り返る。
【ガブリエラ:暴走モード】
『はい、“姫さま”♡』
パシッ!
天猫くらら、ガブリエラにビンタ。
ガブリエラ、頬を押さえ立ち尽くす。
天猫くらら、踏み込むとミハエルの持つフォークを薙ぎ払う。
フォーク、こころ龍之介の顔の数ミリ横を掠め、ビヨヨーンと壁ち突き刺さる。
こころ龍之介、へたりこむ。
パシッ!
天猫くらら、今度はミハエルにビンタ。
ミハエル、頬を押さえ、ガブリエラと同じ様に立ち尽くす。
【天猫くらら】
「アンタ達、さっきから訳分かんない言葉喋って、そもそも誰?ぶっそうな事して、アタシの大事なツレに何するの!」
【カブリエラ:暴走モード】
『“姫さま”、そんな・・・、あんまりです・・・』
【ミハエル】
『お忘れですか?貴女さまをお護りするためだけに・・・』
ガブリエラ、様子がおかしい事に気付く。
【ガブリエラ】
『ミハエル、待て。この娘、“姫さま”に姿形は非常によく似ているが、何かが違う。何かは理解らないが・・・』
【ミハエル】
『確かに・・・、その様に思われます。姉上』
ガブリエラ、天猫くららに向くと深々と頭を下げる。