第陸話
【こころ龍之介】
「さて、この大座談会も残すところ僅かになって参りました」
【桜子】
「そうなんですか?」
【こころ龍之介】
「うん。でも今日、こちらに来る事が出来ない人が2人いまして、メッセージを預かっております。桜子、読んでやってくれるか?」
こころ龍之介、一通の封筒を桜子に渡す。
桜子、封筒を開け、便箋を取り出した。
【桜子】
「では、読みます。・・・・・・・・・、って何も書いてませんが」
【こころ龍之介】
「そうなんだ、まだ目覚めてないんだよ、だから、白紙」
【桜子】
「先生、これは誰からの手紙ですの?」
【こころ龍之介】
「これは、瑠奈の恋人の正樹からの手紙なんだ」
【桜子】
「そうだったんですか・・・。先生、お見舞い行って来られたんですか?」
【こころ龍之介】
「あぁ、様態は相変わらずだったがね。で、これは作者からの会場の皆へのお願いだ。大座談会がお開きになる前に、入口脇に募金ボックスを置いておくので、すまんが気持ちでよいので、入院費用のカンパをしてやって貰えないか?桜子、それを瑠奈に渡してやってくれ。頼む」
会場、入れるぞーと拍手。
こころ龍之介と桜子、会場に向かって頭を下げる。
【桜子】
「かしこまりました、先生。必ず」
【こころ龍之介】
「ありがとう。作者としても、瑠奈には、幸せになって貰いたいのだよ」
【桜子】
「そうですね、私も同感です。あっ、もう一通は?」
【こころ龍之介】
「これは日本語で書かれてないんだ」
【桜子】
「あら、わたくしだって、英語、フランス語、スペイン語位は読めますわよ」
桜子、こころ龍之介から封筒を受け取り、開ける。
桜子、固まる。
【桜子】
「これは?ドイツ語に近いように思いますけど、ドイツ語ではありませんね?ごめんなさい、私にはまだ無理です」
【こころ龍之介】
「自分の足りない所を知り、認めるのは大事な事だよ。そこから成長が生まれる。困ったなぁ。真とミハエル、ちょっと来てくれるかい?」
ミハエル、再びステージの上に。
真、軽くため息を吐きステージへ。
【こころ龍之介】
「いやー、作品中ではまだ実現出来ていない顔合わせだが、タイプの違う長身長髪の男前が二人並ぶ組み合わせは、なるほど、確かに見ていて美しいな。腐女子の人達が、BLにハマるのも理解出来る。そうは思わないかい?桜子?」
桜子、固まっている。
桜子、祈る様に手を組み、目がハート。
えっ、桜子、もしかして、暴走・・・。
【桜子:暴走モード】
《真さま。真さま。真さま~!あぁ、本物の真さまなのね。お助け頂いて以来、ずっと、ずっと、ずーっと、桜子は貴方さまをお慕い申しておりました♡》
【こころ龍之介】
「おぃ、桜子?」
こころ龍之介、桜子の目の前で手をブンブン振る。
桜子、反応なし。
ミハエル、なれなれしく真の肩に手をかける。
刹那。
【桜子:暴走モード】
「先生、邪魔」
桜子、こころ龍之介を吹っ飛ばす。
【こころ龍之介】
「ふぎゃ・・・っ」
桜子、ミハエルに向かって歩く。
【桜子:暴走モード】
「下郎っ!私の真さまに、気安く触るなぁぁーー!」
桜子、鉄扇を持ち、ミハエルに切りつける。
ミハエル、紙一重でかわすと面白がって、今度は真の肩を抱く。
【真】
「おい、ミハエル君、やりすぎだ。危険だぞ」
【ミハエル】
「面白いじゃありませんか、ほんの余興ですよ。くくっ」
真、ため息。
ミハエル、楽しそう。
桜子、さらに逆上。
会場、ミハエルVS桜子の賭けが始まっている。
【桜子:暴走モード】
「こうなったら、見せてあげるわ。地獄に逝きなさい」
桜子、目を閉じる。
こころ龍之介、ヤバイと感じたのか、真に目で合図。
真、やれやれとポーズを取り、桜子の目の前に。
桜子、目を開いた瞬間、目の前数センチの真に驚く。
【真】
「落ち着け」
真、そう言うと桜子の肩を抱き、唇を奪う。
桜子、目一杯目を見開くと静かに閉じ、真にしな垂れかかる様に気を失った。
【こころ龍之介】
「こころ、ローズ、ちょっと来てくれ」
こころとローズ、ダッシュでステージへ。
【こころ】
「あー、桜子の暴走、初めて見たったい」
【ローズ】
「ホント、ビックリシマシタ」
【こころ龍之介】
「まぁ、乙女の恋心って、ヤツだ。連れてって、介抱してやってくれ」
【こころ&ローズ】
「ハイ」
桜子、こころとローズに抱えられステージより退場。
【こころ龍之介】
「お見苦しい所を」
こころ龍之介、ぺこりと頭を下げる。
【こころ龍之介】
「話が反れてしまいましたね。真、これを見てくれ」
こころ龍之介、真に封筒を渡す。
【真】
「龍之介、コレはやはりドイツ語ではないな」
【ミハエル】
「ちょっと見せて頂けますか?」
ミハエル、手紙を見て固まる。
【ミハエル】
「こ、これは、クインシーズ|(クインシア語)」
【こころ龍之介】
「やはり、そーか。ミハエル、何と書いてある?」
【ミハエル】
「読みますよ。こころ龍之介様、せっかく大座談会へのご招待頂いておりますが、やはり体調がいまひとつすぐれません。真に残念ですが、今回は見送りさせて頂きます。皆さまのご幸運を。クララ」
【こころ龍之介】
「はぁ、しょうがない。顔色イマイチだったんだよなぁ。とりあえず、料理詰めて持って行こう」
ミハエル、ワナワナ振るえている。
【こころ龍之介】
「ん?どうした?ミハエル?」
【ミハエル】
「この手紙は、我らが“姫さま”の手による物では?」
こころ龍之介、あっさり答える。
【こころ龍之介】
「そうだよ」
ミハエル、こころ龍之介の首を両手で捕まえると、ブンブン振る。
【ミハエル】
「吐け!“姫さま”は何処にいる?キサマ、死にたくなければ、吐け!」
【こころ龍之介】
「くっ、苦しい・・・」
真、止めに入る。
【真】
「止めろ、ミハエル君。龍之介が死んでは、全てが無くなってしまう。落ち着くんだ」
ミハエル、龍之介から手を離す。
【ミハエル】
「先生、どういう事か説明してもらいましょうか?」
【こころ龍之介】
「けほっ、今日はホントによく死にかける・・・。あのなー、ミハエル。此処に“クララ姫”登場してみ?ぜーんぶの話、終了してしまうやろがぁー!そんなモン、作者の事情に決まってるやろ。そんな終わりかたしたら、読者に申し訳が立たんわ。キミのカッコイイシーンも全部カットや。“姫さま”絡むと、キミやガブリエラは感情的になるのも理解るが、それは本編で解決しよ」
【ミハエル】
「確かに。作者はともかく、愛読者さま、特にボクのファンには申し訳は立たないな。それは困る。了解りました。本編でお救いするとします」
【真】
「それがいい」
【こころ龍之介】
「理解ってくれたか。すまんな」
こころ龍之介、ベス達のファンサービスが終わっている事に気付く。
【こころ龍之介】
「真、ミハエル、ありがとう。下がって頂いて結構だ。ベス、こっち来てくれるかい?」
真とミハエル、手を上げて挨拶し、ステージから下りる。
ベス、駆け足でステージに戻る。