第拾陸話
【こころ龍之介】
「いや、それは本編違うし・・・」
こころ龍之介、顔が少し引き攣る。
【くらら】
「リュウくん、出来るの?出来へんの?」
【こころ龍之介】
「善処します・・・、これで良いかな?」
【くらら】
「んー、あたしは納得出来ないなぁ。リュウくんだったら、何とかしてくれると思ったんだけどなぁ・・・」
くらら、涙ぐむ。
【こころ龍之介】
「あわわっ、あかん、あかん。何とかする、何とかしますから、泣かんとって・・・」
くらら、安心してにっこり笑う。
【くらら】
「さすがやわ、見込んだだけの事はある。ゆーとくけど、未来のあたしはあかんよ。今のあたしとハルナちゃんとの共演やで、理解った?」
【こころ龍之介】
「う・・・ん」
【くらら】
「うん?うんと違うでしょ?」
こころ龍之介、再度、顔が引き攣る。
【こころ龍之介】
「はい・・・」
くらら、女神の様に微笑む。
【くらら】
「よしっ、リュウくん。顔出して、今度は叩かないから」
こころ龍之介、恐る恐る顔を差し出す。
くらら、両手でこころ龍之介の顔を捕まえると、引き寄せこころ龍之介のほっぺにキス。
【こころ龍之介】
「!!!!!」
【くらら】
「お願いね♡」
こころ龍之介、へたり込む。
こころ龍之介、顔が真っ赤、更に頭からプシューっと湯気。
【くらら】
「ハルナちゃん、共演出来るみたい。良かったね~」
ハルナ、くららの一連の動作に、呆れつつも感動する。
【ハルナ】
「すっ、凄い・・・、凄いです、くららさん、いや、くらら姐さんって呼ばして下さい」
ハルナ、手を差し出し、くららと握手。
会場一同、何だか解らないが大拍手。
こころ龍之介、相変わらず呆けている。
くらら、こころ龍之介に近付き、顔をぺちぺち。
【くらら】
「リュウくん、リュウくん?」
こころ龍之介、まだ呆けている。
くらら、更に顔をぺちぺち。
【くらら】
「しゃーないなぁ、超ー特別なんだからねっ」
くらら、顔をこころ龍之介に近付けると唇に軽くキス。
こころ龍之介、これとないくらい目を見開く。
こころ龍之介、コンクリートブロックで殴られた様に、現実に引き戻される。
会場一同、え”ーー。
【こころ龍之介】
「!!!!!!!!!!」
【くらら】
「お目覚めになられましたかな?お姫さま?」
【こころ龍之介】
「!!!くっ、くららちゃん・・・、キミはなんて事を・・・」
【くらら】
「だってキスって、外国では挨拶って聞いているし、この前見た映画で、パニック起こしている女の子をキスで止めてたし・・・、違うの?」
くらら、不思議そうな顔をする。
こころ龍之介、かなり深いため息。
【こころ龍之介】
「あんな、くららちゃん」
【くらら】
「何ぃ?」
【こころ龍之介】
「先に言っておくけど、怒らんとってな」
【くらら】
「だから、何ぃ?」
【こころ龍之介】
「それはな、思っきし勘違いや・・・」
【くらら】
「へっ・・・?」
こころ龍之介、再度、かなり深いため息。
【こころ龍之介】
「いくら外国でもキスは頬っぺたにしかせーへんし」
くらら、顔が紅くなる。
【こころ龍之介】
「多分、見たのは恋愛映画違う?あれは演出や・・・」
くらら、顔がさらに紅くなる。
【こころ龍之介】
「理解った?」
【くらら】
「こっ、この・・・、変態のロリコンがぁー、あたしのファーストキス返せぇ~~~!」
くらら、基本通りのアッパーカット。
こころ龍之介、くららのアッパーカットが、見事にこころ龍之介の顎にクリーンヒット。
こころ龍之介、綺麗な放物線を描いて落下。
【こころ龍之介】
「ふぎゃっ・・・、悪かった。悪かったって」
こころ龍之介、謝る。
【くらら】
「それが謝る時の態度かっ!」
こころ龍之介、土下座で謝る。
【こころ龍之介】
「ホンマ、悪かったって」
【くらら】
「言葉が違うっ!」
【こころ龍之介】
「ごめんなさい・・・」
【くらら】
「ついでやから、言わせてもらうわ。この、アホっ、ボケっ、カスっ、変態っ、ロリコンっ、分からず屋っ、一言多いねん!帰ってくんなっ!」
【こころ龍之介】
「ホントにごめん・・・」
ぱちん。
くらら、こころ龍之介をビンタ。
くらら、頬に一筋の涙。
【くらら】
「反省しろっ」
こころ龍之介、唖然。
くらら、涙を袖で拭く。
【くらら】
「みんな、下でお茶しよ」
くらら、ステージ上の当選者を引き連れ下りる。
こころ龍之介、ぽつーんと一人ステージの上。
ミハエル、見兼ねてステージの上に。
【ミハエル】
「先生、しっかりして下さい」
【こころ龍之介】
「みっ、ミハエル~、お、俺っ、俺っ・・・」
【ミハエル】
「先生っ、とりあえず下に降りて、くららちゃんに、もう一度、謝ってこられたら如何ですか?」
【こころ龍之介】
「う、うん。そっ、そうやな、そうするわ・・・」
【ミハエル】
「最後は全員での記念撮影だけですよね?私が仕切ってさしあげますから」
こころ龍之介、台本の最後の二・三ページを破ってミハエルに渡す。