第拾話
【ガブリエラ】
「貴女のご友人に大変失礼な事をして、申し訳ない。あまりにも貴女が、我らの敬愛する“姫さま”に生き写しだったので、取り乱してしまいました。許して頂けませんか?お嬢さん」
ミハエル、ガブリエラに続き頭を下げる。
【ミハエル】
「申し訳ありませんでした」
天猫くらら、ガブリエラとミハエルに笑いかける。
【天猫くらら】
「理由があったのは、理解出来るけど、やっちゃいけない事があるのよ。反省しているなら、それ以上何も言わないわ」
【ガブリエラ】
「はい。宜しければ、お名前をお聞かせ頂けませんか?私は、クインシア王国・王立騎士団に属します“マルスの盾”が一員。ガブリエラ・K=タイラーと申します。こちらは、我がタイラー家次期当主にて弟の」
【ミハエル】
「ミハエル・M=タイラーと申します」
【天猫くらら】
「私は、天猫くらら。くららでいいよ」
天猫くらら、微笑む。
カブリエラ&ミハエル、驚く。
【ガブリエラ】
「先程、お名前を聞いた時、まさかとは思いましたが、やはり名前が同じとは・・・。何たる偶然・・・」
【ミハエル】
「姉上、まさに神のお導きとは、この事・・・」
ガブリエラ、少し照れて話す。
【ガブリエラ】
「くららさま、一つだけお願いしたい事があるのですが・・・」
【天猫くらら】
「ガブリエラさん、アタシ、さまなんて柄じゃないよ。呼び捨てでいいよ。で、何?」
【ガブリエラ】
「めっそうもございません。せめて、“さん”ぐらいは付けさせて下さい。でないと失礼に当たります。私の事は、ガブリエラと呼び捨てで結構ですから」
【天猫くらら】
「面倒臭いなぁ、だったら、くららちゃんでいいよ。で、どうしたいの?」
ガブリエラ、更に照れる。
【ガブリエラ】
「では、くららちゃん。あのぅ、その・・・」
【天猫くらら】
「うん」
【ガブリエラ】
「無理なら無理と言って下さい、くららちゃん」
【天猫くらら】
「うん」
【ガブリエラ】
「1度だけ、たった1度だけで結構ですので・・・、ギュッとさせて頂いてかまいませんか?無理なら諦めますから・・・」
天猫くらら、コクンと頷く。
天猫くらら、微笑み、両手を広げる。
【天猫くらら】
「おいで、ガブリエラ」
ガブリエラ、天猫くららをギュッと抱きしめると、崩れ落ち、泣く。
【ガブリエラ】
「うっ、うっ、ぐすっ・・・。ひっ、“姫さまぁーー”」
天猫くらら、ガブリエラの頭を優しく撫でてやる。
天猫くらら、無意識に言葉を発する。
【天猫くらら】
「いつの日か・・・、逢えるから・・・、待っててくれる・・・、ガブリエラ・・・」
ガブリエラ、無意識に言葉を発する。
【ガブリエラ】
「ん、ぐすっ、はい・・・、待ちます・・・。待ち続けます・・・。“姫さま”のご命令ならば・・・」
【天猫くらら】
「ありがとう・・・、ガブリエラ」
天猫くらら、カブリエラの頬にキスをする。
カブリエラ、納得した様子で涙を拭い、立ち上がる。
ミハエル、無意識に膝まずくと、天猫くららの手を取り、甲にキスをする。
【ミハエル】
「ご無事をお祈り申し上げます・・・、我が“姫”・・・」
天猫くらら、ミハエルの頬にもキスをする。
ミハエル、頬に一筋の涙キラリ。
【天猫くらら】
「アナタもね・・・、ミハエル・・・」
ミハエル、目頭を押さえ立ち上がる。
【カブリエラ】
「我らが“姫さま”によく似たくららちゃん。ガブリエラ、一生忘れませぬ。ありがとう」
ガブリエラ、もう一度深々と頭を下げると、ステージを下りる。
ミハエルと“マルスの盾”、同じく深々と頭を下げ、ステージを下りる。
こころ龍之介、立ち上がり、天猫くららに顔を向ける。
【こころ龍之介】
「くららちゃん、このこころ龍之介、作者として礼を申し上げる。ありがとう」
天猫くらら、こころ龍之介の顔をマジマジと見る。
【天猫くらら】
「ん?あ”ーっ、どっかで見た顔だと思ったら、リュウくん?」
会場、訳がわからない驚きに包まれる。
【天猫くらら】
「帰ってきたんだ。お帰り、リュウくん。クラスのみんな、寂しがったんだよー、私も含めて。ホント」
天猫くらら、今更ながら周りを見回す。
【天猫くらら】
「で、何?リュウくんも、鉄やんも、委員長も、JJも、何で揃いも揃って、オッサンなの?理解った。アタシを驚かそーって、えーっと、何て言ったっけ?そうそう、サンライズね?」
天猫くらら、真剣にサプライズとサンライズを間違える。
【こころ龍之介】
「くららちゃん、それはサンライズじゃなくって、サプライズだよ」
【天猫くらら】
「サンライズだよ。ね?鉄やん」
天猫くらら、微笑んでいるが、目が笑っていない。
鉄、焦る。
【鉄】
「本物や・・・」
【真】
「あぁ、あの真剣に、間違いをそのまま貫き通すのは、まさに“お嬢”。しかも・・・」
【JJ】
「2年の1学期バージョンだヨ。ボク達が伝説を作る前の・・・」
【天猫くらら】
「ちょっと、何いってるの?訳わかんない。仮装はもういいから、JJ、その似合わないヒゲ取りなさいよ」
天猫くらら、JJのヒゲを引っ張る。
【JJ】
「ちょ、ちょっと、“お嬢~っ”、痛っ、痛いサァ」
JJ、涙目。
天猫くらら、腕を組む。
【天猫くらら】
「えっ、本物?そう言えば、リュウくんも身長凄く高くなってる。鉄やんがオッサン臭いのは、相変わらずだけど。どーゆー事?説明しなさい、委員長?」
鉄、オッサンと言われ、少し凹む。
【真】
「お嬢、信じられないかも知れないが、ここは“未来の世界”だ」
【天猫くらら】
「え?委員長、もう少しましな冗談を覚えた方がいいわね」
【こころ龍之介】
「真、僕が説明するよ」
【真】
「スマンな、リュウ」
こころ龍之介、天猫くららに向く。
【こころ龍之介】
「くららちゃん、簡単に言うと、ココは“夢の世界”みたいなモンだと思ってくれたら、理解しやすいかな。だから、みんな、オッサンなんだ」
【天猫くらら】
「ふーん、それで?」
【こころ龍之介】
「で、みんな、特に僕は、キミに会いたくて、この世界に遊びに来て貰ったって訳さ」
【天猫くらら】
「リュウくん、アタシに会いたかったって?それって告白?照れる~~」
天猫くらら、照れてこころ龍之介を引っ叩く。
バシっと、気持ちいい音。
【こころ龍之介】
「ふぎゃっ」
こころ龍之介、吹っ飛ぶ。
天猫くらら、慌てる。
会場一同、一緒に慌てる。