世界の始まりを知った人間の朝に
掲載日:2017/01/30
鑑の奥に、あなたはいない。
あなたは夜に降りたその鮮やかな朝蔭の思い出を飾り、
死を視た静かな夢に、
いつまでも、ヨゾラが銀十字の夢を來る鼓の日々を、
絃はもつれては奏でる。
鑑の奥に、あなたはいない。
いらっしゃるのは、慕っては執拗に繰り返される夕の罪に浄化する鑑を。
あなたはどこにいらっしゃるの?
と、云う、そーんな朝だった。
朝陽がカーテンから漏れて黄金色の麦畑が窓から見えた。
それは過去にあった死の鑑で、
だれもかれもが混沌とした渦巻く夢に、あなたがいらっしゃるのだ。
朝の始まりが奏でられては夢も奏で、
第1ヴァイオリンが旋律を奏で、
第2ヴァイオリンがツミを補い、
さあさ、朝だよ。
ねぇ、みんな起きなよ?
朝だよ?
朝にあなたがいらっしゃるのだ。
それはまだ世界が若かったころの希望で、おぞましくも残酷な忘れられた涙の跡を、あなたは知っているのだ。
ねむりねむる。
ねむるよ。
願い、叶い、そして時が止まったあの朝のヒカリの奥に、静かな雨が降っていた。
夕の雨はまだぬるく、ツミを流すようなぬるさだった。
流れては消え、そして死に至る。
美しくも奏でられた喜劇の中に朝があった。
朝の前に朝はなく、朝の後にも朝はなかった。
それは世界の始まりを知ってしまった人間がふと瞬きのうちにみた希望かもしれない。




