号砲
初めての投稿です。あれ?なんかおかしいぞ?と思っても、穏やかな心でご容赦ください。
高級そうな楕円形の大きな机に、八脚の椅子。
両側の直線部分にそれぞれ四人と三人。扉から遠い方の曲線部分に一人座っている。
曲線部分の男以外の七人は皆緊張した様子で静寂に耐えている。
壁に掛けてある振り子時計が午前八時を知らせる。
それを聞いた曲線部分の男が口を開いた。
「よくぞ来てくれた主人公候補諸君」
◇◇◇
茜大輝は封筒を手に持ち、歓喜の声を上げていた。
「マジかよ!?オレが大星台に合格!?」
大星台学院高校とは全寮制の名門校であり、県外からも多数の入学志望者がいる。
偏差値も70を超えるため、バカである大輝が合格するとは思ってもみなかったのだ。
中学最後の一年間は猛勉強したが、それでも模試の結果は良くて中の中だった。それなのに合格しているという事実に疑問を持つが、すぐに「ま、いっか」とそれを脇にやるあたり大輝はやはりバカである。
「やっと、会えるかもしれないんだな」
そもそも大輝が何故身の丈に合わない大星台を目指したかと言えば、中学時代の周りの雰囲気に嫌気がさしたからというのもあるが、小学校時代の初恋の相手を追いかけたかったからだ。
あの子の長い天然の金髪、すらりとした手足、夏の空のような青い瞳、そして天使のような柔らかい笑顔。そんな思い出に浸っていると、あっという間に入学までの時間は過ぎて行った。
◇◇◇
大輝は真新しい制服に身を包み、意気揚々と大星台学院高校の土を踏んだのだが。
「このままじゃダメだよな…」
男子トイレ内にて、鏡に向かって服装を正していた。
薄い色のブレザーも、紺色のネクタイも全く乱れていないのだが。
というのも、まず昇降口までの道で周りの頭のよさそうな男女に肩身が狭くなり、受付で名前を言った後教えられた教室まで小さくなりながら歩き、やっとのことたどり着いた教室で、真っ先に声をかけてきた男子の爽やかさにノックアウトされ、トイレへ逃げてきたのである。
勇気を奮い立たせて教室まで戻ろうと、踵を返した丁度その時。
「初めまして。茜大輝さんですね?」
急に声をかけられた。
驚き半歩後ずさる大輝。
大輝が驚いたのは急に声をかけられたからというだけではない。その声の主が、スーツ姿の女性だったのだ。
「そ、そうですけど…ここ、男子トイレですよね?」
大輝は慌ててそう訊く。
「では茜大輝さん、私についてきてください」
女性はそれを相手にせず歩き出したので、大輝は黙って女性の後を追うしかなかった。
◇◇◇
大輝が連れて行かれた先の会議室らしき部屋で椅子に座ってひたすら待っていると、八時を知らせる振り子時計の音が聞こえた。
すると曲線部分に座っている男性が口を開いた。
「よくぞ来てくれた主人公候補諸君。今から君たちには、あるゲームを行ってもらう。今からそのルール説明を始める」
男性のこの言葉が、大輝たち七人の高校生活の始まりを告げる号砲となった。
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