なけなしの100円
俺の財布の中にはもう100円玉が一枚しか入っていなかった。
給料日の25日まであと3日ある。
喉が渇いた。
ここにある、自販機ならば100円で缶ジュースが買える。
おもむろに、財布から100円を取り出した。
昭和53年生の小汚い100円だ。
手のひらに乗せると、100円と言うものは実に軽い。
これ一枚で、質量が10倍以上のものが買えることがあるから不思議だ。
あっ!?
思わず手が滑って、100円をコンクリートの地面に落してしまった。
縦になったその銀貨は、コロコロと俺から逃げるように転がって行き、よりにもよって開きそうもない道路端の溝の隙間に転がり込んで、ぽちゃんと音を立てた。
今日は本当についていない日だ。