ありきたりな話し
「バーカ、こんな漢字もわかんねえのか、間違えてるぜ」
「うるさいな」
雛子が日直の日誌を書いていると、幼馴染の将也はいつの間にか、机の前に立っていた。
じっと雛子を見つめ、雛子が何か書くごとに、悪態をついている。
放課後の教室、時間も遅いため、他の生徒は、皆帰ってしまい2人きりだ。
「はあ、まだ6月なのに今日も熱いな」
雛子がハンカチで額に流れる、汗を拭く。
「オイ、さっさとしろよ」
「もう!私がやることに、いちいち文句言わないで!」
「なんだと」
「大体将也は、教室に何も用はないんでしょ?なんでいるの?」
将也は、一瞬言いづらそうに眉をひそめた。
「……こんな時間に、女が1人で帰るなんて…危ねえだろ」
「えっ?」
意外な将也の言葉に、雛子の胸が、ドクンと音をたてた。
「ほら、後はそこ書いたら、終わりだろ早くしろ」
「…うん」
「どうした?やけに素直じゃねぇか」
「そ、そんなことないよ!」
「…ふーん」
そう言い終わると、将也は黙ってしまった。
雛子はまだ鳴りやまない心音を、誤魔化すように、また日誌を書き出した。
「……よし、終わった! 私職員室に、日誌出しに行ってくるけど…」
雛子はチラッと将也を見上げる。
「なら、俺は正門で待ってる、…裏門から帰るなよ」
「裏門からなんて、帰らないわよ!……一緒に帰るんでしょ」
顔をほんのり赤くした雛子を見て、将也は小さく笑い声を出した。
「フッ」
「コラ、笑うな!!!私先に行くからね!」
椅子から立ち上がり、バタバタと教室から走り去る雛子。
「………ああ」
姿の見えなくなった雛子に向かって、将也は笑顔のまま呟いた。
そして、先ほどまで、雛子が座っていた椅子に、何の躊躇もなく座り、
雛子が片付け忘れたハンカチを見つけると、
躊躇なく、まるで自分の物のように、鞄に仕舞った。
「また、手に入った…」
将也は先ほど雛子に見せた、笑顔とは別人のような…
見た人間がぞっとするような、不気味な笑みを浮かべていた。
「でも今日は…もっともっと…大事な者が手に入るんだ…」
すっと椅子から立ち上がると、将也は門に向って、ゆっくり歩き出す。
ポケットに入った、睡眠薬を握りしめながら………
処女作は、ベタな甘い話しを書こうと、思っていたはずなのに、
いつのまにか、こんな展開に…
どんでん返しに憧れた結果が、これです。
憧れたままの方が、良かったかな(笑)
感想がありましたら、お待ちしています。
誤字、脱字なども、知らせていただけたら嬉しいです。
最後になりましたが、お読み下さりありがとうございました。