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 こんな悪天候の中、外を駆け回るのは馬鹿げている。

 チェーンソーも雨に濡れては使い物にならないだろう。

 男がすぐに追ってこないと判断した私は、キラーハウスの中で雨が止むまで待つことにした。


ザァァァ――


ザァァァ――


 雨風に打たれて激しく揺れる木々。雷も徐々に近付いてくるのが分かる。

 こんな日はさすがに誰も来ないだろう。そう思っていた矢先だった。


バシャッ


「こっちだサラ!」

「こんな急に天気悪くなるなんて、聞いてないっつーの!」


 少し離れた場所で男女の声が聞こえた。生きている人間を見るのは数日ぶりだ。

 でも、ここで長い時間過ごしてきたけど死体と遭遇したことは一度もなかった。恐らく男は死体をすぐに処理している。血痕は大量に残っているけど。


「もぉ〜、最悪!」

「サラ、びしょ濡れだな」

「やだー!」


 雨に濡れないように頭を両手で覆いながらキラーハウスの中へ駆け込んでくる2人。

 女はミニスカートに胸元が大きく開いたキャミソールと、露出度の高い服を着ていてこの場に相応しくない格好をしていた。


「きゃぁあ!幽霊!!」


 サラと呼ばれていた女は私を見つけると大袈裟に驚いた。

 まぁ、幽霊と勘違いされてもおかしくはない。長い髪はしばらく梳かせていないからボサボサだし。


「サラ、失礼だろ。この子も俺達と同じで、雨宿りしてるだけだ」


 男のほうは冷静だ。 女の肩をポンポンと優しく叩き「落ち着け」となだめている。


「・・・急な雨、びっくりしましたね」


 幽霊でないことを証明するために口を開いた。

 もともとコミュニケーション能力なんてないに等しい私だけど、今は不思議と緊張していない。


 ただ、残念だ――。


 どうしてここへ来てしまったの?


 2人は見るからに恋人同士だ。 あの男に見つかったら・・・2人の幸せな時間が、一瞬にして終わってしまうのに。

 

 目的が“肝試し”なのは分かっている。でも、ここは遊び半分で来ていい場所ではないのだ。

 みんな、来る前にもっと調べるべきだ。


「雨止むかなぁ?」

「帰る頃には止むだろう」

 

 この2人はまだここの恐ろしさを知らない。今すぐ逃げるように伝えようと口を開いた時だった。


「ルーカス、私、この状況に興奮してきちゃった・・・」

「・・・サラ、見られてるのに、おいっ」


 突如何かが乗り移ったかのように甘え声に切り替わったサラは、持っていたスマホを壁際に置くと動画撮影を始めた。

 そして男、ルーカスのズボンを下ろし顕になった下半身を触り出した。


(え、何してるの?)


 急な展開に、頭が追い付かない。


「まぁ・・・ここでヤるために来たけど、今かよっ。見られてるのに・・・あぁ・・・」


 私の存在を忘れて、身体を重ね合わせる2人。その行為は段々と激しくなっていく。

 まさか、その撮影をするためにここへ来たの?


(馬鹿なの?)


 そうだ――。

 私は当たり前なことを忘れていた。


 正常な人間はここへは来ない。


 ここへ来る人間は、どこか()()()()()()


 男女がここへ来た目的を理解した私は小さくため息を吐き、静かにその場から立ち去った。


 イカれている男女の楽しむ声がキラーハウスに響き渡る。チェーンソーと同じくらい耳障りで気分が悪い。


「ルーカス、わたしっ、もぅっ、だめかも!あぁ―・・・っ」

「んっ、サラ!あぁっ・・・俺も――誰だお前!!?」


 数分後に、激しい物音とともに男の悲痛な叫び声が聞こえた。


 そう、ここは“キラーハウス” 何も知らない人間達は興味本位で足を踏み入れて、後悔する間もなく最期を迎える。


 もしかしたらあの男は馬鹿な人間達を排除しているだけなのかもしれない。


 あぁ、私も、男から逃げないと・・・


 逃げないと、殺してもらえない――。

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