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運命を変える行動

「おい、ドジ!早く来いって~!」

「てか、ここまじで雰囲気あるじゃん」

「でしょ!ほら、動画撮るよ~!」


 曇天の空の下、死んだはずの私は再びあの場所に立っていた。

  私は―――

我を失ったミアの兄に銃で撃たれて、確かに息絶えた。

 理性が崩壊したクリスの怒号、荒れ狂ったように部屋中の物を破壊する姿、その時の光景は鮮明に覚えている。


 しかし私は今、生きている――。


「やってきました~!噂のキラーハウス!

今日はここに、馬鹿エマを閉じ込めま~す!!!」


 ミアも――、アイビーとソフィアも生きている。

 過去に戻ったからだ。


「ほらエマ、笑えよ!」

「何か言ってごら~ん!」


 何度も聞いた台詞。見下したような目付きと表情。

 一度過去に戻った時は現実を受け止めきれずに戸惑っていたが、ニ度目の今は不思議と落ち着いていられた。

 ジャックがまた“力”を使ったことを確信しているから。


「ねぇ―――」


 自分が取るべき行動を悟った私はゆっくりと口を開いた。


「死にたくないなら今すぐここから逃げて」

「え、きっも!!!」


 予想通りの返しには思わず笑ってしまう。

 このまま私の忠告を聞かずに死んでいくのだから“滑稽”だ。


「キラーハウスの中に入ってみたいと思いま~す!」


 ミアは私の腕を強く引っ張りながらキラーハウスの入口へと足を進める。 ソフィアは古びた建物の外観をスマホに映しながら実況を楽しんでいる。

 忠告は完全に無視された。


 こいつらはまたジャックに殺される運命なのだろうか。


 “死んじゃえばいいのに” それが私の本音だ。

 だけど今の私には支えがあるから気持ちに余裕があった。


「あんたち本当に死ぬよ。

私、ここに殺人鬼がいるって知ってるんだ」

「はぁ?お前、さっきから何言ってんの〜?」


 全く聞く耳を持たない頑固者のミアは私の腕を更に強く引っ張った。

 キラーハウスの中には絶対に入らせない――。


「このまま進めば全員死ぬ。

死にたくないから今すぐ帰って!」


 睨み付けるように鋭い視線を向けながら強い口調で言い放つ。


「っぷ、もしかしてイカれてる?」


 ミアはそんな私を嘲笑う。


「ミア、あんた死にたいの?」

「お前妄想激しくない?てか名前で呼ぶなブス」


 何度忠告しても聞き入れてもらえない。

 だけど、前回とは少し違う――。

 ミアは私のことを馬鹿にしているがアイビーとソフィアは私の様子がおかしいことに気付き始めている。 お互いに不安気な表情で顔を見合わせていた。


「引き返すなら、今しかないんだよ」


 こいつらのことは心底嫌いだ。 とくにミア。いじめの主犯格。自分の立場を利用して気にくわない人間を苦しめている。

 ミアは私にとったら“殺人鬼”なのだ。


 それでもここで殺されずに帰ってもらわないと私の“運命”は変わらない。 

 やり直しの人生でも死んだということは私はきっと“死”という運命から逃れられないのだろう。

 同じ未来を歩まないためにも今ここで()()()()で大きな行動を起こさなければならない。


「ここで行方不明者が出た事件、知らないの?」

「は?そんなの嘘でしょ」

「1人じゃないよ。何十人も」

「・・・知らないわよ。あ、もしかしてお前ビビってんの?」


 負けない――。 あんた達が死ぬと私もいずれ死ぬから。悔しいけど、それが私の辿る道。


「今日のエマ、おかしくない?」

「撮り高でしょ」

「いや、何ていうか

まじでここが危ないの知ってそうな顔してるし。か、帰らない?」

「ソフィア、あんたもビビってる?」


 ミアに睨まれたソフィアは一瞬怖じ気付くも、私の話を聞いて“ここから離れたい”と思い始めたようだった。 

 ミアにゆっくりと視線を返しながら気まずそうに口を開く。


「いや、私は、何かあったら彼氏に心配されるかなって・・・」

「うっざ」


 未来を知らないミアは強気だ。 弱音を吐いたソフィアを鋭い目付きで睨んでいる。 アイビーは恐らくソフィア側だろう。だけどミアに逆らえずに口ごもっている。

 険悪な雰囲気が漂う中、私はこれから起きることを正直に口にした。


「・・・みーんな、チェーンソーで殺されるよ」


 未来を知っている私はミアよりも強気だ。


「――き、キモ! チェーンソー?なんかこいつ無理なんだけど」

「でしょ!こいつ普段もっとおとなしいのに!」

「ねぇ、帰らない?ミア」


 ソフィアはミアの機嫌を損ねないようにもう一度引き返すことを提案した。


 ミアは「せっかく来たのに」と不満を口にすると私に向かって唾を吐いた。 

 腕を組んで私を睨み付けたあとソフィアとアイビーを見て「帰るよ」と言った。

 もちろん私を置いていくつもりだ。


(――行った)


 ―――運命が変わる予感がした。


「・・・よかったね。死ななくて」


 皮肉を込めてそう伝える。

 3人の顔は引きつっていて、何も言葉が出てこない様子だった。


「あ」


 私は何かを思い出したかのようにもう一度口を開く。


「次、私が死んだら呪うね」


 笑顔を添えながら伝えると、ミアが一瞬固まった。 さすがに気持ち悪かったかな。


「――さっさと死ね!」

 

 私に暴言を吐き捨てこの場を去っていく。


(――もう死なない)


 ここは“キラーハウス” 足を踏み入れた人間は本来、生きて帰ることができない。とくにミアのように馬鹿な人間はすぐに殺される。


 しかし今の私はその殺人鬼と“友達”だ。

 きっとジャックは私の話に耳を傾けてくれる。

 だって、2度も私を生き返らせたのだから―――。

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