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ドゥルルッ ドゥルルッ


ブォォンッ⸺


「・・・何?」


 3人がいなくなってすぐのことだ。機械が稼働するような音が廃墟の中に鳴り響き、違和感のある空気が漂う。


 工事でも始まるのだろうか?


 様子を伺おうと体を動かすも、両足までぐるぐるに縛られているため、立ち上がることができない。


ダッ ダッ ダッ ダッ


ガガガガガッ


「「「―っい、ぃやぁあぁああああっ!!!」」」


 ・・・工事、―― いや、違う。


 壁を削るような不快な音と、激しい足音、3人の恐怖に満ちた悲鳴が静かな廃墟に響き渡り、事の深刻さに気付かれる。


「何なの・・・」


 何とか立ち上がり、身を隠すように部屋の隅へと移動した。


 その直後――


「きゃああああああ!!!!!いやぁ!助けて!!!助けて!!!!っぅぐあ!!!!!」


 恐らくソフィアのものと思われる悲鳴と同時に、何かが引き裂かれるような、そんな底気味悪い音がした。


「いやぁぁぁあああ!!!!!」


ダッ ダッ ダッ ダッ


ガガガガガッ


 全速力で走る2人の足音。


 誰かに追われているのだと察した。


「・・・まさか本当に」


 私の額から、汗が流れ落ちる。


「そうだよ。ここは⸺」


 忘れてはいけない。ここは“キラーハウス” 殺人鬼が住む家だ――。


 全身を大きく動かし、ロープからの脱出を試みるも体力だけが失われていくだけだった。


 何が起きているのか明確には分からない。


 これは私を陥れるための3人の芝居という可能性もある。


 ・・・そう、だよね。多分、それだ!


 あいつらだったらやりそうだし。怖がる私を動画に撮るつもりだろう。


 そう言い聞かせて自分を落ち着かせる。だけど、悲鳴と足音、機械の音は一向に鳴り止まない。


「助け、助けて!!!ごめんなさい!ごめんなさいいい!!!」


ギィィィインッ


ズズズ――


「あがっ、ぉ、う・・・」

「うそ、、アイビー、いや、い、いやぁぁあああ!!!!!」


 ソフィアとアイビーの悲鳴はもう聞こえなくなった。


 ――あいつらがこんなに完璧な芝居をするだろうか。


 いったん頭を落ち着かせようと、呼吸と体勢を整える。


 しかし、考える間もなく激しい足音が私のほうに近付いてきた。


ダッ ダッ ダッ ダッ ダッ


「何なのよぉ!!!馬鹿エマ、何とかしなさいよぉお!!!」


 ミアが全速力で私の元へ戻ってきて、泣きながら私の髪を力強く引っ張った。


 かなり自分を取り乱している。涙と鼻水で、顔面がぐしゃぐしゃだ。


 美人でもこんな顔になるんだと、わけの分からないことを考えていた。


ブォォンッ

ブォォンッ


「―エマぁぁあああ!!!あんたが、あんたが死になさいよぉお!!!!」


 パニックになって泣き叫ぶことしかできないミアを見て、私は内心微笑んでいた。あのミアが必死に嘆いている。――優越感に浸っている場合ではないのに。


 目線をミアの背後に向けると、ミアを追ってきた男がゆっくりと姿を現した。


 男は―― 現実離れした容姿をしていた。()()()()()()()()()とはミスマッチな豪華なロングコートは赤と黒を基調としていて、男の白い肌を際立たせている。

 そして深く闇のような漆黒の髪から覗く瞳は赤い色をしていて綺麗だった。 カラコン、だろうか?


 一見殺人鬼には見えない男の手元に視線を移すとそこには血まみれのチェーンソーがあった。 どうやらあの機械音の正体はチェーンソーだったらしい。

 つまりこの男がアイビーとソフィアを殺したの?


「4人目・・・」


 男は冷めた目付きで私をじっと見下ろすと、チェーンソーを振りかざした。


「――っ」


 背も高く体格のいいこの男に体当たりをしたところで効果はないだろう。


「・・・無理だ」


 そう口から自然と出てしまった。


 ミアは私が狙われている隙を見てすでに走り去っていた。


 ああ、これ、死ぬんだ。でも、まぁ、死んだらいじめはなくなるし。


 地獄から解放されるんだ。


 だったら、この現実を受け入れて来世に期待するのもいいかもしれない。この世に未練は残るだろうけど。


 死を覚悟して目をつぶった私。


「・・・・・・」

「・・・・・・」


 数秒経ってもチェーンソーが私の体を引き裂くことはなく、薄っすらと目を開けると何故か男の動きが止まっていた。


 私は男を睨み、言い放つ。  


「そういうフェイントはやめてほしいんだけど」


 最期くらい強気になってもいいだろうと、殺人鬼相手に堂々とものを言う私。


 男は口角を上げると、何故かチェーンソーの電源を切って地面に置いた。


「・・・?」


 男はゆっくりと屈むとポケットからナイフを取り出し、私に巻かれたロープを器用に切っていく。


 解放された私は頭に疑問符を浮かべたまま、男を見上げる。


「お前は最後だ」


 そんな言葉を吐き捨て静かに消えていく男。


「・・・は、」


 どうあがいたって無理ゲーだと思っていたこの状況に、選択肢が与えられた。



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